しだいに大きく揺れ、揺れ幅が2mにもなる、長周期地震動。

この揺れが高層ビルを襲うとき、未知の揺れがもたらす震災となる。

巨大地震が発生し、その揺れが伝わるとき発生する長周期地震動が超高層ビルに及ぼす影響はいまだ研究途上である。今夜は巨大地震の3回目。巨大都市を襲う未知の揺れに迫る。

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高層ビルの最上階のバーラウンジ。バーテンダーに扮した西村雅彦が、作家が女友達と語る、巨大地震の話につい引きこまれてしまう。そこに建設会社の設計士が「長周期地震動が超高層ビルを襲う。」と語りだす。

聞きかじりだといいながら。

メキシコシティー、放送中に地震に見舞われて、放送局も崩壊。ビルも倒れて犠牲者も多く出た。

原因は400km離れた場所。神戸のときと比べると、格段に長く続き、周期は2秒(神戸のときは1秒)とゆっくりした長い揺れが襲った。そして被害は14階建ての高さに集中していた。

短周期の場合は高い建物はほとんど揺れないが、長周期の場合は高いビルが揺れる。メキシコの場合、2秒の周期がちょうど14階くらいの建物で強震が起こることとなった。

経験した人たちは「建物が大きくゆがんだ。」「体が投げ出されるようだった。」と評言。シミュレーションをCGで再現。

筑波大学の磯部准教授らの研究で、強震によって揺れが複雑に増進していくさまが研究された。

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メキシコ大学のロミネッツ教授は、地盤の研究をしている。アステカ時代の神殿が地盤がゆるいせいで、ずいぶんと沈んでいる様子を紹介。もともと湖があり、あたりは湿地帯だった。スペイン人は征服後に湖を埋め立てて、巨大都市を作り上げていった。

その軟弱な地盤の上に拡大した都市であるがゆえ、揺れが何度も往復して複雑な長周期地震動となって、1万人もの犠牲者を出した。

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再び高層ビルのバーに戻る。「どの程度の高さが安全かといったことはいえない」と建築会社の人。コンニャクのように揺れるビルを想像するバーテンダー。

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東京にも長周期地震動の危機が迫る。東海沖地震のときの地震波形を眺める東京工業大の翠川教授。東京も軟弱な地盤が数キロに渡ってあるという。66年前の地震を波形で復元。すると3秒から4秒のものと10秒のものが多かった。周期10秒のものが30階以上の高層ビルに影響があるという。

東南海地震と東海地震が同時に発生すると、波形も振動も複雑になり、長周期地震動が発生したすいという。

また付加体と言われる軟弱な地盤が、この長周期の波形に反応するという。

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地震の予知についても、揺れの立場からの研究が進む。実験ではビル自体は壊れなかったものの、家具などは予測できない揺れと動きでほとんど倒れる。

対策としては「スリット壁」といわれるスリットを入れた壁である。

しかし高度成長時代は、この安全性に重きがおかれることはなくなった。

結局、阪神淡路大震災までは国が長周期地震動に対する対策をうつことは無かった。

もうひとつ「制震ダンパー」がある。中に油圧用の装置があり、免震性を強めている。問題はこのダンパーが入っていない、今までのものをどうするかだ。

制震ダンパーを設置するのがいいが、高額投資になるため、まだ設置は進んでいない。

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再びバーに戻る。リスクを知りつつビルを建てるのは無責任だという女性に、建築士は「僕らは魔法使いじゃない。」と憤る。被害を半分にするのは20兆円かかると建築士。国民一人当たり1日26円くらいかかる試算だという。

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東京湾岸地域。その地下を襲う災害が心配されている。ガスや水道などのライフラインが破壊される心配がある。それは液状化現象によって地下の側方流動が発生することによる。

地下から水が沸きあがり、液状化が発生し、水と地面が一体化していく。

早稲田大学の濱田政則教授は、護岸の弱いところで被害が発生し、とくに石油関連製品が入っているタンクがある湾岸埋め立て地域が危険だという。貯蔵物が海に流れ出ると1ヶ月も港が使えなくなると警告する。

東京都では弱い護岸の工事を始めているが、予算の関係でまだごくわずかだ。

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さんたび、バーラウンジに。マスターは自分の父親がとび職で、高層ビルの建築に従事していたという。父はどんな未来を夢見ていたんだろう?

地震は止められないが、災害は減らすことができるはず。

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メキシコシティは地震から半世紀がたち、ますます都市は拡大している。

アステカの民はある言い伝えを信じていた。’世界はある大きな揺れで滅びる’と。

大切なのは自然に畏敬の念を持って、備えること。

翠川教授は長周期震動の揺れを体験してもらう装置を作って経験してもらっている。

豊かさを追い求め都市を拡大した私達はその裏で地震に対する新たな脅威も作り出した。