秋天の暴走② | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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放課後、ベビーカーを見た生徒たちの前に再び空のベビーカーが現れる。今回は自走式のようだ。
「なんだありゃ」
秀太が仰天した。また空のベビーカー、しかも秀太の前で立ち止まり爆発したのだ。秀太は軽いやけどを負ったが、そこにさくらと理恵子が駆けつけたからさあ大変だ。
「木村君」
「どうしたのよ、怪我してるじゃない」
「いてて、空のベビーカーが爆発したんだよ」

翌朝、理事長室で空のベビーカーによる事件の説明があった。
「昨日、盛岡市北部でベビーカーの暴走による事件が多発した」
大谷正治より説明を受けた俊彦、横田夏子、光田留美、国分繁治は個々の事件について報告する。まずは俊彦が木村秀太の母から聞いた話をする。
「木村秀太、それに米倉ゆきえは滝沢から盛岡学園に向かう途中で目撃しています。そして帰りに木村は爆発の巻き添えを食っています」
「で、やけどのほうは?」
繁治が親指を立ててサムアップのポーズ、それから説明に入る。
「軽症でした。チェリーの助けがあったのでね」
「なるほどね」
俊彦は本題の母との会話に入る。
「そのとき僕は滝沢口のビッグパワーにいました。そこで木村秀太の母に会いまして、買い物カートの話をしたんですが」
「どうだったの?」
「やはり木村はベビーカーを拾ったようだ。そこで何かあったと言うらしい」
「…それじゃ、木村君が何かを知ってるかも」
「1週間前に若い男が捨てようとしたベビーカーを拾ったんだ」
繁治はうなづいた。
「それをお袋が買い物用に…すごい家族だ。それに引き換え捨てた若者は」
今度は夏子だ。
「青山駅で自転車置き場に不審な幌付ベビーカーが置いてあったんです」
「…今朝か?」
「そうなんですよ」
今朝青山で起きたと言うことは、俊彦は不審ベビーカーを知らないのだ。
「中身は」
「どうやら中に書置きがあって、それをうちの生徒が丸写ししてたんです」

書置きの内容を模写したのは2年B組の小原千尋だった。
「でね、みんなひらがななの。見て」
菊池さり、内藤凛、森崎竜太も千尋のノートに見入っていた。
「ええと…」
凛がノートの文字を読む。
「ここに、これをいれてください…」
竜太は笑った。ひらがなで書くということは中学生のいたずらだろう。
「ひらがなで訳わかめ!」
竜太は書置きが意味不明だと言いたかった。
「でも後は何も入ってないのよね。と言うことは」
「うん、それが気になるの。さりちゃん、誰に相談したらいいの?」
さりは俊彦を薦めた。そして何か進展があれば連絡すると言った。
「大船に乗ったつもりでね」
「わかったわ、さりに任せる」

さて、理事長室の職員たちはまだ事件の説明中。ここで繁治は事件のキーパーソンに接触したいと主張。
「最近この近辺で離婚した人とか、調べましょう」
すると俊彦は繁治の意見に難色を示した。
「離婚、あと子供の事情、それらは難しい。木村に若い男の詳細を聞くことが先決でしょうね」
「…なるほど、それから該当者割り出し」
「一応、僕より若いかというぐらい。つまり28歳前後」
「はい」
繁治は学校を飛び出していった。それを見送った大谷がこう言う。
「ベビーカーには人の夢と希望、そして愛が詰まっていることを忘れないでほしいものですな」
夏子と留美はかしこまった顔をした。
「ところで木村って1Aだよね?それじゃさくらがもうやってるかも」

俊彦が1Aの授業を終えた後だった。さくらが俊彦に秀太のことで話があると言うのだ。
「木村秀太から話が聞けたんですか」
「ばっちり」
さくらは片目を閉じた。
「でね、若い男は少し白髪で、耳飾はなかったようなの」
「へぇ~」
「ちょっとおかしいのよね」
しかし俊彦は木村の見た白髪が気になった。
「若い人の白髪って、いわゆるブリーチじゃないか?」
さくらはブリーチと聞いて納得。
「そっか」
「しかしベビーカーを捨てるなんて、できちゃった結婚とかのゴタゴタあったとか」
さくらは俊彦の口をふさいだ。
「学校でそんな話しないの」
「う、うう~」

栞は夏子から事件を知った。
「青山駅の自転車置き場のベビーカーだけど、警察は取り合ってくれないようなの」
「えっ?」
「事件じゃないもんね、仕方ないでしょ」
「すでにラビとサリーが駅に向かってるわ」

さりは青山駅で例のベビーカーを発見した。フレームと手すりは黒く、幌がついているものだった。
「これだよ、訳のわからない書置きは」
千尋が見た書置きはくしゃくしゃに丸められていた。
「この謎さえ解ければ…」
そこに理恵子が来た。さりは理恵子に書置きの謎解きをお願いするが、理恵子もわからない。
「ここに、これを入れて、って何を入れるのよ」
理恵子はとりあえずちんぷんかんぷんなままにこれというものを入れてみた。
「疲れたよぉ」
するとさりの携帯に電話が入る。
「もしもし」
相手は男の声でこう言った。
「ベビーカーはまだある。これからもっともっとお遊戯しましょうね」
それを聞いたさりは理恵子に携帯を渡す。
「お遊戯って、どんなゲーム?」
「…それは教えない。だけどスリルがあるよ」
「何よぉ~!もう」
「今からスタート!」
男は電話を切った。するとベビーカーは突然動き出し、車道まで飛び出した。
「危ないっ」
「何やってるのよ」