ザ・ハングタン記念すべき第1話「本当に怖い制服狩り」① | ザ・ハングタン+

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「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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岩手県の県庁所在地、盛岡市。人口およそ30万の中核都市だ。

大通りをノースリーブで歩く女性、横田夏子は盛岡学園の音楽講師だ。
彼女は新潟県の出身で29歳。音大卒の実績を買われて盛岡に赴任したのはもう8年前になる。今ではすっかり盛岡市民だ。

「さぁて、明日は短大の合唱のピアノっと」
夏子は汗を拭きながらメモを見ていた。
信号が青になり、夏子は鼻歌を口ずさむ。音程は合っているが、明らかに音痴とわかる鼻歌だった。
「相変わらずだな、先生」
夏子の音痴を指摘する男、彼は夏子の仲間である原俊彦だ。
原俊彦、職業は自由業という名の無職同然の物書き。年齢は夏子と同じ28歳。
しかしふたりは岩手の平和をひっそりと守る「ザ・新選組」のメンバーである。
「何よ、俊彦君。今日も原稿出しに行ったのね」
「当たり」
「原稿料は」
「おととい載った分、5千円」
「ふぅん」
俊彦は夏子のスカートに目をやっていた。
「ちょっと」
「まぁいいから。近くに銭湯があるから入らない?」
「こんなに暑いしね。たまにはいいでしょ」

ふたりの痴話喧嘩をよそに、大通りの路地ではひとりの若者が女子校生を付け狙っていた。
「制服がふたつか…一挙両得だな」
ある若い男が二人組の女子校生に声をかけた。
「あの、君たち僕と一緒に遊ばないか?」
しかし女子校生たちは去ろうとする。
「心配しなくてもいいよ。僕はいくら遊んでも平気だから。遊ぶ金だって」
そう言って男は自分の財布を見せびらかした。
「すごくない?」
すっかり安心しきった女子校生たちは男についていった。

夏子は俊彦と近くの銭湯にいた。
「はぁ~、暑いときこそ熱い風呂。いいもんだぁ」
そのとき俊彦の目の前にさっきの男が。
「どうして重たいスーツケースなんか持っているんだ?」
俊彦は男がスーツケースを番台に預けないことを疑問に思っていた。
「あの、ここはじめてですか?」
俊彦が男に尋ねた。
「はい、慣れないもんで」
「そのスーツケース、何が入ってるんですか?」
「そんなこと聞くんじゃありませんよ」
「あ、失礼」
俊彦は男のスーツケースをしまう手伝いをして、浴室に入った。

一方の夏子は女湯で自分のクラスの生徒を見てしまった。
「きゃあっ!」
夏子は突然悲鳴をあげた。
「せ、先生。どうしたんですか」
「そっちこそどうしたのよ、美歩ちゃん」
さっきの男が連れてきた女子校生のひとり、本田美歩は盛岡学園の3年生。
「だって、男の人がここでこれに着替えてって」
美歩は男から渡された服を夏子に見せた。
「これって、ちょっと危ないじゃないの」
男が美歩たちに渡した着替えというのは、ノースリーブにミニスカートという服装だった。
「そして制服は預かるって」
「…そんなことしちゃいけないの。美歩ちゃん、わかってるの?」
夏子は美歩の頬を叩いた。
「先生、心配してくれるんだ」
「当たり前じゃない」

数時間後、俊彦は男と再び話をする。
「え~と、青山さんか」
「スーツケースとか持っていると言うことは、勤め先は」
「・・・」
青山は俊彦の質問に答えようとしなかった。そしてそのままスーツケースを持って銭湯を後にした。
結局青山は本田美歩の制服を盗むことができなかった。

夏子と美歩が女湯から出てきた。
「先生、その子は?」
「うちの3年の委員長してるの」
「本田美歩です」
「美歩ちゃんか。先生についてって帰るのかな」
「はい」
「それじゃ」
俊彦は夏子と美歩を見送った。

その日の夜、青山は自宅で制服のコレクションに酔いしれていた。
「ふふふ…これさえあれば僕は何もいらない」
そこへ母親が入ろうとしていた。
「俊雄、俊雄。いるんでしょ」
「あ、いるけど」
青山はあわてて制服をクローゼットにしまいこんだ。
「俊雄、この前面接受けたテーラードさんから第二次採用試験の案内来ていたわよ」
「ほんとに!?」
青山は喜んだ。
「第二次採用試験…これをパスしたらまたアパレル業界に復帰できる」

その頃盛岡市内のある地下室で密談が行なわれていた。
「盛岡学園の進学率、就職率の高さは全国屈指という話です」
部下が報告する。
「現実に、県内就職の半数が盛岡学園高等部の生徒と言う状況で」
レポートを読んだボスは、部下たちの行動を知りたがっていた。
「盛岡学園をどうするつもりだ」
「その盛岡学園に泥を塗る脅迫行為をやろうかと」
「どういうことかね」
「盛岡学園の裏事情を調べる、または盛岡学園の不祥事をでっち上げる」
「あまり陰湿な行動は慎んだほうがいい」
「では、どうやって」
ボスは新聞記事を部下たちに見せた。
「これだよ」
新聞記事は半月ほど前のものだった。そこには女子校の制服が何者かに奪われると言うニュースが書かれていた。
「確か犯人はまだ捕まっていない」
「その通り。念のため岩手県内に窃盗の該当者がいたかどうか調べた」
「それで?」
「いなかったらこんなことはしない。実は盛岡出身でアパレルの準大手に勤めていた男がいる」
部下のひとりが資料を見る。
「青山俊雄、26歳。アパレルメーカーに1年前まで勤務していたが、一身上の理由で退社している」
「なるほど。アパレルメーカーの人間なら服を持っていても怪しまれない」
「その心理を利用せよ。現在彼はアパレルや洋服関連の企業に当たっているらしい。ということは、今やらないともうチャンスはない」
部下たちはボスの言葉を真剣に聞いていた。
「盛岡学園高等部の女子制服を強奪せよ」
「まずは青山俊雄に接近してみます」
部下のひとり、平野孝幸が青山に接近することになった。
「わかった。うまくやれよ」