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 三門は城戸医師宅に向かった。
 最初、三門はおきゅうの身体を純粋に心配していただけだが、すぐに、なぜ業務中に体調を崩したのかが気になりだす、おきゅうはそんなやわな女じゃない。
 本当に体調を崩したのだろうか?チラッと脳裏をよぎった。
(体調を崩したのでなければ、何なのだ?)
 三門は、おきゅうと体調不良にどうしても違和感を感じずにはいられない、そこで城戸医師に聞いてみようと考えたのだが、ひょうまという邪魔が入った。
 居酒屋でひょうまに聞くもしっくりこない。
 しかも、ひょうま自身も三門と同じような疑問を抱いている。
 三門はふと、ひらめくものがあった。
 居酒屋で最初にひょうまが言った言葉がフラッシュバックされたのだ。
「城戸先生は施設で美波と一緒だったこともあり、少し関連があるため、カウンセリングをきゅう子に頼んだのだ」
 最初は何気に聞き流していたが・・・。

 三門は、おきゅうの言葉を思い出した。
 あれは、美波復活パーティの後、みずうみのほとりホテルで、さあおきゅうと関係を持とうとしたとき、おきゅうに仕事の電話が入ったため、おきゅうは急遽帰京する運びになってしまった。 
「人のカウンセリングばかりじゃなくて、わしのカウンセリングをしようとは思わないのか」
 その答えが以下だった。
「家族にはカウンセリングできないのよ」
 家族に対しては感情が入ってしまうかららしい。
 
 もうひとつ思い出すことが、いや、表現が適切ではない。
 忘れていたのではなく、封印していたこと。
 おきゅうの“妊娠線”
(だが、堕胎してるはず・・・)
 三門はそう思い込んできた、思い込まなければやってられない。
 三門との間に子供はできなかった。
 堕胎の影響があるのだろうと、悲しい推測をするも、永久に手に入れられないと思っていたおきゅうが飛び込んできてくれたことだけでもよしとしなければならない、三門は自身に言い聞かせ言い聞かせて過ごしてきたのだ。
 なのに、今やおきゅうの心はひょうまにあり、わかっていながらも、おきゅうにもひょうまにも責めることができない。
 その先が、もし、最悪の結果になってしまったら・・・。
 
 おきゅうを妻としてつなぎとめるためなら、何でもやる。
 三門の目が鈍く光った。
 城戸医師の部屋についた。
「ピンポーン」
 何回か鳴らすも、誰も出てこない。
 客がまだいるから居留守を使っているのか?
 だが、最初にここを訪ねたときには感じた、気配 がない。
(客と出かけてしまったのか・・・)
 女性だった。
 城戸も独身男性、女性の一人や二人いても不思議ではない。
 いつかは、女どころの人生じゃなかったと言ってたけど、いつまでも女に無縁の人生でもいられないだろう。
(わしとて同じ・・・)
 おきゅうと無縁になる人生なんか考えられない。
 つづく。