世界初の心臓再生に挑む
心臓病の男性、どうすれば救えるのか。医師達がこれまでにない手法を選んだ。それが心臓再生。心臓幹細胞をもとに再生を図るもの。
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2010年3月、京都の大学病院に入院していた山口茂樹さん61歳を訪ねる。心筋梗塞で倒れて入院していた。通常のバイパス手術が出来ない、冠動脈が詰まり壊死した範囲が心臓の30%を超えていた。
山口さんは心臓への負担を減らすために歩くことも禁止されていた。
京都府立大学の医師は心筋から細胞を取り出し、壊死した筋肉に注入し、心臓を再生しようというもの。世界初の試みであり、’未来のことはどうなるかわからない’と医師から伝えられる。
山口さんは夫婦で小さな店を営んでおり、60歳過ぎてこれから夫婦二人で暮らしていこうとした矢先、2年前には孫も生まれた。その成長を楽しみに、孫との旅行がしたいという夢をはたすため、この再生手術を受けようと決意する。
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鎌田キャスターは研究チームを訪ねて、顕微鏡で心筋細胞を見る。
私達の体は受精卵から、いろんな形の細胞になっていく。ES細胞→体性肝細胞→IPS細胞となっていくが、体性肝細胞を利用して、再生医療を行おうというもの。
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6月1日、幹細胞を注入する日が来た。奥さんが声をかける。孫の写真が見守る。
手術には総勢20人のスタッフがついた。1ヶ月前に採取され、10万倍になった幹細胞を3000万個注入する。
松原弘明教授「これからです。」と手術が終わっての発言。手術後24時間心臓の状態を監視するマシンが取り付けられて、様子を見る。
手術から2週間半たった後に取材班が面会に行くと、山口さんは起き上がって、食事も助けを借りずに一人でとっていた。懸念された不整脈はまだ起きていない。もう自分の足で立って歩くことも出来るようになり、心臓の動きを回復させるリハビリも始まった。
「ぜいぜいが無くなってきた。孫の手を引きたいなあ。」
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世界各地で臓器再生を目指した研究が進んでおり、40カ国以上で研究者がいる。脳はアメリカやイギリス、心臓は日本など、得意分野も国によって違う。
糖尿病の治療が進むブラジル、サンパウロ大学では、骨髄幹細胞を利用し、薬と幹細胞を組み合わせて治療するのが特徴。すい臓の再生に幹細胞の治療が行われ、効果をあげている。ジュリオ・ボルタレオ教授「ここまですい臓が再生し、インシュリンを作り出すようになるとは考えていなかった。」と効果に驚く。
取材班はアステラス製薬を訪問。広報部「再生医療が実現すると、移植しか方法が無い治療にも薬が使える。」
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山口さんは半年たって、驚くべき回復を見せていた。週2回リハビリに通い、スポーツジムのような自転車こぎが30分以上も続けられるようになった。
この日、京都府立大学でその回復状況を検査する。結果は予想をはるかに上回るものだった。治療前に壊死下部分が劇的に減っていて、心筋が復活している。大学では数年後には一般的な医療にするよう目指している。
山口さんが自宅で孫と遊ぶところでオシマイ。