宮古追跡大作戦!③ | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

コメント・ペタ・読者&アメンバー登録はお気軽にどうぞ。

午前8時、俊彦の乗ったバスは宮古駅に到着した。俊彦は降りてすぐに背伸びした。
「さてと、鮭祭りはと…」
すると俊彦の顔を見て声をかける男が現れた。
「原君じゃないか」
俊彦は男に声をかけられびくりとした。
「誰ですか、原君なんて」
振り向くと男がそばに立っていた。
「ああっ」
俊彦は男に覚えがあった。
「今井さん」
今井豊彦、40歳。俊彦と同業のルポライターで、俊彦が東京にいた時代先輩の事件記者として鳴らしていた男である。
「どうしてここに」
今井は空を見上げながらこう言った。
「さぁ、どうしてだろうな」
俊彦は今井の肩を叩いた。
「不死身のサイボーグが、今じゃ旅がらすってとこか」
「そうだな」

一方、夏子と理恵子は8時半に宮古の港に到着した。
「う~ん、三陸の海はいいよね」
「最高!」
夏子は久しぶりに三陸の海の風を吸う。だから思い切って伸びをしていた。
「ここが一番よね」
しかし肝心の鮭祭りはここでは行われていない。夏子は近くの漁師に話を聞いた。
「あの、ちょっと失礼しますが」
「鮭祭りはどこですか?」
漁師は宮古の鮭祭りについて説明した。
「宮古の鮭祭りは津軽石で行われるんだよ」
夏子は津軽石と聞いて鮭の孵化場のことを思い出した。
「ああっ、そうか。鮭の孵化場なら」
鮭の孵化場は津軽石川のほとりにある。以前に俊彦からその場所だけは教えられた。
「確か45号だよね」
夏子は津軽石川のほとりを探し、鮭祭りの会場に到着した。
「ここね」
夏子が車を留めたときにはもう臨時駐車場は車がいっぱいだった。
「うわぁ、すごいなあ」
そこへ俊彦と今井が現れた。
「どうだい、鮭祭りは」
理恵子が振り向くと俊彦がいた。理恵子は両手を振った。
「すごい」
「そうだろ」
今井は夏子を見て驚いた。
「あ、あの人は」
「ああ、先生」
「ショパンコンクール入賞の栄誉を誇る、あの横田夏子だ」
「そうですよ」
今井はポケットからカメラを取り出した。
「先生を撮るんですか」
「もちろん」
俊彦は夏子のことだからと今井を諌めた。
「先生と話し合ってきます」
ということで、俊彦は夏子と話し合いを始める。そのとき近くの車から今井は怪しい視線を感じた。
(…誰だろう、オレをつけてきて)
俊彦は夏子に今井を紹介した。
「僕が東京で書いてた頃の先輩だよ」
俊彦は今井を呼んだ。
「あ、あなたが横田さんですか」
「はい」
今井は夏子と握手。
「今は、お仕事は」
夏子は照れながらこう言った。
「まぁ、ピアニストですが。盛岡学園の非常勤講師も兼ねてます」
俊彦が続いた。
「僕も非常勤講師待遇ですよ」
それを聞いた今井はびっくりした。
「原君もかい」
「そう、そうです」
今井は俊彦と夏子を従えて鮭祭りの会場へ勇ましく進んだ。

鮭祭りの会場は鮭のつかみ取りが行われていた。今井と俊彦は鮭を素手で取ろうとする参加者を取材していた。
「今日はどちらから来ましたか」
「盛岡です」
「鮭のつかみ取り、難しいでしょ」
「ええ、意外と難しいもんですね」
「なるほど、と…」
そんな中、今井が何気なく撮影した場所を偶然男が通りかかった。それは昨日後藤直哉に斬りかかった通り魔の男だったのだ。
(まさか)
今井は連写でシャッターを切った。男の顔を確認するためだ。
「よし、撮れた」
今井は俊彦と理恵子を呼んだ。カメラに写った男の顔を見せるためだ。
「どうだ?」
俊彦は上出来と納得の表情。今井はこう言った。
「それならいいんだ」
こうして男の影をちらつかせながら4人は鮭祭りを楽しんだ。

俊彦がさくらに連絡したのはその日の夕方だった。
「ええっ、明日も宮古なの?」
「そうなんだよ。だからゴメン」
さくらは心から俊彦を憎みたかった。しかし直哉から情報が手に入ったと言うことで今はこらえている。
「実は、直哉のことで」
「何だって?そうか、わかった」
さくらは俊彦に何を伝えようとしているのか。