鉄の彫刻で知られテレビ出演もあってその風体は良く知ってるゲージツ家の篠原勝之さん。

彼が「文学界」に書いた短編小説と書き下ろし3篇が1冊にまとめたもの。

とにかく驚いたのは文章力。書き留める力はタダモノではない。

殴られ続けていつもおびえて接していた父が死を迎え、骨(粉)となってモンゴルの草原でまかれる表題作「骨風」から、孤独のうちに亡くなった弟との葛藤をつづった「影踏み」まで全部で8編。

身近な死を客観視し、淡々と描写する。周囲の人々もタダモノでは無い人ばかりだし、活写する能力も凄い。

片方の耳が聞こえないうえに嗅覚も失った幼児のときの病気を背負いながら、父親の虐待にも何とか屈せずに生き抜き、でもどこかに「家庭」というものに憧れを抱えてゲージツに打ち込む。僕にはとても真似のできない生き方がそこにあって圧倒された。

★★★★★

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十七歳、家出少年の人生は、挫折、家族解散、借金返済の自転車操業。
愛猫、ビンボー暮らし、ゲージツ、室蘭、深沢七郎、モンゴル草原、青函連絡船、
編み物、ベネチア、父親、どぶろく、スキンヘッド、弟、甲斐駒ケ岳……
老いてなお逃げ続ける脚力で描き切った、崖っぷちの連作集!
文芸誌掲載作から名短篇を集めた『文学2014』アンソロジーに選ばれた
表題作。鉄と戯れ、ゲージツする日々、蜂に刺され鹿が迷いこむ山の生活。
家族と己の生と死を、タフに見つめつづける全8作。
第43回泉鏡花文学賞受賞。
骨風