様々な家電は生活を豊かにしてきた。新たな照明としてLED電球が出てきた。東芝ライテックの恒川社長は17億を捨てて新たな照明に挑戦した。
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2001年、スーパーマッケットで灯りの具合を見る男がいた。恒川だ。東芝の照明部門をずっと歩いてきた。
東芝はそもそも白熱電球を日本で最初に製造した会社だ。しかしシェアはトップを他社に譲っていた。恒川は照明部門のトップを奪取すべくLEDの開発を推進しようとした。しかし時代はまだ蛍光灯や白熱灯の全盛時代で、まだまだLEDは使うものが限られていた。その時代に恒川は’いずれはLEDの時代が来る’と啓蒙していった。
2006年社長に就任したが、会社では浮いた存在になっていった。
社員の危機意識の無さを感じながら、「今やるしかない。」と大決断を下す。
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池上彰さんがゲストコメンテーター。
今やシェア50%となったLEDの秘話に迫る。
池上「白熱電球以外にも東芝は日本初のものをたくさん創っている。’扇風機’、’掃除機’1931年、この掃除機、大学の初任給が50円の時代に110円もした。、そして’ワープロ’かな漢字変換を初めて実用化した。
解説者の関口さん。「ラップトップパソコンも日本初。最近ではHDDVDも初だったが撤退した。」
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2007年、恒川真一社長が鹿沼の工場を視察。白熱電球の製造ラインだ。しかし恒川は大きな決断をした。「白熱電球を止める。」、そして製造を中止した場合の損益をシミュレーションするよう指示する。社内には大きな衝撃が走った。小田工場長も様々な思いがあったと複雑な心境を語る。
そしてシミュレーションの結果が出た。「17億の減収」、しかし恒川はさらにヒトとカネの資源をLEDに切り替えて市場を開拓することを指示した。
半導体のLEDは白熱灯とは根本的に構造が違う。もちろん恒川にも迷いがあった。思いを断ち切るために向かったのは山口県岩国市。藤岡さんが眠る。藤岡さんは白熱灯を日本で初めて製造した人だ。その墓前に誓ったのである。「必ず照明の東芝を守る。」と。
そして恒川は東芝グループの社長の西田に会いに行く。そして白熱電球の製造中止を申し出る。西田も白熱電球に関わったこともあり、拒否されると思ったが、恒川は「白熱は止めるべきだ。」と主張し、西田は「やりなさい。」と回答。恒川は「ほっとするとともに、驚いた。」とその状況を語る。
そして洞爺湖サミット開催、東芝は白熱電球の製造中止を発表。
そして、デザインは白熱球と同じような馴染みのあるデザインを提案したが・・・
デザイナーは高橋愛子。高温になるため、冷却用のフィンが必要になり、回路基盤も必要になり、白熱電球の形には物理的に無理だった。開発部門とデザイン部門が対立しつつ試作していったが、ちょっと縦長になり、光る面積が狭くなった。大きな壁が立ちはだかったのである。
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関口「家電の世界は新興国もどんどん参加してきた。白熱灯の無い国々もLED開発に参入してきた。」
ここで仕組みの違いを池上さんが説明。
白熱球はフィラメンントが高熱を持って光る。LEDは発光ダイオードのチップが光る。触っても熱くないのだ。
電気を光に変える割合がLEDのほうが数段優れていて、したがってエコになるのだ。
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思うように進まない開発に、高橋が悩んでいると、恒川がなにやらスケッチしていた。高橋は恒川に「なぜここまでLEDに拘るのか教えてください。」と迫ると、恒川はある場所に高橋を連れていった。
その場所は幼稚園だった。以前事故があった。その事故とは蛍光灯が割れて先生の目に入り怪我をしたという。大きな怪我ではなかったが、ガラスを使わない割れなくて安全な照明ができないかとと想い、病院や学校でも安全に使える灯りを創るのが恒川の夢だったのだ。
白熱電球の工場では、製造ラインを止める日まで、心を込めた製造が続いた。
新たな開発研究部門では、研究が進んだものの、行き詰っていた。
恒川は「ランプ屋のプライドを捨てるときかも知れない。」と語る。
高橋は、発想の転換が必要と、白熱灯の美しい流線型を眺めていて、「くびれ」を思いつく。こうして後方への光も増し、世界に打って出ることにようやくこぎつけた。しかもプラスティックで割れない。
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去年3月9000円台が、今年3月3000円台にまで下がった。
日立・東芝・三菱は重電も扱っている。パナソニック・ソニー・シャープなどは弱電メーカー。会社の仕組みは違うが、LEDでは競争が激しい。
3月17日、一般白熱電球の製造ラインがその動きを止めた。