日本一売れているガム、日本一売れている牛乳、26年間ロングセラーのウィスキー。これをデザインした男。

職業「グラフィックデザイナー」モノの売れない時代にヒット商品を産む源泉とは?

イメージチェンジをする高級米、行き詰る現場の姿。自分を’消して’ヒットを生む姿を追う。

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ポルトガルでのデザイン会議から戻ってきた日。佐藤は絵や雑貨を大量に買ってくる。今回も文房具などの小物から、何に使うかわからない代物までたくさん買い込んでした。

佐藤のオフィスにはいたるところに雑貨や、手がけた商品が置いてある。

依頼されたものはどんなジャンルも手がける。オフィス全体では100以上のプロジェクトが動いている。

茨城の「ほしいも」のパッケージ。無添加無着色の自然な雰囲気を出すようシンプルなものだ。

こうしたデザインコンセプトからロングセラーを生んでいる。

強烈なインパクトがあるわけではないのに、何故か手にとってしまい、身近かに置いてしまう。

「自然と人の生活に入り込むようなデザインに醍醐味を感じる。」

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デザインするときの発想ポイント・・・商品の本質を掴んでいく。

ガムのパッケージはキシリトールのキラキライメージと奥歯をデザイン化したものを組み合わせた。

スパイスの瓶は、片手でも蓋が開けられるカタチで、残量がわかるように下が透き通っている。

さらに、ペンギンの手が一匹だけ上向きだったり、招き猫の手がちょこっと垂れているものがいたり。というモノガタリ感を入れ込む。

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オフィスでは30分の会議に制限。徹底した話し合いで、デザイン案を修正しながら練り上げていく。

プレゼン時点もクライアントにあえて修正点を聞いて見る。

通常クライアントから口を挟まれるのは嫌なもの。でも佐藤は「意見をお聞きしてさらにいいものに持っていこうというのが僕のやり方。」という。

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趣味はサーフィン。波乗りは波に合わせることが大事。それは仕事と同じだという。妥協とは違うのだという。

この日、神戸コロッケ本店のリニュウアルデザインを依頼された。

デザインがいまひとつインパクトが無いということで「ただのコロッケが欲しいんですよ。」と話し出す。

佐藤「デザイナーの仕事はもっとこういうことができますよ。と提案すること。言われたことをやっているだけじゃ仕事と呼ばない。」

実際に神戸コロッケを訪問して、ディスプレイなど隅から隅まで見て周り、改善点を探す。デザイナー以上の仕事をするのが佐藤の流儀だ。

佐藤「この仕事は絶対に面白いはずだという気持ちでやる。」

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近所のカフェで本を読んで過ごす佐藤さん。今やデザイン界で知らない人はいない。

子どもの頃から絵を描くのが好き。一浪して東京芸術大学に入学。

芸術でメシは食えない。広告代理店の会社に就職。しかし芸術の虫が騒ぐ。

コンテストに出しても、まったく歯牙にもかからない。その間、後輩達が次々と脚光を浴びていく。

2年の月日が流れて、佐藤はウィスキーの広告に携わることになった。若手で企画案を立てることになり、商品をイチから企画するこれまでにない仕事が舞い込んだ。

自分達が飲みたいと思うウィスキーが無いというが、その頃のウィスキーはオヤジがかっこつけて飲むものというイメージだった。

ある日、北海道のモルトからすぐに出したウィスキーを飲む機会があり、そのままこれを出せないかと考えた。ピュアな味を表現するにはどうしたらいいか?

そこから科学実験の透明な瓶に入れて中の琥珀色を見せるようにした。

それが世の中と共鳴して売れた。シンプルなデザインが好評を博した。

佐藤はこの仕事をきっかけにデザインの仕事にのめりこんでいく。

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8月下旬、新しい仕事に挑もうとしていた。

「ふっくりんこ」というコメのパッケージをリニューアルする仕事だ。北海道函館のコメだ。かわいらしい名前と、クライアントが求める高級感。

これを融合する難しい仕事だ。コメは「ゆめぴりか」や「八十九」などのヒット商品パッケージを手がけた。田久保さんがその「ふっくりんこ」に携わる。

田窪はいろんなデザイン試作を持ってプレゼンするが「デザインしすぎ」「堂々としたデザインでいく。」とプレゼンまで残り1週間となって、まだ悩んでいた。

3日後、デザインが上がってきた。しかし全てのデザインにダメを出した。

どうやって「ふっくりんこ」が出来たのか、そこからもう一度掘り下げる。

これまで「ふっくりんこ」に至るまでの品種改良の名前を背景に入れるアイデア。

さらに新しい漢字の創作などもアイデアとして出す。

佐藤「気がつくのはみんなあるけど、そこをこじ開けてカタチにしていく。」

すぐにデザインに落とし込んでいく。

プレゼンまで残り2日。堂々としているが僅かに何か足りないと考える。

楕円を一回り小さくして、文字を円の外にはみ出すようにして「頭ひとつ出ている」イメージを出すという。

「字」についても拘る。3つのパターンが最後に残り、プレゼンはこの3つでいくことにした。

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北海道農協ホクレンと広告代理店が訪問。

佐藤はまず最も自信のある作を提示、しかしどれがいいとは言わずに、3つの試作品を提示。

クライアントからも活発な意見が出る。八角形をダイヤモンドだと感じたり、「気」という文字に生産者の気持ちがあるという意見も出る。

結果的に長い時間をかけたイチオシは選ばれずに、八角形とデザインで「気」という文字をあしらったものとすることに決まった。

さらに決まったデザインに磨きをかける作業が4日間続いた。

八角形の角度にも拘る。

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プロフェッショナルとは・・・さりげなくいい仕事をする人。頑張ってるとかは当たり前。