全編重たくて陰鬱なんだけど一気に読んだ。登場人物が少ないので「この男が怪しいんじゃない?」ってのが最後に「そういう形できたか!」なんだけど、恩人に恩を仇で返すような主人公向井があまり好きにはなれずに寄り添って読めないのが辛いけど、期限まで約束どおり殺すことが出来るのか、誰が伸子の意思を受け継いで指示しているのかが興味深く、先が気になってしょうがなかった。

内容は新しい人生を手に入れる為に交わした恐ろしい「約束」。その実行を促す手紙に衝撃を受ける主人公向井は大切な家族を守る為にどんどん追いつめられていく。「一度罪を犯した人間は幸せになってはいけませんか。」向井の生い立ちにはやるせないものがある、だがそれは何の関係もない人間に危害を加える理由にはならない。犯罪被害者のありようも考えさせられた。公平がいたことに救われた。

★★☆☆☆

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一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。
捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。