神奈川県湯河原、相模湾を一望するリゾートホテルで、あるツアーが行われた。「遺言ツアー」だ。1泊2日で遺言書を書き上げるというツアーだ。

WILLプロジェクトとして「心の棚卸し」からスタート。ツアーには司法書士も同行している。また心理カンセラーもいて参加者の気持ちの整理をサポートする。

夜はフランス料理のフルコース。費用は15万8千円。

2日目は、参加者からの相談があれば司法書士が対応する「チェックシート」を渡して分配を決めてもらう。

あなたは誰に何を残したいですか?増え続ける相続トラブル。今夜はその対策。

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江口君、中央三井信託銀行の日本橋営業部にお邪魔して、重たい重たい金庫の扉をあけてもらう。さらに扉があってその先は入れなかった。その中には「遺言書」も700件くらいあるという。

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千葉県船橋市の佐藤恵子さん59歳。夫と二人暮らし。

母親の初枝さんと同居生活14年、そして母親が亡くなった。そこから思いも寄らぬ展開が始まった。訴状が舞い込んだのである。兄の二人が訴えたのだ。恵子さんが母親の財産を一方的に奪い、介護という名の下に財産を奪ったというもの。裁判は3年間続いて恵子さんが勝訴した。

こういった遺産相続を巡る裁判はここ10年で2倍になっている。

「無い人ほど争う。200万、300万で争っている。50代で離職や離婚などを想定しなかった人とかが多い。」と相談員。

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円満な相続をどう進めていくのかは、野村證券なども取り組み始めた。もちろん野村證券側も相続人との取引というメリットがあるのだ。

文具メーカーコクヨの岸田さん、営業にやってきた。本屋さんに「遺言書キット」を売り込んでいる。1年で3万部売り上げたヒット商品と成った。遺言書は公正証書なので、公証役場で指導してもらうが、5万円から10万円かかる。それがこのキットの指示通り書けばできる。

20代や30代も両親にプレゼントというケースも見受けられた。

岸田さんが提案したときは、会社内でも賛否両論だったが、必ず書くことができるということで、見開き2ページでポイントを全て網羅した。修正はしない・あげる、もらうなどは使わない・法律用語を使うなどなどをできるだけ親しみやすい形を考えて作ったという。

実際に購入した土谷さん親子。父が亡くなってその相続を巡る兄弟での聞いたことの食い違いがあった経験から、今回は母親が遺言書を書くことにした。

そして土谷さんは遺言書をオープンにしていた。孫にはネックレスなど具体的に書き、実際に伝えている。

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京都にある一澤カバン店。通りを挟んで3店も似たような名前の店がある。一澤帆布というカバン店は老舗だが、今何故か手に入らないという。一澤という名前がついたカバン店が3つある理由は相続にあったという。

創業1905年の一澤帆布、職人が手作りし、丈夫で若い女性に人気が出た。その店は休業中。営業しているのは一澤信三郎という店。

父の信夫さんが死去して、長男の信太郎さんと三男の信三郎さんが争い、裁判では三男が勝訴した結果、このような現状になっている。10年に及ぶ人気ブランドを巡る裁判だったが、今度は四男の喜久夫さんが、「喜一澤」を立ち上げた。四男がデザインなどを担当していたので真の後継者だとしている。

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三井住友銀行では、年間1500件ほどの相続相談がよせられている。中小企業の事業承継問題は、銀行にとっても大事なことだという。

品川で行われた育児イベント会場。ここで先頭になってPRする歯ブラシの会社「ファイン」の社長清水さん。様々な歯ブラシを世に送り出している。亡き夫から会社を引き継ぎ10数年会社を守ってきたが、3ヶ月ほど前に体調を崩し、3姉妹の誰に継がせるかで悩んだ。なんと三女の直子さんに引継ぎするという。一番気楽に奔放に育ったが、最近の母の体調不良から一気に社業に力を入れるようになった。

父の益男さんは、亡くなる前、直子さんに文書を書いていたが、そこには直子が後継者になると書かれてあった。直子さんはそれを励みにしながら生きてきて16年目にそれが現実になる時がきた。

自社工場に向かい、そこで従業員に社長交代を告げる。

全員に集まってもらって、8月末で辞任して、直子さんが後継社長となることを表明した。社員は動揺も見せるが頑張ると語る。東京に戻って直子さんのプレゼン。

この日は茅ヶ崎徳しゅう会病院に行き、新しい介護用歯ブラシのPRと試作をしてもらう。7月3日父の墓前に報告にきた直子さん。

会社も個人も本当に絆が試される。

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残された人への思いやりかも知れないと江口君。