県立病院へ着くと、従兄から連絡をうけた母が、先に着いて 


待っていてくれた。


もう夕方になっていた。


従兄は、社長である父に了承も得ずに 私たちの為に


現場を飛び出して来てくれていたことを、その時知った。



物知り顔で、非常識なんて思って ごめんね。お兄ちゃん。




2人のお医者様が待ってくれていて、


すぐに処置に入るが、このまま手術になるかもしれません。


と言われた。 


お母さんがいると、子供が甘えて処置の妨げになるとの事で、


処置室から出されてしまった。


中から、「ギャーーーーーーッツ!!!」と泣き叫ぶ すみれの声がする。


こんなに大きな声で泣き叫ぶのは 初めてだった。


よっぽど痛いに違いない。 涙が目からあふれ出た。


ふと横を見ると、いつもは気丈な母が、ぼろぼろ涙を流して、


「代わってあげたいねぇ。代わってあげたいねぇ。


ずっと痛いのを気づいてもらえず、辛かったやろうねぇ。」 と泣いている。


母親として、取り返しのつかない事をしたのではないかと、自分を恥じた。



運のいいことに、すみれは手術を免れた。


発見が早かったので、壊死してはおらず、腸に空気を通すと


かさなった部分が離れたそうだ。 本当に良かった。


本当に従兄や、良いお医者様のお蔭 。


助けてもらって、ありがとうございました。





病室へ移ってから、お医者様から症状の説明があり、


本当なら翌日にでも退院だけど、すみれちゃんはなぜか


高熱が出ていて、そのせいで脱水や腸重積を引き起こした


と思われるので、1週間程入院しましょう。 とのこと。




私に続いて、すみれまで入院なんて、親子で運が悪いなぁ。


なんて思ったけど、嫌なことが重なるのって けっこう多い気がする。



すみれは、処置が終わってからは、ビックリするくらいケロッとして


熱が高いとは思えないほど とっても元気。


母も私もほっとして、そしてお腹が空いてきた。


看護婦さんに売店の場所を聞いたが、土・日・祝日の売店の


営業時間は平日よりも短く、閉店したしまったらしい。


そこで、


母が、近くのコンビニで弁当を買ってきてくれて、面会室で一緒に食べた。



母は福岡にいる間に、父に すみれの様子を連絡していて、


先程 コンビニへ行った際、腸重積であったことを報告したそう。


もう、心配ないので大丈夫。 と伝えたが、


「自分の目で、元気な姿を見るまでは安心できない。」 と、


明日の朝の飛行機で 帰ってくる。 らしい・・・。


私の両親には6人の孫がいるが、孫をどの子も溺愛しており、


「風邪をひいた」などど うっかり報告すると、全国どこへでも


飛んで行ってしまう、困った、優しいおじいちゃんとおばあちゃんなのです。


自分達が若いときは、仕事や生活に追われて、子供に


辛い思いをさせたので、そのぶん孫に愛情をかけたいのだそう。


( まったく 勝手なんだから(苦笑) )



でも、帰ってくるのは父だけじゃないらしい。





夫も一緒に来ることになっていた・・・・・。


 





すみれが へんな泣きかたをしている。



3日前から風邪で熱をだしていて、鼻づまりも酷く機嫌が悪かったが、


それだけじゃない気がする・・・。


近くの小児科に連れて行っても、ただの風邪だと言われた。


でも、おかしい・・・。


突然、体をそらして転げまわりながら火がついたように泣く。


そして、しばらく泣くと、ケロッとしておやつを食べたり、遊んだりする。


そしてまた、火がついたように泣く を昨日の夜から繰り返している。


不安になって、母に電話をすると、すぐに大分まで来てくれるとの事。


そして、従兄の奥さんに連絡をしてくれた。


従兄の奥さんは看護婦さん。



従兄の奥さんが電話をくれて、すみれの状態を話すと、


「あ~ぁ。大変なことになってる。


その病院じゃダメだ。ちょっと、まっちょってな。」


と言って、電話を切った。


1時間くらいたったとき(もっと早かったかもしれない)、


現場にいるはずの従兄が帰ってきた。


驚いていると、なんと すみれのために帰ってきてくれたと言う。


「なんで、朝んうちに俺に話さんやったんか!そこのクソ医者じゃ


ダメじゃ。別府の医者んとこ行くぞ!!」


と、言うが早いか、作業車に毛布をひいて 私たちを遠く離れた


別府の病院へ連れて行ってくれた。





大きな小児科についた。


待合室は子供とお母さんたちでいっぱい。泣き声もいっぱい。


待ち時間、長そ~ 。 と思っていると、


従兄が恥ずかしいくらいの声で、奥の看護婦さんに向かって叫びだした!


( ビックリ!!)


