卵子の細胞から60兆の細胞が出来て、細胞は感情をもはぐくむ。

今日のテーマは老いと死。これまで老化とは「身体のあらゆる場所が衰えること」とされていたが、最新の細胞研究は「免疫細胞の衰えがその根底にある」という事実を明らかにしつつある。
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老いの正体とは何か?

身体を守るはずの免疫システムを指揮するT細胞という免疫細胞は思春期の始まりとともに生産がほぼ終わってしまう。

そのため、年齢を重ねるにつれて能力が衰え、やがて誤作動して自らの組織を攻撃するようになり、老年病や生活習慣病といった多くの病気を引き起こす原因のひとつになっているのだ。

シリーズ最終回となる第3回は、老化研究や再生医療の最先端研究を紹介し、細胞社会の終わりを見つめる。出演は京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥さん、劇作家・演出家・役者の野田秀樹さん、作家の阿川佐和子さん。

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阿川さんも野田さんも「老い」がいやおう無く来ていることを話す。

イタリアのサルデーニア島。長寿の人が多いことで知られる。世界平均の2倍も高齢者がおり世界中からその秘密を探ろうと研究者が訪問している。調査者は高齢者の暮らしぶりなどを見るが、100歳でも新聞の小さな文字を読み、一人暮らしで自分自身で食事を作る人も。

サッサリ大学の研究である細胞が働き続けていることがわかった。

それは免疫細胞。免疫細胞は病原体を攻撃するが年齢が高くなると攻撃力が弱まる。サルデーニア島の高齢者はこの免疫細胞が活発に動いているという。

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免疫細胞を造る場所は骨髄。免疫細胞のひとつであるT細胞は攻撃の指令をする役目。血管に入った免疫細胞たちが見事なチームワークで外的を攻撃する。

樹状細胞が見つけ、T細胞に報告し、マクロファージが病原体を食べる。

イギリスのバーミンガム大学では、運動が免疫細胞を活発化させるという研究報告を発表。

日頃から短い時間でも運動を継続することが免疫細胞に働きかけていく。

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ところがこの免疫細胞が自分の細胞を攻撃するようになるのが老化。

年齢とともに増える疾病のほとんどがこの免疫細胞が関与している。

世界初の肝臓内での免疫細胞の活動の様子が映像に捕らえられた。

本来守るべきものが免疫細胞に攻撃されている。免疫の暴走が始まっていた。

このバイオイメージングがマクロファージが病原体がいないのに居座る様子を血管でも映像化。必要も無いのに血を止めてしまい、動脈硬化を発症させる。

血管がダメージを受けてしまうのだ。

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濱崎洋子京都大学大学院教授が登場。

濱崎「メタボリックシンドロームも免疫細胞の暴走。サイトカインがたくさん出てしまい組織を痛めてしまう。」

サイトカインは通常は免疫細胞の有効な探偵だが、ひとたび撒き散らされてしまうと、血管が糖分を吸収できずに血糖値が上がってしまう糖尿病を引き起こす。

免疫細胞の暴走を抑制すれば老化も防げるのではないか。

この研究はアメリカカリフォルニア大学で進んでいる。

高齢マウスを若いマウスと繋げると、高齢マウスの筋肉細胞が増えることが実証された。

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さてT細胞の指揮を間違えさせなければいいのでは。

免疫細胞たちのリーダーT細胞。そのT細胞ができる道筋から明かす。

胸腺に集められるT細胞。ここではアンテナがたくさんあり、T細胞ごとに受容体が異なり、異物を見つける。これが何百万種類ある。

胸腺の壁に触れたT細胞は次々に破壊される。これはアンテナの出来不出来を選別しているのだ。

思春期を過ぎると胸腺が無くなってしまう。

正常な判断力を持つT細胞が70代ではほとんど無くなってしまう。

濱崎「宿命として維持できないようになtっている。」

生まれてから20代までが正常に働く。

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免疫細胞も思春期までが作っては壊すことができる。その後は何とか使いまわしするしかにのだ。

京都大学である研究が発表された。人工T細胞である。可能にしたのはiPS細胞だ。iPS細胞は山中ファクターといわれるものを入れる。

これが時間を逆戻りさせる。T細胞からiPS細胞により人工T細胞が出来上がり、新鮮なT細胞を作り出すことができる。

山中「今までは対症療法が中心だったが、おおもとを叩くたたくことによって根本的な治療が出来ると期待される。」

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神経幹細胞もiPS細胞から作り出され、マウスによってその効果が証明された。

山中「人間がどこまで細胞を作り出すことが出来るのか。日々悩みながら研究している。」

阿川・野田「線引きをどこまで出来るのか」

山中「私達が決められるわけではない。病気の人とそうでない人とでも意見が違う。」

山中「変えられる運命ならば運命ではない。」

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太田泰弘さん、心臓が肥大する難病を抱えている。心筋細胞も再生しない細胞だ。太田さんが託したのは再生医療。

細胞シートを心臓に貼り付けると弱った心臓が蘇るという。

細胞同士の相互作用によって弱った心臓が回復していく。

太田さん自身から取り出した細胞をiPS細胞で細胞シートを造り、それを太田さんの心筋細胞に貼ることによって回復する。

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山中「60兆の細胞が納得して死を迎えるのが理想。」

野田「細胞がゆっくり納得して諦めていくのが受け入れられること。」

山中「細胞のポテンシャルはすごい。やっぱり神様にしか創れないなと思う。」

iPS細胞も細胞の力を借りたものなのだ。

受精卵から様々な細胞が作られる。もちろん卵子も精子もそうだ。そして卵子と精子からまた受精卵が作られる。iPS細胞はそれからヒントを得たもの。

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ミクロ