「この人、スーパーマンなんだよね。こんな人がいると思うと元気がでるんじゃないか。」と龍さん。

1月30日の講演会には大勢の人がつめかけ、同じ医師からも尊敬を集める。

脳の手術症例数は日本一だ。旭川赤十字病院脳神経外科部長が今夜のゲスト。

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北海道・旭川の旭川赤十字病院・脳卒中センター、全国から患者が集まる。最後の砦として「ネバーギブアップ」をモットーにしている彼のもとに。

これまで2万人以上の患者を救い、巨大動脈瘤と戦う。最前線で戦い続ける上山先生。医療危機とも向き合う。

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手術数全国1位、ひとつ間違えると死に直結する脳動脈瘤。たとえ命を取り留めても失明や半身不随などを起こす可能性が高い。

他の病院では手術不可能と言われた、深刻な脳の病を抱えた患者が、彼を頼りに集まる。上山は、年間500件以上の手術をし、休みなく働き続け、患者を助けることに心血を注いでいる。
藤林久子さん、目をつぶらないといられなくなる状況になり、眼科に行ったが原因はわからなかった。脳の検査をすると動脈瘤だった。手術は不能といわれて、破裂する不安を抱えながら生きてきたが、旭川の上山先生を紹介された。

目の神経がある難しい場所に動脈瘤があった。上山は藤林さんに詳しく状況を説明し手術することになった。

手術には10人のスタッフが準備をしていた。目の後ろにある動脈瘤。

・腕の血管を採取し、血液の迂回路を作る。

・動脈瘤のある側の血管を止める。

こうして顕微鏡を覗きながらの手術が始まった。ミクロの世界で手術する。

はさみを使って脳を保護する袋を切り裂き、そこから慎重に血管の取り付け、縫合技術は上山が世界一と言われるスーパーテクニックだ。一瞬の気の緩みも許されない、微細な縫合だ。

迂回が成功して、手術後動脈瘤は姿を消した。

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上山「患者さんの人生を把握したいので、話はどうしても長くなる。」

上山「左右の目を別々に動かすことが出来ます。」と実際にやってみせる。凄い!

上山「アホみたいに熱中するタイプなんで、フライフィッシングなんかも、毛鉤に蚊の目玉をつけたりして、手術の腕を落とさないようにしている。」

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手術には道具も大事という。不可能と言われた手術を可能にしているのは、上山の匠の技。そしてそれをサポートする手術器具だ。それらの殆どが、自ら考案した器具だという。中でも代表的なのが、ムラマサと呼ばれる手術用のハサミだ。1つで3役をこなすハサミ。その実用性は高く、日本の脳外科医の約8割が使っている。このハサミには、上山ならではのアイデアが詰まっていた

吸引器具もそのひとつ、以前は両手を使っていたが、片手で出来るようになった。

実際に手術道具がスタジオで披露される。

顕微鏡を使いながらの血管の縫合をシミュレーション。ウチ・ソトと交互に縫合していくという。

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高度経済成長期、町では自動車事故が増えていたが、外科医が足りずに命を落とすケースが報道されて、上山は18歳で医師を目指すことを決意。

31歳で、顕微鏡使用手術に入り、若くして第一人者となる。

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この日は朝8時半に出勤。一人目は脳動脈瘤の手術。3時間で終えて、休む間もなく別の手術室に向かい、二人目の手術。お昼ごはんは、愛妻弁当だが午後3時にようやく食べることができた。ゆっくりする間もなく3件目の手術に取り組む。

若手の医師を指導しながらの手術。後進への指導も重要な仕事。

午後8時半、この日手術をした患者の家族に説明する。一番喜びを感じる時だ。

その後、自らが行った手術を正確に記録する。

このイラストが次に役に立つのだ。帰宅は午前1時を回る。もう帰りには翌日の手術のことを考える。

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スタジオに1週間のスケジュールがフリップで提示される。

一週間は月・水・木・金が手術。火曜日が外来。土日も休みではなく、手術で全国を飛び回る。睡眠時間は1日平均で4時間。そんな生活を30年以上続けている。
上山「出張手術は安いところで3万円。大学病院などは出せないところもある。」

上山「くれる分しかいただかない。オカネのことを言うのは日本男児たるもの恥ずかしい。」

上山「勤務医は給料は安いと思う。低賃金でがむしゃらに働く僕のようなものは害になっているという人もいる。でも外科医の宿命というか業が動かしている。でも救急救命医なんかはもっと働いている。産科や小児科なんかもギリギリまでやっている。立派な人が多いですよ。」

外科医になりたいという医師が減少しているが、大きな理由の一つが、訴訟の問題。一生懸命、患者を助けようと努力しても、それが叶わぬ場合、誤解を生み、訴えられるケースがある。医師として、病院として、例えそれが“白”であったとしても、大きな痛手となる。
上山「若い医師は訴訟などが怖いという。医療過誤は民事ですよ。刑事じゃないです。」

ここで無過失補償制度が説明される。患者側が十分な補償を受けられる制度だ。

上山「不幸になった結果として補償してもらう保険と考えれば、ただ費用が出ない。」

そこで医療費削減の切り札はあるのか?

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上山「手術なんかも包括でやろうという動きがある。」

包括支払制度とは、ひとつの医療費がまとめていくらという制限が設けられること。今まで材料費は制限がなかったが、そこに歯止めがかかるのだ。材料費を削減することが求められるため上山医師もその方法を模索。

プレート2万2千円を、ネジ4千円を12本使うが、そこをはめ込み式にして、材料費を減らそうというアイディアも実行に移した。

上山「混合診療もある。」

自己負担と保険負担を混合で行うというもの。

上山「医療にそれを持ち込まれると日本の医療は金持ちのものだけになってしまう。混合診療になったら憲法違反になると思う。病気は金持ち・貧乏に関係なくくる。聖域無き構造改革という小泉路線が、医療崩壊を招いてきた。保険医療をどうやって考えていくかが課題だ。」

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編集後記・・・人の命と尊厳を守る。

上山「プライドの国民だった日本人。そこを揺さぶるしかない」