南沢は塾を後にしてから、さくらにつけられているとも知らずに盛岡市内のほうへ歩いていた。
「岡田さんにもう一度話を聞いてみないと」
(…岡田さんと南沢先生、つながったわね)
岡田は大沢川原の河川敷で南沢を待っていた。同乗していた山本日向子はこう言う。
「関根さんが辞職、これはもうピンチですよ」
しかし岡田は思ったほど心配していなかったようだ。
「関根君の代役はすでに我々で用意している」
「はぁ」
「我々と大谷一派で半々」
そこへ南沢がやってくる。
「岡田さん、真琴のお父さんが盛岡学園の理事を辞めたそうですね」
「…どうしてそれを」
すると突然例の方程式の紙がばら撒かれた。
「何だ、これは」
さくらが御厩橋に現れた。
「岡田さん、残念でした。関根理事の後任が大谷シンパで」
「しかしどういうことだ」
今度は留美が説明する。
「3×4、7+5、ともに答えは12になるの」
「岡田さんには6+6と言ったほうがわかりやすいと思いますがね」
日向子は驚いた。
「な、何なのよ」
「あたしたちはハングタン、あんたたちを裁く死刑執行人よ」
「死刑執行人?ふざけるな」
するとさくらがゆかりの自白テープを岡田に聞かせた。
「岡田さん、あなたは学園の多数派工作を指揮した。そして関根親子を利用し、原俊彦に不祥事の汚名を着せようとしましたね」
「日向子先生を愛人にしようなんて、許せない!」
南沢はハングタンの目を避けるように走り去った。それを見た繁治は俊彦に言う。
「いいのか?あいつをほっといて」
「ほっとけないさ。だけど南沢千紘には近く話が来るらしいから」
繁治は何だか納得いかなかった。
その間にハングタンたちは岡田を撃退した。
「学園乗っ取りの方程式、これでご破算ね」
翌朝、南沢は上田のアパートに戻っていた。郵便受けには盛岡ジャーナルと岩手県教育委員会からの公示、それにピンク色の手紙が入っていた。
「あれ?」
ピンク色の手紙には桜の封がしてあった。これはさくらが書いたものだ。手紙の内容は以下の通り。
午前10時、IGR青山駅青山口にお越しください。
あなたを利用した岡田将典さんに
正義の裁きが下されます。
それから教育委員会の公示を読んだ。そこには「湯田高校臨時教諭」とあった。それを見た南沢は笑みを浮かべた。
岡田はクイズ番組のイスに座らされていた。俊彦司会のクイズ番組が始まるのだ。
「さて、今日もやってまいりました。百問即答ゴッドマース」
「何なんだ、その番組は」
さっそく留美が説明する。
「今から数学の問題を出します。誤答、回答拒否はゴンドラが下がりますから、気をつけてください」
「OK,OK,それじゃスタート!」
さくらが問題を読み上げる。
「この連立方程式は解が12になるものです。さて、yに入る数字は?」
昨夜ばら撒かれたのと同じ式が出された。岡田は自身有り気。
「何だ、簡単じゃないか。6ですよ」
しかし不正解。答えは「5」だった。
「あなたは多数派工作でyを勝手に6に、いや、7にしようとしましたね?」
「うるさい!」
すると水がかけられてしまった。
「何をする」
今度は理恵子が問題を読み上げる。
「真琴君は盛岡の大通りでクオカードをお金に換えました。1000円の85%だったので850円でした」
「それは当然だろ」
「しかし店員さんは800円で買い取ってしまいました。それをお金に換えなかった真琴君はバスでうちまで帰ってしまいました」
「さてここで問題です。真琴君は帰りのバス代がありませんでした。どうしたでしょうか?」
岡田は考えた。しかしわからない。するとゴンドラが壊れてしまう。
「どういうことなんだ」
憤慨する岡田だったが、もうハングタンたちはいなかった。
「正解 7円で50円にした」
あったのはそう書かれた書置きだけだった。
気がつくと岡田は関根親子とともに青山駅の大時計の下で晒されていた。道行く人は晒された悪人たちに野次を飛ばしていた。
「盛岡学園乗っ取りだって」
「ふざけるな!」
その様子を南沢も見てた。そこに俊彦と繁治が現れた。
「よっ、南沢先生」
「あなたは?」
「僕が本物の原俊彦です」
南沢は笑顔だった。
「今度湯田高校の先生になります。まぁ臨時ですけど」
「湯田ですか、錦秋ですねぇ」
「あ、今度沢内でキノコ狩りだけど」
「理恵子とか誘ってやるか」
俊彦は南沢の前途が明るいものになるよう心から祈っていた。