患者の殺到に、混乱する医療現場。消防庁によれば、救急車が通報を受けてから医療機関に患者を搬送するまでに要した時間は、昨年で全国平均36.1分。過去最悪を更新してしまった。脳内出血を起こした妊婦が7病院に搬送を断られ死亡したり、60代の女性が39回も拒否されるなど、痛ましい事態が後を絶たない。もしも家族が急に倒れたら…事故にあったら…誰しも、明日は我が身に関係するかもしれない問題だ。危機に瀕する救急医療だが、再建を目指して、新たな取り組みも始まっている。
9月6日札幌丘珠空港でかつてない取り組みが行われようとしていた。「ドクタージェット」の実用化試験が行われるのである。乗務する救急医の奈良さん。早くも式典中に出動要請が来た!釧路からの電話だった。患者は生後間もない赤ちゃん。大至急札幌の病院に運ぶ必要がある。

陣頭指揮を執る札幌医大の浅井康文教授は「ドクタージェットは、僻地が多く、面積の広い北海道で、救急医療を誰もが平等に受けられる一歩になる」と、その意義を語る。

全ての人が平等に受けられる医療を目指し、たらい回しを食い止める先端医療を取材。

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江口君、千葉県の救急ヘリを取材。実際のヘリの中や、飛行範囲を聞く。

ただ天候が悪いときに行く方法や、オカネの問題などまだまだやることがあるという。

配備されているのはいまだ19道府県23機、半分にも満たないのが現状だ。背景には、フライトドクターと呼ばれる専門医師の育成の遅れや運航費用の問題がある。国と都道府県からの補助金だけでは足りず、運航会社が年間数千万円の赤字を抱えたり、ヘルメットやスーツなどの消耗品購入は病院側の負担となるなど課題は山積みだ。

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千葉北総病院にドクターヘリの出動要請があった。5時5分にあって飛び上がったのが5時8分。5時15分に患者のいる学校に到着。62歳の女性が倒れてヘリに運ばれた。ヘリの中では応急の救急処置が成されて、病院に搬送されるまで40分だった。ドクターヘリは4割救命率を向上させた。

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北海道では旭川・札幌・釧路の3箇所にドクターヘリがあるが、広いので地域的にカバーできないところもある。

羅臼町の診療所は手塚誠医師ひとりになってしまった。内科も外科も一人で診る。手が回らず、時間外に診てもらうためには隣町にいくことになる。

住民の不安解消のために往診し治療にあたるが、不安は隠せない。

そんな不安解消に登場したのが「ドクタージェット」

ジェットはヘリに比べて、揺れが少なく早いので患者の負担が少ない。また雲の上を行くので天気の影響も少なくて済む。

9月15日拠点となっている丘珠空港に函館から出動要請が来た。

奈良理医師が乗り込む。札幌で無ければ困難な手術で、電車なら4時間かかる。果たしてどれだけ短縮できるのか。

午前9時10分に出て40分には函館に到着。赤ちゃんが救急車で待っていた。肥厚性幽門狭窄症状であり緊急を要する。ストレッシャーが固定され、酸素吸入器も付けられた。7人乗りなので函館の医師も乗り込んでいる。

食べ物が摂取できない病気で、札幌の子ども総合病院に到着し、すぐに検査を開始。手術に耐えられる体力かどうかを確認し、脱水症状を待って手術することになった。そして手術は無事成功。

しかし運行費用は月間2000万円。その試験飛行の成果が期待されている。

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岐阜県の町:午後4時半、交通事故の報で3人編成の救急隊が出動。1時間以内に対応できるかが患者の命を左右する。

すぐに駆けつけて、受け入れ病院の余地を確認。なかなか救急要請受け入れをしてくれる病院が見つからない。電話をかけるごとに5分が経過する。

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江口君・・・救急病院に問い合わせた件数や、断られた回数、通報から搬送までの時間など、どれも悪化しておる。問題は救命救急医師の不足、要請件数の増加などがある。

「新技術」を取り入れて進めようとしている、岐阜大学医学部小倉教授「われわれが戦っている相手は’時間’です。」と語る。

小倉教授は救命救急医師であるが、情報端末の利用を進めている。

また木沢記念病院では、ICタグをつけて、感知センサーにより医師がどこにいるか把握する。「休憩中」「手術中」などを判断し、3種類の色分けで救急受け入れが可能かを判定する。

このシステムは沖電気工業の技術者が開発した。この日は3段階の色分けについて小倉教授から注文が出された。

技術者も医師の現場を視察。さらに詳細な判断要素がないかを観察した。その中で「救急室」にいる場合は「黄色」だが、そこに何人かいれば受け入れ可能ではないかと再度考える。

小倉真治教授のところに救命医を目指す若手医師もいた。交通事故の患者が運び込まれて、彼が心臓マッサージをした、どうにか鼓動が戻り。一安心。

救命医師を目指したのはテレビで見た救命医の姿。中学生から目指してきた。「人の命を救う原点だから。」

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沖電気の松平正樹さんたちはより具体的な技術を開発していた。

蕨市の沖電気では、救急措置室のカメラを活用できないかを考えた。簡単な動作で意思の伝達ができるのが良い。と改善に余念が無い。

また、年間700件という日本一の出動回数を誇る日本医科大学千葉北総病院では、民間企業にスポンサーとなってもらい、ヘリの機体に広告を載せるという全国初の取り組みが始まった。