「お~い!△▽さん!お久しぶりです!□□です! 私んとこの


親戚の子が腸をやられちょるように思うけ、待っちょられんのじゃわ。


( 待合室に振り返って ) みなさん、お待ちの所を申し訳ないです!


私の親戚の子が、腸をやられちょるらしくて 時間が勝負なんで


お先に診察をさせて下さい!」


と、ペコリと頭を下げて私の腕を引っ張って ズカズカと診察室へ


向かっている。


( えぇ~!そんな!何て非常識なんだ! )


と驚いて従兄の顔を見たが、従兄は悪びれもせず 至って真面目な顔。


お医者さんも、「久しぶりですね~」なんて言って注意もしない。


それに腸がやられてる って何???


お医者さんに聞かれて、風邪で熱が出だしてからの状態や体温。


いつから泣き始めたかを話すと、 「血の混ざった便が出たり、便秘を


していなかったか」 と聞かれた。


「いいえ。」 と答えると、 「じゃあ、エコーで見てみましょう。」


と、エコーですみれのお腹を見始めた。


(そのころは、個人の小児科にエコーがあるのは珍しかった。)


しばらくすると、お医者様が


「あ~、重なってる。重なってる。今なら まだ間に合うかもな~。


お母さん、腸重積です。まだ泣き始めてから24時間たってない


みたいだけど、間に合うといいですね。今から県立病院に連絡し


ておきますから、急いで行って下さい。」  と言われた。


腸重積・・・たまひよの病気大百科に載ってた・・・たしか腸と腸が


重なって、時間が経つと、その部分が壊死してしまうって・・・


手術しないとダメだった気がする。




こんなに痛がってたのに、おかしいと思いながらも 他の病院へ


行ってなかった自分が情けなかった。すみれに申し訳ない気持ちで


いっぱいになった。



救急車を呼んで行くのと、時間は変わらないから。と、


従兄が県立病院へ連れて行ってくれた。








父と母は、大分に新しい事業所をふやしていた。


わたしは、実家の福岡ではなく、大分へと連れて行かれた。


福岡の実家には 義母が勤めており、


あの出来事の後、母が「辞めて欲しい」とお願いしたが、


「生活があるから○○さんの為になんか辞められない」


と、毎日元気に出勤しているそう。



そんな訳で、私が居辛くなるのを心配して、父と母と従業員の


仮住まいとして借りている、9LDKの広い日本家屋で生活させて


もらうことになった。


従業員といっても、新規事業であった為 昔から私を可愛がってくれた


両親と年のかわらない従兄が2人と、


18歳になったばかりの新入社員が1人。



それから、食事の支度を手伝うと称して 気の合わない息子夫婦


の家から出て、長期滞在中の伯母が一人と、


家が狭くて自分の部屋がないからと、居候している高校2年の


従兄の子供が一人。


とても賑やか。



みんな私の事情を知っており、痣だらけの私の顔を見ても


普通に接してくれた。


従兄は2人とも、


「なんか○○!もう出戻りか?! おまえは昔っから要領が


わるいのぉ(笑)!そんな顔になって不細工やのぅ~!


我慢することないぞっ!父ちゃんと母ちゃんがおるうちに甘えちょけ!


