連載小説更新しました。
よろしくお願いします。
世界野球、いよいよ韓国と準決勝。
巨人の選手、坂本以外ぴりっとしない。菅野は決勝らしいけど、機会がきたら澤村びしっとしめてほしいです。



 ひょうま鼻形の離婚報道も本当に記者会見のとき1回限り濃厚に行なわれたきり、年末年始にはすっかり忘れ去られたかのごとく、だらだら報道しない約束とはいえ、本当にマスコミは守ってくれた。
 いいのだが・・・。
 今や何のさざなみも立たず、あきこと二人の世界に強制的にいさせられていることが、ひょうまにとっては、苦痛に近い。
(もっと沢山友だち作っておけばよかった)
 野球野球だけの人生の余波はこんなところにも及んでいる。
「姉ちゃんもさ、友だちと会うとか、自由にしてくれよ」
 言ってみるが
「ひょうまが家にいるときに出かけるなんて勿体無いわ。一緒に出かけるならいいけど・・・」
 ところがひょうまが用事があって出かけるというと
「どこに行くの?何時に帰るの?ご飯は?」
 矢継ぎ早に質問され、そりゃあ確かに寝室を別にしたい一心で苦し紛れに、あきこを不安にさせないようにするとは言ったけど。

 家にいるならいたで、今もひょうまの横に並んで座り、黙っているならまだしも、なんだかんだ話しかけてくる。
 もともとひょうまはおしゃべりじゃない、あきこだってわかってるはずだ。
 子どものころの残像があるのかもしれない、子どもの頃は子どもなりにはしゃべっていたが、多分世間の子どもよりはしゃべってなかったし、いっかつに野球漬けにされてしゃべる間もなかった。
「うるさい」
 言ってしまえば終わるかもしれないが、この状況を生み出すきっかけを作ってしまったのは他ならぬひょうまなのだと認識すると、なすがままにするしかない。
 
 ひょうまのあるべき姿は何なのか。
 空想するのは自由だろう。
 おきゅうと2人でまったり正月を過ごす・・・。
 2人とも激動の年月を経てきたから・・・そう、おきゅうとだったら、ソファでぼんやりテレビを見ていても、いや、見たくない番組なんか見る必要はない。
「義務」は2人の中には存在しない、あるのは、「愛」だけ。
 おきゅうとだったら勿論一緒のベッドに寝て・・・今だって、ソファにいても、きっと互いの手を握り締めているかもしれない。
 そこに、年始に訪れてくる城戸涼介と夫婦になった有坂咲。
 すっかり親子として自然に付き合う・・・。

「フ・・・」
 自嘲気味に笑うと、そんな日が来ることは限りなく可能性が低いだろうと、ひょうまはまたテレビに視線をやる。
「ブルルル・・・」
 ズボンの尻ポケットに突っ込んでいた携帯が鳴った。
 ひょうまははじかれたように立ち上がり、誰か確認もせずにボタンを押す。
 現状をぶち壊してくれるものなら何でもよかったから。
 だが、何でもよいというわけにはいかないことをひょうまはすぐに悟る、相手は半だったからだ。
 正月早々でかでかとだみ声でけーこと別れたことをまた繰り返し責め立てられるのかとげんなりする。
「星、明けましておめでとうよのう」
 ところが、何だか半の声が異様に優しい。
 聞き間違えかと警戒するも、半は慇懃という感じでもなく、正月の挨拶を述べてきた。
 そうか、新年になったから、気持ちを切り替えて、また「親友」として付き合ってくれるのか。
「星、今夜でもちょっと飲みに行かないか」
「ありがとう、半よ・・・」
 少しはいいこともあるものだと、ひょうまは救われた思いで、眼に涙すら浮かべるのであった。 つづく