このお話は、巨○の星の続編を想定して書いたものです。


不定期の連載ですが続けていきますのでよろしくお願いします。ドキドキ



 好きな人のことにはことさら敏感になるという。
 昨夜の三門といい、今のけーこといい。三門は、おきゅうのメールによってひょうまの微妙な変化を見逃さずに悩み、けーこも、復縁公表時期が牧のせいで一気に早まったことによるひょうまの態度変化を感じ取っていた。
 しかしながら、特急電車は無常にも、まもなくS湖市駅にたどり着こうとしていて、車内アナウンスが入ってしまった。
 おきゅうはいったん自席に戻り、荷物を降ろして降車準備をすると、すぐにけーこの横へ。
 カウンセラーとしてはこれから先のけーこをフォローしなければならないのだが、けーこは棚に上げた荷物を降ろそうとせず、おきゅうと話すときには律儀にはずしていたサングラスもそのままに。
「けーこさんも用意しないと。到着よ」
「・・・降りても私、どうすればいいのか・・・今日はパーティだから 夜遅くまでひょうまさんにも会えないだろうし・・・変に街をうろうろもできないし・・・」
「有名人はつらいわね」
 嫌味でなく、同情するおきゅう。
「でも、降りましょう。まだパーティ始まらないし、私もすぐにホテルにいかなくてもいいの。もう少しお話しましょう」
 特急電車はすでにホーム到着。停車時間わずか1分。おきゅうはけーこのバッグも持ち、けーこをホームに押し出すように降ろして自身も降りた。
 降りた途端、プシューっとドアが閉まり、静かに電車は去っていく。
 始発だったから、まだパーティ出席関係者らは姿を現さないが、駅にもあまりいられない。おきゅうはどうしたものかと考える。ホテルはだめ、もちろん、ひょうまたちの自宅マンションにも行けっこない。
 東京だったら、なじみの店に頼んで入らせてもらえるんだが。さすがにS湖市にそんな店もないし。
 
 ひょうまが、けーことの復縁発表を喜んでいないかもしれない・・・。
 本当なのだろうか。
 おきゅうの脳内がピンク色に染まった。
(けーこの取り越し苦労かもしれない)
 メールが来ないからだけで?
(いや・・・三門からもメールが来ない。あの疾風のように返信してくる三門が・・・)
 おきゅうがサプライズ発表は中止してほしいと頼んだことをうさんくさく思っているのだろうか。
 余計なことを感じさせないように文章考えたつもりだったんだが。
 三門も、なんかおかしい。
 三門からサプライズ中止になったと普通に返信がきたら、今朝も始発特急電車でけーこに気づかず爆睡していただろう。 

 今いる世界を大事にしようと、ひょうまに約束させたおきゅう。
(だから、三門ともメールから関係を復活させ、今夜は一緒にホテルに泊まる予定・・・)
 ひょうまにも同様に生きてほしい、つまりはけーこと復縁してほしい。
 ただ、おきゅうは事後報告にしてほしいとは願っていた。有名人同士のしかも復縁とくれば、ネットもあるし、ネットでなくても、三門から聞かされるだろうけど、「入籍したあと」知らされれば、すっぱりと、「決めた人生」をやり遂げようと腹も決まる。
 もっと周りが、三門が、けーこが、素直な気持ちでいてくれれば、おきゅうはおさまるところにおさまってやるのに。
(・・・ひょうまさん・・・)
 禁断の再会時、ホテルで抱きしめられた感触を思い出した。
(まさか・・・けーこさんの思い過ごしでなく・・・)
 同時に、三門が返信をよこさない原因に、ひょうまの態度が絡んでいるのではないか?
 困る、困るのだ。
 ピンク色に染まった脳内はそのままに、おきゅうは恐ろしく低い声で、同じ単語を繰りかえすのだった。
 つづく