午後3時、盛岡駅の中ほどにある滝の広場に俊彦、繁治、理恵子が集まった。
滝の広場と言うのは、駅舎寄りに滝が設けられているためにつけられた名前だ。この一角には石川啄木の歌碑もある。
「やぁ、これでそろったね」
「うん」
俊彦は早速西村と東山剛が実行しようとしている第一学生寮取り壊しについて説明した。
「実は、医事審議会が開かれたんだ。そこで僕、特ダネ拾ったんだよ」
「どういうことよ」
「あの寮を取り壊すんだ」
理恵子が驚いた。
「うそでしょ、ねぇ」
しかし俊彦は何も言わない。
「もおっ、取り壊しなんて」
繁治は左手でこぶしを作り、膝を叩いた。
「やることが性急過ぎないか?インフルエンザ感染を理由に壊すなんて…」
「そうだ。どうやら蔓延防止のために行政が執り行うそうだ」
「ええっ?」
「もしかしたら、裏があるかもな」
「…第一学生寮取り壊しの裏があるってことか」
「そんな。あそこは留学村って呼ばれてるの。そこを壊すなんて、留学生締め出しじゃないの」
理恵子は泣いた。
「…ひどい」
「そうだよな」
「でも二人ともインフルエンザじゃないと診断されたんじゃないか」
「それだ」
俊彦は繁治からカルテを見て納得した。
「なるほどね、久米君の風邪は夏風邪だったと言うことか」
「そういうことなの」
「じゃあインフルエンザの診断のからくりはこうじゃないかな」
俊彦はこう推理した。
「多分池村さんの診断はカルテの通りだ。それを東山さんか藤原さんが改ざんしたということかもしれない」
「それで?」
「そこで池村を狙う中谷に記事を書かせる」
「なるほど」
「しかし一端のルポライターが記事にしたことだけで、行政は動くのか?そこで…」
「そこで?」
「取り壊しを示唆した東山と言う市会議員、医事審議会の西村、奴らが鍵を握ってる」
「そうか、あいつらが黒幕」
「じゃあ間宮寮長に伝えてくる」
そう言って理恵子は再び寮に向かった。
盛岡学園の理事長室では西村が大谷と話をしていた。
「第一学生寮を取り壊すと言うのは、どういうことですか」
「すでにインフルエンザ対策として隔離閉鎖を講じていますが、それだけでは不十分と知事がおっしゃいますので」
「そんなこと、知事が言いますかね」
西村は大谷に嘘をついていると指摘されたようだ。
「それに、中央病院で話を聞いたんですが」
「何でしょうか」
「久米直也、松岡貴之、この両名はインフルエンザではないということでした」
大谷は診断書を西村に見せる。すると西村は歯軋りをしていた。
(やっぱりですね)
「池村医師の見立てはこんなはずじゃありません。ありがとうございました」
西村は口惜しさを残しながら理事長室を出た。