今夜は後編。隕石落下後、恐竜絶滅、鳥の祖先との戦いまでが前編。後編は「運命の逆転劇」

人間は哺乳類の有胎盤類。6550万年前の隕石落下から、恐竜後の新世界を生き抜いてきた。

4700万年前の欧州は哺乳類の楽園だった。プロパテオテリウムなど馬の先祖がいたが、ガストロニスという鳥の祖先が強い足で蹴散らしていた。

レウロポレリウムという哺乳類の化石に足に亀裂が2本入っているのが見つかった。なにものかに噛まれたものと思われる。豪州の国立公園、ここにいる「イリエワニ」は大きいものは5mを越す。するどい牙を持ち、驚くべきジャンプ力で水面上に姿を現す。4700万年前に襲ったのもワニだった。ワニの祖先、イプロギロドンが哺乳類を狙っていた。

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爬虫類のワニが頂点にたっていて、哺乳類は食べられる側だったのだ。

水辺の王者ワニのルーツは2億2000万年前、陸上に立つ大きな動物だった。パンゲアという超大陸が分割し、陸地に水辺環境が多くなり、それに適応したのがワニだった。強大な牙を持つ「ゲイノスクス」は全長15mの大きさで恐竜時代を生き抜いた。

7300万年前北アメリカは恐竜全盛時代。王者ティラノザウルスに追われた恐竜を一気に水の中に引きずり込む。恐竜絶滅時も水の中の変化は地上ほどではなく生き延びたと思われる。

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そして哺乳類の逆転劇が起こる。

中国科学院の王元青博士。逆転の鍵は哺乳類が持っていたある特徴だという。キモレステスというねずみ、とりたてて変わったところがない。「特殊化」をしていない原始的な体だ。

クリストファー・ベアード博士はワニの特殊化について話す。陸上で暮らしていたワニの祖先はもはや再び陸上では暮らせなかった。水中で泳ぐための尻尾は陸上では重たいだけだった。

6600万年前、哺乳類は夜行性で夜の世界に暮らしていた。

食べ物に乏しく大きなカラダを獲得することはできなかった。

しかしこれが’いろんなものに変化できる’可能性を持つことでもあった。

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アジオコリフォドンは全長2m程度ある。ベマランダは足が長く羊を連想させる。さらにコウモリのように空を飛ぶものも現れた。

鋭い爪や、鋭い牙を持つもつ肉食哺乳類も現れた。

ガシトロニスには鳥ゆえの弱点があった。前足が翼になり、競争力を失って肉食哺乳類の台頭で絶滅していった。3500万年前、ついに哺乳類が天下を取った。

5mに達するエンボロポリウム。それを狙う肉食哺乳類。力と力の戦いが繰り広げられた。

東京国立科学博物館にあるインドリコテリウム。アフリカ象の3倍ある最大の哺乳類だ。植物を1日100kgも食べていた。

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表舞台に立った哺乳類は世界中に多様な種を生んだ。今度は哺乳類同士の激しい戦いが始まった。

アメリカロスアンゼルスで見つかった。5mほど掘り下げられた場所。そこは黒いタールが湧き出ている場所。ここにスミロドンというライオンくらいの大きさの肉食哺乳類の骨がある。北米最強の肉食哺乳類といわれるが、ライバルはティラコスミルス、こちらは南米に君臨する王者だった。

ティラコスミルスは鋭い牙を持っていたが、有胎盤類ではなく、カンガルーのような有袋類だった。現在豪州を中心に300種ほどいる有袋類。

胎盤は未熟でお腹の中に赤ちゃんを長くとどめることができず、袋の中で育てる。有胎盤類は襲われる側だった。プロマクロウケニアは早い足を持つ有胎盤類だが、不意を突かれると逃げ切れなかった。

互いに有胎盤類と有袋類は祖先が同じ頃に発生し、動く大陸に乗っかり、有袋類は豪州や南アメリカ大陸に、有胎盤類は北米や欧州にと広がり同じように進化していったと考えられる。

エゾモモンガとモモンガなども同じように進化していった。

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南米と北米が陸続きになった時代、スミロドンは南に渡ったことがわかっている。ティラコスミルスは絶滅した。両者を分けたものは何か?それは脳の違いにあった。スミロドンのほうが1.5倍ほど脳が大きかった。脳が大型化緻密化していったのがスミロドンだった。全般的に有胎盤類のほうが脳が大きい。

ワラビーは小型有袋類、赤ちゃんは袋の中で母乳を飲む。このことが脳の大きさに影響するという。有袋類の妊娠期間が短いのが脳の大きさに影響を与えるというのだ。妊娠1ヶ月で1gほどで生まれるカンガルー。早い段階から乳首をくわえるため、脳の大きさが制限されてしまう。一方有胎盤類は母親のお腹の中でじっくり最大限に脳を大きくできる。

胎盤獲得が脳を大きくすることに繋がっていたことは、かけがえの無い幸運な途になった。

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さらにもうひとつ脳を大きくする要因が大陸の大きさ。

南米や豪州は島大陸だったが、北半球の大陸はなんどもくっついたり離れたりした。ローレンス・ウィットマー博士(オハイオ大学)は大きな大陸でたくさんの出会い・摩擦があり、競争を強いられたことも脳を大きくしたと語る。

試練の連続が脳を大きくしたという。羅哲士博士は「恐竜絶滅、大陸移動などがあるおかげで私たちの今がある。」と語る。

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わたしたち人間も過酷な競争を強いられてきた。アフィリカの一角でチンパンジーと同じような暮らしをしていたが、砂漠化で森林が消えてしまい、2本の足によって草原に立つことを選択した。そこにはスミロドンがいて襲われたりと絶えず「食べられる側」にあった。社会性を発達させて食べられることを免れる努力をしていった。

するどい牙も、速く走る足も持たない人間の祖先は脳を大きくすることによって生き延びてきた。

長い長い時間の果てにわたしたちに届けられた命。

自分勝手にはできない過去からの贈り物なのだ。

(おしまい)

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ここからはモデルのKIKIさんがナビゲーター。

アンモナイトの化石が銀座線三越前駅の大理石に見られる。

大理石は太古の昔を伝える。

東京六本木、恐竜の世界展が開かれている。フレングエリサウルスは肉食恐竜。三畳紀に生きていた恐竜が数多く展示され、映像と音で太古の世界を垣間見ることができる。

アルゼンチンの地層から次々と新たな発見がされている。最初は体長1mくらいだったようだ。サウロスクスというワニの仲間は7mもあり、恐竜と覇権を争っていた。

当時は針葉樹の森が広がり、ワニ類も陸上で生きていた。恐竜もワニ類も哺乳類も、そこで争いながら暮らしていた。

都会の夜空が見える窓のところにレッセムサムルスの骨格標本がある。近くにはワニの祖先の標本も。

ベッセムサウルスは体長18mにもなっていた時代、ワニ類の祖先がこれを襲うこともあった。

アメリカワイオミング州で、スーパーサウルスという体長33m、4.5tという巨大恐竜が発掘された。

1996年には中国でカラダに羽毛を纏った恐竜の化石が発見され、鳥の祖先が恐竜であることを決定的にした。

現代の都会で恐竜の骨格を見ていると、時間の感覚が日常と異なることを発見する。