ああ、スティング勘違いされる・・・② | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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その朝、盛岡学園周辺は交通渋滞。
菊池さりと西エリカはバスが予定より10分も遅れたことに腹を立てていた。
「まったく、冗談じゃないわよ」
するとさりはため息をついてこういった。
「危うく遅刻だったね」
そこへ夏子がやってくる。夏子はふたりに声をかけた。
「どうしたの?」
するとさりは「おはよう」といった。そして夏子にバスの遅延の話をした。
「IGRが人身事故で運休だって」
夏子は運休の話を知らなかった。だから俊彦のことが気になった。
「ええっ?じゃあ俊彦さんも…」

沼宮内の人身事故について、警察はホームからの身投げと断定した。
被害者は中村正幸、41歳。盛岡市内の企業に勤める会社員だった。そして娘が盛岡学園の2年A組の生徒中村友美だった。
2年A組の担任である沢田千春は驚いていた。中村友美はこのことを知らないかもしれない。
「中村さん、来てますか?」
2年A組の教室で友美は阿部さくらと教科書の見せ合い。友美の表情は父の突然の不幸など知らなかった。
「ここ、さくらはわかる?」
友美がさくらの教科書を、ユダヤのトーラー朗読のとき羊皮紙を指し示すようにシャープペンシルでなぞってみた。
「数学の加減乗除…四則の復習ね」
「そう」
そんなときだった。沢田千春が友美に声をかけた。
「…中村さん、ちょっとお話があります」
友美は笑顔で沢田についていった。しかしその笑顔はすぐに壊れることになる。
(千春先生、大変だって顔をしてたわ。何かしら)
さくらは友美が心配だった。

沢田は職員室で友美にいった。
「…お父さん、沼宮内駅のホームで死んだのよ」
それを聞いた友美はショックのあまり立ちくらみ。それを夏子が抱えた。
「横田さん」
「いいのよ、あまりにもショックなのね」
夏子は養護室に友美を連れて行くことにした。

俊彦は午前10時にやっと盛岡学園にやってきた。大谷から休職を命じられていたのに、なぜやってきたのだろう。
「もし俺の顔を見たら、どんなことになるのかな」
俊彦は自分の姿を見た職員の驚きようを期待していた。
中に入る俊彦に、数人の生徒が押しかけてきた。
「それっ!」
その中にさくらの姿があった。
「原俊彦!よくも友美を…」
そういったのは吉田塁だった。彼は中村友美と付き合っている仲だったのだ。
「友美のお父さん、お前が殺したんだろ?」
それを聞いた俊彦は弁明する。
「えっ、そんな。じゃあ沼宮内での人身事故ってのは…」
さくらが塁たちの俊彦いじめをやめさせようとした。
「先輩、やめてください!誤解ですよ」
しかし小沢孝憲がさくらを痛めつけた。それを見た俊彦は怒った。
「じゃあやらなきゃいいんだ」
俊彦は孝憲のふくらはぎをつま先で蹴った。
「痛いよ」
「じゃあみんな、どういうことか僕にちゃんと説明しなさい!」
俊彦は塁と孝憲、それに残りのメンバーである小島久美、吉田美緒に話を聞いてみることにした。

まずは塁がどうして俊彦を標的とにらむのかについて説明した。
「まず、どうして僕なのか」
「それは…」
塁はその先の言葉に困っていた。岩手県民にありがちな無口なタイプというわけじゃないが、自分に都合の悪くなりそうなことはしゃべりたがらない。だから俊彦は塁にこういった。
「現実を見ていいなさい。中村友美ちゃんのパパの事故と僕が、どうして関連するのですか?」
塁は孝憲と久美の顔を見た。
「おい、小沢。遠藤理恵って沼中だよな」
「うん」
孝憲が遠藤理恵について話をする。
「遠藤理恵、盛岡西高校3年。僕と小中同級生でした」
「それじゃIGR使ってるね」
「はい、でもなかなか僕と会う機会はなくて…」
「そっか~、たまに声かけようよ。でも電車内だからあまり大声は禁止だよ」
俊彦は一呼吸置いて、塁に再び俊彦と事故の関係について問いただした。
「その遠藤理恵がどうしたんだい」
「あ、その子からメールが来たんだよ。キモイ親父がまた来たから、思い切りやったって」
それを聞いた俊彦は頭をひねった。
「それじゃその子が犯人じゃないの?」
しかし美緒が携帯の画面を見せた。
「それが違うんだよね」
さくらが見た画面には、こういう文章があった。

昨夜注意したキモイ親父、あの原って人が始末したみたい。
あ~、すっきりした。
原俊彦っていうの、ありがとラブラブ

「…俊彦さん」
「さくら、どうしたの」
さくらは俊彦に携帯を手渡した。それを見た俊彦は
「ちょ、僕は渋民だ。いわて沼宮内は逆方向になる」
「…そう言われるとそうよね」
そこで俊彦は用事を思い出したといって、学園をあとにした。

さくらは俊彦が無実だと信じていた。まさか、誰かが友美の父親を突き落とし、俊彦に罪をかぶせようとしたのだろうか?
「これはわたしたちの出番だわ。夏子さんに相談よ」
すると久美の携帯に着信が。久美が電話に出ると相手はこういった。
「原俊彦は今日盛岡学園に来たか」
「…」
「来ていなければよし、もし来ていたら」
「どうすれば」
「どうすべきかは諸君の裁量に任せる」
そういって相手は電話を切った。

ちょうどその時間、職員室で社会科教諭の大越学が電話の受話器を置いていた。
「はぁ、すっきりした」
け伸びをしている大越に夏子が声をかけた。
「大越君」
「あ、夏子先生。原さんは…」
「俊彦さん、これからいろいろあって」
大越は今日の毎朝新聞を見ながらこういった。
「そうですよね。政経諸問題ある中で、非常勤講師よりも政財界のキーパーソンとの対話が金になりますし」
「まぁ、口がうまいのね」
夏子は俊彦よりくどき文句の上手な大越に、お世辞を使った。
「俊彦さんより若いけど、しっかりしてそうだし」
「僕は今から1年生の現代社会ですから」
そういって大越は職員室を出た。