でっち上げ!一本木心中① | ザ・ハングタン+

ザ・ハングタン+

「ザ・ハングタン」とは法で裁けぬ盛岡の鬼を退治する乙女たち。
この物語はそんな乙女たちの戦いのドラマである。
(現在「いわてマル秘指令ザ・新選組」アーカイブも公開中)

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自殺者は江戸の昔より後を絶たない。

元禄より享保年間のこと、大阪の近松門左衛門が心中モノを書き上げて後、心中ブームが巻き起こった。
人口に比べての自殺率は現代よりも高かったのではなかろうか?

さて、元自衛官の国分繁治が懐かしの地・滝沢村一本木にやってきた。
「久しぶりだな」
繁治が一本木に来たのは、岩手山を見たいと自衛官時代からの仲間である吉村浩一が言ったからである。
「岩手山がこんなにすっきりと晴れたのは久しぶりだな」
「今年は雨が多かったからな」
繁治の言うとおり、この夏は雨が多かった。だから快晴の岩手山を拝むのはうれしかったであろう。

繁治は二戸の県立高校を卒業後陸上自衛隊に入隊。イラク派遣の際に行き方知れずになるも国内で報道されることはなく、原俊彦も先輩の写真家の情報でそれを知った。
その後2007年夏、同僚の浩一に助けられて揃って帰国。と同時に除隊となった。
「もう2年が経つのか」
原俊彦と繁治、浩一の馴れ初めはまたの機会に。

吉村浩一が愛車のキーを持って車に乗り込んだ。
「シゲ、行くぞ」
繁治は浩一のスポーツカーに乗った。

その頃、柳沢から一本木にかけての県道を一台のワゴンが走っていた。
運転手は菊田正栄、31歳。盛岡学園の事務員だ。実は菊田にはある嫌疑がかかっていたのだ。
数日前、ハングタンたちは大谷正治理事長の命令で菊田の内偵捜査に入っていた。そして菊田が盛岡市役所や滝沢村役場の関係者とつながっていた事実をあと一歩で突き止めるところまで来ていた。
菊田の後を追いかける黒いセダンがあった。運転していたのは滝沢村役場の職員の田口仁だった。

2台がたどり着いたのは一本木にあるモーテル、所謂連れ込み宿である。
「田口さん…田口さん」
菊田は田口を探す。しかし田口はいない。するとスーツ姿の女が現れた。
「菊田正栄さんですね、探しました」
そう言って菊田の口をハンカチで塞いだ。
一方の田口は、連れ込んだ女性を制服姿に着替えさせた。こうして心中自殺をでっち上げたのだ。

浩一と繁治が田口の黒いセダンを目撃したのはこの直後だった。
「ん?この時間にモーテルを出る不届きな奴もいるんですな。シゲ、ナンバーを」
「了解」
繁治は黒いセダンのナンバーをメモした。俊彦直伝のメモ記録術も板についたようだ。

翌朝、一本木のモーテルで菊田は田口が連れ込んだ女性と心中という形で殺されていた。モーテルの従業員は女子校生姿の女性を見て驚いた。さらに、傍らに自殺をほのめかす文書が残されていた。
先の複数自治体職員とのつながりについて、ハングタンを名乗る女子生徒に見咎められてしまいました。
つきましては、彼女と一緒に死んでお詫びをさせていただきます。

ところが女性は奇跡的に目を開いた。

その頃、光田留美は出席を取っていた。
「稲垣、井上…今井」
今井葉子がいない。いつも通学路が同じ高島理恵子は心配していた。そこへ繁治からの呼び出しがあった。
「光田先生、原講師、3B高島、増田、2B菊池、1A阿部さくら、以上の者は理事長室に至急来てください」
理恵子と増田みうはもうたまらない。
「もう、こんな朝早くに何よ」
「理事長のお達しよ、従いなさい」
「は~い」