山梨県韮崎市のとある一軒家。小林稔さん29歳。4人家族だ。
2008年に2階建て1軒家を手に入れた。35年ローンで購入。
彼の勤める会社は9割が家屋を購入しているという。夫妻とも同じ会社で働いている。エーワン精密だ。ボーナスは堂々全国8位にランキングする。
見学者殺到の脅威の町工場だ。オンリーワン技術も無いが儲かる仕組みを持っている。「会社は家、社員は家族」がモットー。解雇した人はいないという。
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梅原社長「山梨だったら社員が家を持てるんじゃないかと思った。それは自分が家庭というものに恵まれていなかったから。」
龍さん「今回は経営についてマネできようなことは無いかも。」
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韮崎市の町から20分ほどの山間にある会社。バスで大阪からやってきたという一行がいた。町工場の経営者や従業員だ。利益率40%を誇る会社を見に来ているのだ。
メインはコレットチャック、シャープペンの芯をはさむものと思えばいい。そのコレットチャックをカタチやサイズを変えて作っている。鋼を削って焼きを入れて磨き、洗浄して完成。
ただし造っている会社はいっぱいあるのに、何故エーワン精密は経常利益率が高いのか。40%というのは桁外れだ。
オンリーワン技術も無く、社員も特に優秀ということもないという。
秘密は「短納期」、他社は1週間のものを、当日に納品する。
なんとパソコンは使わない。注文はファックス。受注票は手書きだ。
プリントするより手で書いてしまったほうが早いという。エアシューターで伝票を運び、注文を受けてから1分ちょっとで、製造部門に発注票がいく。
もうひとつは、あらかじめ途中まで仕掛けた半完成品が多くストックしてあること。注文が入ってから、口径の調製などを行い、穴を調製して磨いて完成。
こうしてコレットチャックのシェア6割を占めているのだ。
コレットチャックを使う会社は、24時間フル稼働したほうが収益があがるため、安いより速いほうを選ぶという。
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龍さん「モザイクもかからないんですけど。」
社長「たいしたことやってないから隠したがるんですよ。」
社長「基礎的な工具は即納が基本。」
高品質・短納期・適正価格が三原則。
社長「安ければ売れるけど、利益を度外視した安さは、いずれ破綻する。」
社長「大手に勝てるには’納期’しかなかった。」
社長「恵まれない家庭に育ったから、出世の見込みは無い。機会を見て独立した。」
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社員構成は少し面白い。親子で働いている人、三兄弟とも社員の人、夫婦で働いている人がほんとうに多いのだ。
梅原は1938年裕福なネジ工場の社長の家に生まれたが、父が遊蕩にふけり会社は倒産、一家は離散した。
丁稚奉公に出され、行った先の町工場で、そこの社長の家族のようにしてくれたことに感謝。暖かい家族を実感した。子供たちと思う社員をとことん面倒を見ようとした。
給料は年功序列で上がり、会社の利益配分の2割は社員に還元される。2009年5月には22人のパート社員を全員正社員にした。社員も「親」か「おじいちゃん」だという。
社長「親や長男が、息子や弟を連れてきてくれるのはありがたいこと。」
社長「出身は白金台だった。子供を可愛がってくれる親父だったが、会社と家族については反面教師だった。その父があったからこそ、今の僕があるのかも知れない。悲惨なようでラッキーだったかも。」
社長「辞めたいというのを引き止めたケースはあるけど、解雇したことはない。」
社長「’死んじまえ’は言っても’辞めろ’はグサッとくるもの。定年まで勤めさせるのが役目。」
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東京府中市のエーワン精密本社。朝一番に出勤した社長が見るのが売り上げ表のチェック。
赤字伝票の受注間違いをチェックし、電話でその原因を指摘し注意。次はワレたために回収したことの原因をつぶすために電話して聞く。
社長「同じミスを絶対にしない。お客様からご褒美をもらっているならミスしてはいけない。」
昭和47年からずっとつけている業績の記録。これが高収益につながる理由とは何か?
社長「グラフから’売り上げ’と’材料費’などの相関がわかる。」社長が全て自分でやってきた記録だ。
龍さん「継続してやってきた理由は?」
社長「経営はある程度「勘」もあるけど、会社の健康状態を知るのはこういったデータは不可欠。」
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社長が見せたいものがあるという。山梨に新工場が出来た。総工費5億円だ。
社長「不況のときは、次の好況のときの準備をするとき。」
社長「設備も、人も’やや過剰’にしてきた。それが’短納期’を守る仕組み。」
社長「廃業予備軍が50%あるといってきたけど、それが現実化している。」
社長「松下幸之助さんの本を読んだけど’周りにも利益をあげさせないといけない’と言っている。」
社長「アジアのわれわれよりレベルの低いところに奪われてしまう。それを何とかしたい。」
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編集後記・・・中小零細を低く見て、大企業を擁護する状況に敵意を持って向かっているのは、恐竜が滅びる状況にもたとえられる。唯一無二の経営が生き残る。