今度殴られたら、兄ちゃんにも連絡せえよ!」


と 口は悪いけど、明るく迎えてくれた。


従兄の子供は、なぜかずっと 私の歯のことを心配してくれていた


ようで、歯は折れていない。と教えると、とっても喜んでくれた。


伯母は、私の手を見て、


「指ん先まで、痣で真っ黒ににえちから、こげ~なるまで殴るっちゃ、


やっぱり正気じゃねーわ。命があって良かったなぁ~。○○。


すみれちゃんも小さいのに怖かったじゃろう。むげねぇーなぁー。」


と泣いた。



大分に滞在している間、本当に穏やかに生活させてもらった。


母は、仕事や家事で忙しいのに2,3日置きに福岡から泊まりに


やって来て、打ち身にいいからと温泉に連れて行ってくれた。



母や伯母が、その時は言わなかったが、後になって


「毎回、温泉で○○の体を見るのが恐ろしかった。


○○の体は、痣に切れ目が無くて、普通の肌の色の部分が無いほど


なのに、1ヶ月たっても斑のまま、薄くならないので 一生このままなの


ではないかと思って、あの時は○○が居ないときに2人でないた。」


と言っていた。


みんなに とても心配をかけ、たくさん気を使わせていた。




夫からは、一度も連絡がなかった。





口の悪い母の友人が、母にくっついて 温泉に入りに遊びに来るたび、


義母や夫の様子を教えてくれた。


あの出来事の晩、義母は、「こんなことがあって、ムシャクシャするし、


パチンコにでも行って嫌なことは忘れてくるわ。 こんなことを


わざわざ私に知らせてくれても、私が嫌な気持ちになるだけなのに


私に対する優しさがない。あっちはご主人も一緒に病院に行ったりし


て、なんて過保護なんだろう。あれでは息子の立場がない。」 と、


文句を言いながら、母の友達をパチンコに誘った事。


その日は、行くのは止めたら?と注意したが、結局 義母は一人で


パチンコに行っていた事。


義母が、あれからずっと 夫に離婚をすすめていること。


孫や私の様子を聞きもしないこと。


母や妹に、「私の悪口を言ったりして あんな嫁で困っている」と


毎日 文句を言っていること。



などを、「あら~奥さん!いいとこで会ったわ!実はねぇ~」


と言うようなノリで、教えてくれた。


最後はいつも、


「○○ちゃん、腹がたたんの??」 で終わる。


私は、あんまり一生懸命しゃべるオバちゃんを見て可笑しかったり、


( 時々、息をヒューっと音をたてて吸い込んで一気に話すのだ!

  窒息しそう! )


何で人の不幸な事柄の展開を楽しそうに、当の本人である私に


話すのだろう。 と思ったり 複雑。







穏やかな大分での生活は もうすぐ終わろうとしていた。








家に帰ると、ガラスは、すべて新しいものと取り替えられていた。


ガラスが入るまでは 母はすみれを連れて、ホテルに泊まってくれていた。


夫の宿泊費も含めて、すべて両親が負担してくれていた。


入院費も。




父は、実家に帰省することを薦める時、父特有の穏やかなしゃべり方で


「○○が好きなようにしていいんだよ。僕達は君の意思を大切に


するからね。でも、今回は一旦帰ってきてほしい。今度同じことが


あっても、すぐに助けてあげられるかわからないからね。」


と言ってくれた。


私は、「夫と話しあって決めたい。」 と願った。



その日の夜、私達夫婦は両親とは別室で話し合うことにした。


夫の態度は、以外だった。


彼の中には、話し合う余地などなかった。


両親に声が聞こえるのが嫌なのかと、筆談にもしたが、


彼の主張はただ一つ。


「一人になりたい。もう疲れた。時間がほしい。帰ってくれ。」


と吐き捨てるように言うだけ。


そして最後に、


「俺は、ずっと恋人同士のままの夫婦でいたいんや。


別に、夫婦や家族の絆が欲しくて結婚した訳やない。


だから、○○はそこを反省したら帰ってきてもいいよ。


二度と心のつながりを求めるな。


夫婦って言うのは、体のつながりが大事なんや。


女は男の港っていうやろ!


だまって、俺が優しくしたい時に 言うことをきいてくれる


恋人みたいな女になって帰ってこい。


俺からは 迎えにいったり、電話をしたりは一切しない。


それだけ。」


と言い、部屋から出て行った。


驚いて、突然で、何も言い返せなかった。





翌日、母と一緒の飛行機の中で 初めて「離婚」という言葉を


思い浮かべた。





紅葉


今日、チュウリップの球根とビオラを植えようと


庭で植木鉢を物色していると、


綺麗に紅葉した葉っぱをみつけた。


雪にも負けず、美しい姿をキープ。


師匠と呼ばせて頂きたい。


他にも、美しく色づいた薔薇の実や、ピラカンサス。


萎びた枝に未だに実を付け育むトマトの株。


色あせた庭で一際緑が濃く美しいローズマリー。


花をつけ始めたばかりの冬しらず。


みんな、庭におりてきた私に語りかけてくれる。


「お母さん、私達も忘れないで。」と奥ゆかしい


つるスミレやにおいスミレ。


セージの花も、雪に萎れながらも色をのこしている。


パッションフルーツは、今にも枯れそうな弱々しさ。


さあ、春のための支度を始めようね。



庭へおりる階段に腰掛けて、来年の春は


どんなふうに薔薇を咲かせようか、


スミレの花は、こっちに移したほうが元気に咲くかも。


じゃあ、スイトピーが大きくなったら庭木に絡ませてみよう。


ルピナスは、レースフラワーと一緒に、うまく育ってくれるかな。


と、スケッチブックにイメージ画を描いて 構想を練る。


1年間の庭作業の中で、この時が一番楽しい。


夕飯を作ることも、冬の風の冷たさも忘れて没頭する。



来年は庭でさつま芋を掘りたいので、土作りの研究中。


薔薇作りで、今、気に入っている肥料は、サラブレットの堆肥と


ケシ有機と腐葉土を混ぜて、3ヶ月寝かせたもの。


株がぐんぐん大きくなるし、大輪の花をわんさかつける。


ふぅ。 想像しはじめると限がないほど楽しみ~!

来年の春もがんばって、沢山の花を咲かせたい。



バレリーナ  はじめて育てた薔薇 バレリーナ。