秋天の暴走① | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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盛岡学園の前を今日も生徒たちが歩いていた。
「ねぇねぇ、栞ちゃん」
「ん?」
高島理恵子が日高栞に話をしていた。
「ベルリン土産、ないの?」
栞は困った。そもそも土産なんて用意してないのだから。

阿部さくらはコートを羽織ながらぼやいていた。
「でも寒いわね、街路樹が黄色くなるとこっちまで寒くなるわよ」
すると原俊彦がやってくる。
「よ、元気?」
「…寒いね、先生」
「うん、寒い」

そんな秋風吹く盛岡でのことだった。国分通りに空のベビーカーが転がってきたのだ。
「何だ!」
通学途中の生徒も目撃した。木村秀太はベビーカーが転がってきて腰を抜かした。米倉ゆきえはいきなり飛び出てきたベビーカーにぶつかった。
「どうなってるんだよ」
「どうなってるの?」

秀太もゆきえもさくらと同じクラスだった。
「ベビーカー?」
秀太の話をさくらと佐藤範子が聞いていた。
「そうだよ、突然現れて」
「不思議なことってあるのね」
「どこの家族が捨てたんだ。どうせならエコバッグがわりに使いたいね」
「その考えはなかったなぁ」
「でも捨てられたと言うなら警察にも言えないし」
「…そうかな?」
「不法投棄は言いがかりだって、捨てた人に言われるぞ。この前なんか」
秀太は1週間ほど前に似た光景を目の当たりにしている。滝沢の元村でゴミ捨て場にベビーカーを捨てようとした若い男を見た木村は、そのベビーカーを拾った。だがそれを見た若い男は逆に木村にこう言った。
「おや、中学生のくせにベビーカーですか」
「…違いますよ」
木村は言い訳ひとつ言わずにベビーカーを担いでその場を立ち去った。

盛岡学園の生徒たちの中で、ベビーカーを目撃したのは全校で11人にのぼった。それも秀太が見たベビーカーとは違っていた。全生徒から話を聞いた俊彦は困り果てた。
「2Cの星野、3Aの藤田、鈴木は厨中卒。木村たちは滝沢村。どうも引っかかる」
メモ帳に書かれた内容から、ベビーカーは最低でも4基あったことになる。捨てた犯人が複数存在したのだろうか?
「木村は確か1週前に元村のゴミ捨てでベビーカーを拾ったんだな。念のため木村のママに確認しよう」

その頃、盛岡学園の生徒たちにベビーカーを見られて喜ぶ愉快犯がいた。
「よし、これからが本番だ。あいつらに教えてあげよう」
愉快犯はリモコンの起動スイッチを押した。