朝八時水道橋の日向さん宅。夫婦で仕事に出かける。毎朝出かける前にスイッチを入れるのが掃除機ルンバ。人口知能で勝手に掃除をしてくれる。

夕方午後5時過ぎ、保育園から子どもを引き取り帰宅する。掃除は終っている。値段は少々高いが、扱いが簡単で10万台以上売れた。

家電業界では、「ユニバーサルデザイン」というコンセプトが注目されている。一言で言えば「やさしい」設計、つまり高齢者から女性、子供、メカ音痴まで、だれにでも使える魅力的な商品づくりだ。三菱電機では“トリセツ不要”の、簡単でやさしい家電製品の開発が始まった。また高齢者のニーズを掘り下げ密かなヒットとなっている「魔法の靴」など、よりユーザーに寄り添った「やさしい」商品開発の現場を見ていく。

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江口君、最近の家電を紹介。炊飯器にテレビ、その取扱説明書は280ページもある。10年前は36ページだった。面倒だという消費者の声にこたえる商品開発が求められている。

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三菱電機のお客様相談センター。高機能化に伴って使い方がわからないという客が増えているという。

三菱電機が打ち出した戦略が「らく楽アシスト」というコンセプト。ずばり、使いやすさの革命を目指すというもの。その背景にあるのが、2015年には4人に1人が65歳以上となる超高齢化社会だ。三菱電機には毎日のように、「リモコンの使い方がわからない」、「表示の文字が見づらい」など、家電の不便さを訴える相談が寄せられている。これまで各社が競うように進めた多機能性が裏目になっているのだ。

この日センターに高田さんが訪問してきた。日々苦情を受ける相談員からの意見すなわちお客様の意見を取り入れる役目が高田さんの役目だ。家電メーカー第5位の三菱は「使いやすさ革命」と銘打って’使いやすい商品’を目指すコンセプトで開発した。

クーラーのリモコンはワンタッチで好みの状況にできる。

冷蔵庫は奥のものが取り易くした。こういった工夫がヒットした。

炊飯器は激戦商品だが、三菱は蒸気を出さない炊飯器を発売。これが大ヒットして炊飯器売り上げナンバー1になった。

次なる改善策は「音声」で知らせるものをと要望。しかし開発製造側は、コストがかかることで難色を示す。

とはいえ、開発チームは技術者魂に火がつき、長田さんを中心に’人に優しい炊飯器’の開発が始まった。

試作品が完成したときき、早速高田さんがやってきた。

50種類以上の音声案内が出て、次のステップなどを指示する。果たして利用者にとって便利なのか?

完成したばかりの試作品を、機械が苦手な高齢者のモニタリングを行う。実際に音声で設定していく。「わかり易いですね。」という人もいたが、一人はボタンが固いという。音声案内は好評だが、ボタンに改善が必要とわかり、早速手直しする。0.05ミリの差で押しやすくなる。

長田さん「他のメーカーに勝つには徹底したモノづくり」

炊飯器が量販体制に入った。10万8千円での実勢価格で売り出された。

高田さんは売り場に出かけて見守る。顧客は「説明書を見ないでできるのでいいと思う。」と好評価。滑り出しは好評だ。全国販売で1位に踊り出た。

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アメリカ・ボストン。ここに「人に優しい家電」を生み出す男がいる。

アイロボット社のコリンさんは、MITの学生時代から人に役立つモノを作ろうとしてきた。

去年、10万台以上売れた掃除機がある。全自動で掃除をしてくれる掃除ロボット「ルンバ」だ。価格は、安い物でも5万円弱。それが20代から30代の共働き世帯が、こぞって購入した。その理由は、スイッチひとつで勝手に掃除してくれる気安さと、自分で掃除をしなくてもいいという時間の節約だった。これを開発したのが、アメリカ・マサチューセッツに本社を置く、アイロボット社だ。実は、アイロボット社の、売り上げの7割を占めるのが軍事利用。無人偵察機や、地雷除去機がアフガニスタンやイラクで活躍している。その技術を応用して作ったのが、「ルンバ」だったのだ。

日本での代理店が、東京・新宿に本社を置く、「セールス・オンデマンド」社。木幡社長は、今後、高齢者に向けて積極的に「ルンバ」を売り込んでいきたいという。現在の販売拠点は国内800。それを今年中に1500まで増やす。また、技術者を新たに採用し、アイボット社と技術情報を交換しながら、日本市場向けの新製品開発を目指す。

熊本県阿蘇市、セールスオンデマンド社の朝日さんが、コテージにやってきた。

無料でルンバを貸し出すという。ホテルや旅館での業務用にと使ってもらって、そこからお客様の声を拾って改良してもらおうというもの。

これまでも旧型は前輪が固定されていたがキズが付くことがあり可動式にした。ユーザーが取り替える部品も色別にしたのも日本からの要望だった。

高齢者の施設でもデモを行う。ところが人に優しいのがあだになった。

うかぬ顔になった朝日さん「お年寄りが足を引っ掛けてしまう。勝手に動き回るのがルンバの特性なので、難しい。」

現場の職員も「正直、少し難しいかと思います。」

それから3日後、ルンバが動いていた。お年寄り達が帰った後に職員が半信半疑で動かしてみたが、見事にゴミを取っていた。

ここでも貴重な意見がもらえた。ゴミ収納パックがお年寄りには取りにくいというもの。ボタンを押しやすくして欲しいという要望を出す。

こうして「ルンバ」を一緒に作り上げていく感じだという。本社のコリンさん「日本からの要望は的確で正確だ」という。進化が楽しみ。

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江口君・・・携帯を替えたよ。猫型ロボットを買ったよ。といっても娘はつれない。そしてお年寄りにやさしい靴をプレゼントされた。

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つま先が少しあがった靴「あゆみ」が大人気だ。

香川県さぬき市。田んぼの真ん中にある小さな工場。しかし、この会社から生み出される「靴」が、全国の高齢者から熱狂的な支持を集めている。徳武産業。

従業員50人足らずの、この会社では、高齢者専用シューズ「あゆみ」を発売。15年前に「つまづかない靴」を販売しこれがヒット。これまで累計400万足以上を売り上げている。

社長の十河さん、その秘密を教えてくれる。

何故、ここまで人気があるのか。高齢者は、加齢によって、足の形が変形したり、歩き方が異なったりして人それぞれ足にマッチした靴が求められている。

人は年を取ると、左右の足が変わってくる。効き足でないほうがむくんだりしてくるのだ。

徳武産業では、標準的な靴が5000円程度、それに1500円ほどプラスする事で、ピッタリの靴を作ってくれる。

徳武ならなんとかしてくれる!という消費者の要望に答えたいと社長。

社長は「現場を見に行って、見て来い」とリハビリセンターに若手社員を派遣。

現場では山ほど意見があるという。

東京昭島市の高齢者センターに社長が足を運んだ。102歳の高齢者桜井さんから靴が合わなくなり締め付けられるという。履きなれた靴なのでなかなか手離したがらない。

そこで、足型を自動計測する「あゆみナビ」という画期的な機械で計測する。より足にフィットした靴作りが可能になった。

桜井さんの足にフィットする靴をあゆみナビは選んできた。早速その靴を試すと桜井さんはサッサと歩く。「少し長生きできるかな。」

高齢者だけでなく脳卒中などで体が不自由になった人たちに向けて、リハビリ用の靴の開発が始まった。