「リング」が強烈すぎてスリラー作家みたいなイメージがついて回るが。こんなドキュメンタリーっぽいものも読みやすくて良かった。過去の海洋事故、現在の海中での生命の危機、過去と現在、交互に話が展開。現在と過去の時空をつなぐのが香水の瓶でこれを狂言回しに、話が進む。エピローグで、ムスタファが島に打ち上げられてからの話が心に沁みた。島の人たちが困難を押し親身になって救助活動に邁進する。友が犠牲になり生き残ったムスタファの心境など。胸に迫った。優輝の再生がヨットでおじいちゃんの加平との交流がほほえましかった。僕の年齢では加平が第二の人生を夢に向かって邁進していく部分に背中を押された。

★★★★☆

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和歌山県串本町のダイビングショップでガイドとして働く女性ダイバー高畑水輝。そのもとを偶然訪れたトルコ人青年ギュスカン。彼の目的はいまから125年前、祖先ムスタファを乗せた軍艦「エルトゥールル号」の遭難現場に潜り、「あるもの」を捜すことにあった。バディとして潜る水輝が一瞬目を離した隙に突然視界から消えたギュスカン…。1世紀の時を経て、日本とトルコの時空を超えて、絡み合う宿命。それは偶然なのか、必然なのか。海の脅威を知り尽くした作家が「知の腕力」で描いた息を呑む渾身の海洋小説!