夜を追いかける⑥ | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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翌朝、盛岡学園前の空気は重かった。
「おはよう」
さくらが疲労困憊のエリカの手をとって歩いていた。そこへさりがやってくる。
「さくらちゃん、お・は・よ」
「あ、さり先輩」
さりはエリカの顔を見てこういった。
「エリカ、昨日は働きすぎだぞ」
するとエリカは目をパチクリとした。その次の瞬間である。
「きゃああっ!」
「何だよ」
五十嵐のバイクが突然盛岡学園の敷地内に現れ、暴走した。生徒たちはただただ逃げ惑う。さくらとさりも驚愕のあまり腰を抜かした。
「何なのよ、これ」
すると繁治と大谷の運転手の吉村浩一が五十嵐のバイクに戦いを挑もうとする。
「待った!」
その挑発に乗った五十嵐はさらに暴走する。しかし途中でバイクが止まってしまった。五十嵐はあわてる。
「何でだ、どうしてだ」
その間に繁治とハングタンたちが五十嵐と格闘する。最後はさくらのテニスラケットが五十嵐の頭に命中して、五十嵐は倒れた。
そこへ俊彦がやってくる。
「五十嵐洋助」
俊彦が五十嵐の名前を口にした。それまでハングタンたちは五十嵐の名前を知らなかった。だからさくらはびっくりした。
「ちょ、どうしてこの人の名前を知ってるんですか」
俊彦は半年ほど前の全国紙の記事を見せてこういった。
「その記事に、萩原と言う男の名前が出ているだろ。その萩原と言う男の子分だった」
その説明を聞いて繁治は五十嵐を問いただす。
「さ、誰に頼まれた。萩原か?」
繁治はまるでリンチの「総括」のように五十嵐を殴る。しかし俊彦と夏子が止めに入った。
「さぁ、吐け!」
「よせよ、シゲ。逆効果だ」
俊彦の指摘どおり、五十嵐は元自衛官の打撃に耐えかねて失神した。
「…とりあえず校門に放り出せ」
「わかりました」
俊彦の命令で五十嵐はハングタンたちによって校門のところへ連れ去られた。
「はい、よくできました」
というところで、1時間目の授業の5分前だったので全員校舎へ急行した。

五十嵐は校門に何時間もさらされていた。その間誰の目にも留まらなかった。
3時間目の授業中だ。校門の前に大橋が立っていた。
「五十嵐、これはどういうことだ」
大橋は五十嵐の胸倉をつかみながらこういった。
「萩原さんにまた恥をかかせたいのか。裏切り者が」
五十嵐は必死に助命哀願。しかし大橋は冷酷にも胸ポケットに仕込んだ毒針で五十嵐の心臓部をさりげなく刺した。
「ふっ、とんだことになったな」
その光景に盛岡学園関係者は誰一人気づかなかった。

正午、盛岡駅に萩原覚が現れた。この男、半年前にネットオークションで学校の制服などを出品させてコスプレ業者やAVコンテンツ産業の関係者に売りつけていた。
萩原はサングラスを外し、南口の柱の影に立つ大橋にサインを出した。

ちょうどその頃、シーウェイブ急便のトラックが盛岡学園の正門前を通り過ぎた。
「ん?どうしたんだ」
東條忍が五十嵐を発見した。すぐに車を降りて五十嵐の様子を見た。
「しっかり、しっか…」
五十嵐はすでに死んでいた。忍は大声を出す。

俊彦は2年A組の物理の授業で助手をしていた。物理教諭の岡沢幸也が水車とばったりについて説明していた。
「水車と言うのは、水の流れの位置エネルギーを回転運動の仕事に変えるための器械。ばったりというのも水の位置エネルギーを使ったもので、どちらも脱穀・精米・製粉に使われた」
岡沢が説明している間に俊彦は原寸の半分の水車を組み立てていた。
「できました」
「よろしい」
そのとき忍の叫び声が聞こえたので、俊彦は物理室を飛び出した。
「ちょっと外が騒がしいので…」
岡沢は特に注意もしなかった。そのときさくらも
「ちょっとトイレへ」
と言って物理室を出た。

俊彦とさくらが校門についたときにはすでに繁治が忍と一緒に立っていた。繁治は五十嵐の死体を見て後悔した。
「…やっぱりだ」
さくらは五十嵐の死体を見て怖くなり、俊彦の背後に隠れた。
「大変だな、これで萩原の手がかりは」
俊彦にとって、いや、ハングタンにとってこれは大失態だった。