おととし11月、小室哲也氏を任意同行する前田主任検事。

小室氏は著作で「小太りの主任検事に話し、その1日全て話した。」と語っている敏腕検事で、エースと言われた。学生時代から検事に憧れていた。

その前田検事が証拠改ざんの疑いで逮捕され、さらに地検の上層部に報告が上がっていたが問題視されなかった事実も発覚した。

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鎌田キャスターがフリップで特捜部について説明。

手がける事件は脱税や贈収賄などで、逮捕権も持つ。

それでは前田検事が何を行ったのか?

7月13日、前田恒彦上席検事が作業していた。その日、前田検事はフロッピーディスクの日付を書き換えた疑いがもたれている。

事件の発端と成ったのは、嘘の証明書。凛の会の倉沢元会長が村木局長に依頼し、局長が上村係長に指示して発行したという筋書きだ。

データが最後に更新されたのは2004年6月1日。

倉沢元会長が依頼したのが2004年6月8日。このずれがありながら特捜部は村木局長を逮捕起訴した。

7月13日に前田検事は日付を6月1日から6月8日に書き換えた。そしてそれを上村係長に送り返した。

上村係長の弁護士は「何なんだ?」と驚いたという。しかし上村係長の罪は村木局長から指示されたとしたほうが罪は軽くなる。弁護士もその判断に悩んだ。

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検事からも前田主任検事を上に報告し、報告は検事正まであがったが、誤って記載したものなので問題ないとされた。そしてそのまま突っ走った。

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スタジオには元東京地検特捜部長の熊崎さん、ジャーナリストの江川さん、弁護士の佐藤さんがゲストとして登場。

熊崎「ありえない、あってはならないこと。証拠品の対応は極めてお粗末。」

江川「裁判を傍聴し続けてきた者としては、さほど’ありえない’ことではない。たまたまバレたのではないか。」

佐藤「ありえないことではなくて、検察全体としての体質に問題があるのではないか。」

江川「証拠を作ってしまうということがありうるなら、密室性、メモの廃棄など、特捜自体に問題があるのではないか。」

熊崎「私の体験の中からお話するなら、検察がストーリーありきの捜査だったとしたら、それは由々しき問題。構図を描いたり、ストーリーを作ったりは普段は出来ない。調べていくうちに状況は変わり、徹底した調査によって、証拠を積み上げる。」

江川「お話ですが、これは決して例外ではなくて、ストーリーありきの捜査はあったと聞く。」

熊崎「そういうことがあるなら変えていく必要があるが、昔なら組織捜査であっても調べを中断するといったことがあったが、今はそういったことができない体質なのかを調査する必要がある。」

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小室哲也氏の取調べを担当したのは前田恒彦氏。小室氏は当初は「騙すつもりは無かった」という主張だったが、前田検事の柔らかな話しぶりや、この人は何でも知っている

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特捜部は昭和22年にできた。一躍脚光を浴びたのは田中角栄元総理大臣の逮捕だった。

政治犯罪など見えない犯罪をどうやって暴きだすか? 特捜部には証拠品がダンボールで山積みされ、その証拠から「筋読み」がされて、そこから供述を引き出す’割り屋’が容疑者にあたる。

堀田力 元東京特捜検事は「言いたくない相手から供述を引き出す人じゃないと出来ない。」

特捜部は政治家や官僚の逮捕によって、国民の支持を受けていった。

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この時代に、広島大学の法学部学生だった前田検事は、特捜部の捜査に興味を示し、勉強し、司法試験に合格し、特捜部に入り’割り屋’としての能力を発揮。

その後、国会議員の捜査の主任に抜擢され大阪地検のエースとなる。

しかし特捜部は、次第に「国策捜査」だと指摘されるまで、その存在を煙たがられる。

元東京地検検事の若狭勝さんも「そういうことがプレッシャーになっていったのでは。」と語る。

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前田検事は東京地検に異動になり、汚職事件では裁判官が「証拠は信用できない。」と判決文の中で述べられたこともあるが、特捜の中では’割り屋’のエース、地検特捜のエースとしてますます地歩を固めていく。

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ジャーナリストの立花隆さんが語る。「ロッキード事件が特捜捜査の愁眉だったが、今回の事件は唖然とした。有力政治家や有力官僚とかそういった人を訴追するときは検察委員会で審議して決めていた。おそらく近い将来、ある程度の数の人が責任を問われるだろう。」「新しい巨悪が生まれているので特捜部は必要だが、権力を持っている特捜をチェックする機能が必要だ。」

佐藤「特別捜査というのはストーリーを描いて、逮捕・起訴が宿命。今回は村木さんまでの逮捕が描かれていた。そのストーリーに矛盾しない供述を導き、ストーリーに合わせるようになっていた。」

江川「前は良かったと元検事さんはみんなおっしゃる。今回は杜撰だったといわれるが、録画を撮る、保釈期間の問題もある。もともとに戻るが特捜部は本当に今必要なのかどうかまで考える必要があるのではないか。」

熊崎「問題がある部分は抉り出す必要があるが、今回の件は指示された日付がどうだといったことの掘り下げ捜査が行われていない、またそれを上層部がどう対処していたのか。逮捕イコール起訴というけど、逮捕までの捜査さらには逮捕してからの捜査、そこがキチンとできていないなら問題。」

江川「正義の味方。エリート中のエリートというように煽ったメディアのあり方にも問題がある。」

佐藤「希望が無いことばかりではなく、今回は検事がフロッピーディスクのことも報告しているし、弁護士も頑張っていたことが明るいこと。」

熊崎「批判をどのように受け止めるかということと、特捜は巨悪を追求することに全力を注いでいる。組織的なチェックも必要だが、人間性もあるので、検察全体が引き上げていかなければならない。」