おばあちゃんイコールキムチで大好きなおばあちゃんが嫌いになったと冒頭から生い立ちの告白。

孫は佐賀県鳥栖市に1957年在日コリアン三世として生まれた。

貧しい暮らしであったが、父の三憲が事業に成功して、暮らし向きは楽になった。高校1年のときに、アメリカに1年研修にいき、そこで差別もない実力の世界を知る。孫はアメリカ留学を決意。家族は猛反対した。父が倒れてしまったのである。孫はここで腹をくくった。

「アメリカで事業の種を仕入れて、日本に戻って事業を興して、家族の経済的危機を脱しよう。もうひとつは在日コリアンでも頑張れば出来るということ、同じ人間だということを示したかった。」

「同じ人間だから、同じように努力すれば出来るということを、悩んでいる在日コリアンの人にも知って欲しかった。」

今夜は経営者孫正義社長(以下は敬称略)の核心に迫る。

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4月28日、汐留に緊張が走った。社長ミーティングでこの夏発売のケイタイをチェック。社長のokが出ないと発売されない。中高年向けの簡単ケイタイのデザイン処理がお気に召さない。「使いやすそうだけどセンスがいい」ものが欲しいと。

高機能モデルについても、いちいち確認画面が出るのが煩わしいとチェック。「不要なものはいらない。取扱説明書なしで扱えるのがいい。」

孫の指摘はユーザー目線。指摘はさすがに使いやすいなあと思うことが多いと開発担当者。

そして発表会の会場。孫自身が説明する。2時間にわたって自ら使って説明する。上戸彩も登場して、このときは即席「カメラ小僧」にもなる。

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孫「取説は2%くらいしか読んでいない。分厚い取説ユーザ目線ではない。」

孫「音声通信に興味があるのではなく、本当の情報革命を起こすことに興味がある。そのためのインフラなどがワクワクするところ。」

龍さん「企業のトップが消費者目線を持つことで気をつけていることは?」

孫「常に心を開いていることが大事かな。ツィッターでは叱咤激励をすぐにいただく。」

ツィッターはいまや日本だけで750万人がつぶやいている。

個人では電車情報を毎日通勤時にチェックする人もいる。

中小企業では、新商品の小麦栽培「桑名もち小麦」について’知っていますか?’とツィッターに流してから、全国から引き合いがくるようになった。

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ソフトバンク本社、社員食堂は超満員。カメラを構える人もいた。社員食堂を一般開放した日だった。これもツィッターから実現したもの。「青野君やろう!」と名指しされたのは室長。ツィッターでは孫社長の「やりましょう!」を社員が常にチェックしている。

エリア電波改善の中間経過報告もツィッターの質問から出たもの。電波塔の設営を急ピッチで進めているソフトバンクは、その結果を10月から報告することになった。

孫「経営に対する一番の指南役だと、そう思います。」

龍さん「NTTと比べて繋がりにくいと思うが」

孫「われわれは電波の通りの良い周波数を国からもらえていない。ドコモとauには800mhzの通りの良い波をもらっている。しかしボーダフォン時代から、そうだったので仕方ない。われわれはそれを乗り越えていかないといけない。」

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ここからツィッターの質問に孫社長が答える形式

Q「SIMロックフリーの流れをどう思うか?」

A「欧米でもかかった端末とそうでない端末がある。ロックをかけるかわりに販売奨励金を出して高い製造原価のものを、安く値引きしている。その部分を2~3年固定で同じ社のものを使用することはやっている。消費者にとってはロックをはずすことのメリットもあるが価格が高くなることのデメリットもある。」

Q「弱点はどこですか?」

A「全て弱点です。ひとつクリアすると又次に崖っぷちが出来ている。新規事業には勝算が5分5分ならまだ参入しない、7割成功、3割失敗の確率だったら乗り出す。日本は9割成功にならないと乗り出さないことが多いがそれでは遅すぎる。」

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5月28日朝、いまから出陣する感じ!と孫社長。クルマの窓の外には大勢の行列。およそ250人が待ちわびていたのは「iPad」だ。アップルの新PCで若者ばかりでなく中高年も並んだ。

龍さんも小説をiPadで発表。最新長編小説「歌うクジラ」だ。その先進的な見え方に感嘆。

龍さん「自分がiPadで何をしようと思う。」

孫「出版社はもっとも刺激を受けるだろう。企画能力に最大の付加価値があって、道具にはそういうものではないんだと自分の拠って立つ価値を見出せればいい。そういう発見と切り替えがあるほうが伸びる。」

7月6日、ソフトバンク創立30周年を迎えた。

孫「30年間生き延びるのはたったの、0.02%しかない。これから300年間生きて、かつ成長し続ける会社を作りたい。」

孫「創業者としての責任で、ソフトバンクを始めて30年、あと20年くらいは現役でやろうと思うけど、その後も引き続いて伸ばしていきたい。情報革命は300年間ぐらいは加速していくと思う。産業革命は300年前に始まった。今も産業革命は続いている。情報革命もこれから続くと思う。」

龍さん「ビジョンとは見えるものですか?」

孫「ビジョンの前に理念がある。’情報革命で人々を幸せにしたい’という理念があって、そこから100年後にどうなっているかを見据えるのがビジョン。100年後の社会をまるで見てきたかのように語ることが出来るのがビジョンで、その下に戦略があり、又その下に戦術があり、又その下に計画がある。計画ばかりが目に付くがそれは方法論で、ビジョンはそうそうぐらつくものではないので、騒ぐものでもない。大枠の戦略まで共有していれば、それから下は独立採算でやればいい。」

龍さん「手取り、足取りは信頼していないから?」

孫「人間が本来持っている存在本能を信じればいい。」

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編集後記・・・どんな質問にも丁寧に答えた。率直な人だ。プレゼンの天才と聞いていたが信念の人だった。小柄な巨人は、火のような意思を持った人だった。