以前に「ごめん」でこのブログに書評をアップしたけど、今回はさらにうまくなっていて「珠玉の7編」といった感じだ。どの物語もほろっとさせられる部分があって、旅行記としても楽しめるし、「女性」というイキモノの奥深さも勉強させられる。ほんとうにうまい作家さんだと思う。7編それぞれに味わい深いが、僕は「寄り道」と「長良川」に共感する部分が多かった。★★★★☆

---------------------------------

三十代半ばの文香は、著名コピーライターとして知られた存在だったが、恋愛だけは不器用。上司との不倫旅行に嫌気がさし、松山へやってきた文香は、ホテルでマッサージを頼んだ。マッサージの老婆は文香の体に触れながら、戦時中の話を始める。裕福な貴族院議員の家に生まれた彼女は、目が不自由だったため、いつも女中のヨネに支えられていた。彼女が恋をした家庭教師が出征することになり、ヨネが彼女と家庭教師を結びつけようと…(表題作より)。二十代から五十代後半まで、それぞれの世代の女性が遭遇した試練や人々のあたたかさ。娘として母として、女性が誰でもむかえる旅立ちのとき。人生の旅程を指し示す七つの物語。