今週はこれ。初めての「吉本ばなな」、こんな感じなんだね。なんだか「女子」ならではの柔らかな雰囲気がずーーーと最初から最後まで続いて、事故物件マンションに出る花子さんとの交流などあの世とこの世がリンクすり部分もあって不思議で温かい「お話」だった。

恋する人の喪失からに立ち直るのに、なんとも言えない勇気や元気をもらえる。

「あいた隙間には必ずなにかがこうして入ってくる。いつだってそうだ。悪いことの半分はいいことでできている。見つけることができるかどうかだけだ。」

そう気づくのががもっと若い時だったら良かったと思わされる佳品。

船橋に少しでも土地勘があったらさらにさらに面白く読めそう。

★★★★☆

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書店の店長をしている立石花は、15歳の時に、父親が借金を作って夜逃げし、母親は新しく出会った男性と結婚をすることになり、一家離散を体験する。一緒に暮らそうという母親の説得を断り、千葉県の船橋に住む親戚の奈美おばさんのマンションに身を寄せることになるのだが、大好きなお母さんと船橋の駅で別れるときに買ってもらった「梨の妖精 ふなっしー」のぬいぐるみを15年経った今も大切に持っている。
花が奈美おばさんのマンションで暮らすようになって間もなく、小さな女の子が出てくる不思議な夢を繰り返し見るようになる。その夢の中の女の子もまた、「梨の妖精 ふなっしー」を愛するひとりだった。花はいつも「温かいミルクティーを飲んだ」ような優しい気持ちになって目が覚めるのだった。
悲しい出来事があって泣きながら寝た夜のことだった、いつもの少女が夢に出てきて、花に頼みごとをする。それは「自分が住んでいた庭にある桐の木の下に埋めたものを掘り起こして、お父さんに渡してほしい」というものだった。
夢から覚めた花は、奈美おばさんに、この不思議な夢のことを告白すると、過去にこの部屋でおきた出来事を教えられる。そして、夢の中に出てくる少女との約束を果たそうと決意するのだが……。