盛岡学園の高等部は、授業料が関東並みに高いという声もある。もちろんそれは特別進学エリートコースのことを指しているのだろうが。
だからそういうコースを受ける生徒の家庭はそれなりに官僚レベルなのだろうか。それも雇われではない幹部役人のレベルで。
草薙那津菜もそういう家庭だったから、今回の話は心に響いているはずだ。
「明日は、我が身・・・か」
まだ真冬の岩手県盛岡市。放課後は夕暮れを超えて夕闇の中だ。
「寒いよね」
「あ~、寒い寒い」
吉村みなみと村上杏は白い息を吐きながら寒いと連呼していた。
そんな中で3年国際人特別コースの清水慶太も家路を南方向へ向かっていた。
清水慶太は埼玉県出身で、父が陸上自衛隊岩手駐屯地に勤務する曹長ということもあって盛岡学園に入ることになった。
しかし今年より慶太の父は九州方面本部へ派遣された。復興支援より対中警備とか、政府の自衛隊利用法が出鱈目というべきか、見切り発車で自衛隊を動かすことなど考えられないことだろう。
そんな事情もあって今は母の美枝と2人暮らしで矢巾に住んでいる。
慶太が矢巾駅を降りてすぐ、周囲に数人の男女グループが慶太を包囲した。
「清水慶太君だね」
慶太は逃げようとするが、そこを急発進してきた車が阻止。慶太は時代劇の殺陣の斬られ役のように倒れた。
「あらら、情けない」
すると車から男が降りてきて、慶太を車に乗せた。
「よし、あとは俺に任せろ」
するとさきほど慶太に声をかけた男がこういった。
「お頭」
お頭と呼ばれた男はふと足を止めた。
「どうするんですかい」
お頭は仲間たちに指示した。
「そうだ、まこと。お前受け役やれ」
お頭はまことを指さした。
「はい?」
「そうだ、それとてつ」
「私もですか?」
慶太に声をかけたてつもお頭のご指名を受けた。
「どうしたらよろしいのでしょう」
お頭はてつにロール紙の地図を渡した。
「このへんの人間をターゲットにしよう。そして警察に相談させないように…」
てつは了承した。
「わかりました」
お頭はまことを車に乗せ、まことの携帯電話から清水家に電話していた。
「さて、お母さんはいるのかな?」
へらへらと笑うお頭の顔を見た慶太は、白いさらしで口かせをされていた。だから声を出せなかった。
「あ、もしもし」
そう言ってお頭は美枝に電話をかけた。
「はい、清水ですが」
「あのですね、おたくの息子さんがぶつかってきましてね」
お頭はそのまま慶太の頭を叩くなどした。
「今からそちらにお伺いしようと思ってたところなんです」
それを聞いた美枝は恐ろしいことになったと狼狽した。
「わかりました」
「すぐに向かいますので」
そして慶太はお頭の運転する車で自宅に戻った。慶太は顔面を傷つけられた。
「慶太!どうしたの?」
すると慶太は何も言わず2階の自分の部屋へと歩いて行った。
(続く)