太古の時代から巨大地震になすすべが無かった人類。

15年前の阪神淡路大地震は都市を襲う地震の恐ろしさを見せ付けた。

そして今、その予知に向けてクエイクハンター(地震学者)が挑む。地下4000m深くから、その予兆を得ようとする。巨大地震がいつどこで起きるのか、人類の英知を集めた戦いが始まっている。

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アラスカのミドルトン島。1964年アラスカ地震が発生。難破船があるが、当時座礁したもの。海にあったものが島を浮上させたため陸に上がったのだ。

海側プレートが陸側プレートに沈み込んでいるが、接点で摩擦が発生し浮き上がった。世界に地震観測拠点ができて40年たったが、プレートの境界で常に発生している。しかし、いつ、どこで発生するかがわからない。

日本では4枚のプレートがひしめいており、世界の10%の発生率だ。

次に発生するといわれるのが南海プレート上と言われている。

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東北大学教授の松澤さん。1999年に地震予知の論文を発表。2001年までに三陸沖で大きな地震が発生する確率は99%と発表。2001年11月にM4.8の地震が発生し論文の予測どおりになった。

松澤教授は阪神淡路の地震で予知の重要性を感じてこの世界にのめりこんだ。「地震波」の情報を集めること、それを調べ上げて、非常に良く似た波形を掴んだ。それは5年ごとに繰り返されており、それがどんな場所で起きているかを計算で引き出すことにした。

すると驚くべきことに、5年後との波形は同じ場所が発生地だと判明した。

何故同じ場所なのかを研究。この場所をアスペリティと呼んだ。この理論の正しいことが2001年と2004年の地震が奇しくも証明した。

釜石沖以外にも1300のアスペリティを発見。すくなくとも数年後に発生するだろうといったレベルまで予知できるようにしたいという。

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南海トラフの南海・東南海・東海の3地帯。東北の沖合いほど地震が発生しておらず、アスペリティを特定することが難しい。

名古屋大学の鷺谷教授は、「より広い範囲で発生すると考えられる。」と語る。

南海トラフのプレート境界は潮岬で大きく折れ曲がっており、次の地震はここから発生するのではないかといわれる。高感度地震計を地下数百メートルに設置して観測する。

去年9月、沈黙を続けていた地震計が謎の揺れを観測した。微動が数時間から数日継続した。この微動を9年前に発見した小原さん。アスペリティの周囲を回るように発生していた。小原さんはこの微動が予兆と考えている。微動の感覚が短くなったときに巨大地震が発生することを突き止めた。この微動が地震の種のようなものだと小原さん。

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太古から続く地震との戦い。

西暦132年、中国で造られた地震計は、揺れがきた方角の龍が口から玉を落とす仕組み。

南米のカラル遺跡(5000年前に栄えた)では世界最古の装置、イグサで編んだ「シクラ」で神殿の石垣を守っていた。

アメリカ西海岸のシアトル。人口300万人の大都市だ。街ができてから地震は発生していないが、ここで日本の南海トラフと同じような微動が起きている。その隣でアスペルティがエネルギーを溜めている可能性が指摘されている。

先住民族のマカ族の伝承では、巨大な鯨が大地と海を揺るがしたとある。

ブライアン・アトウォーターさん(地質学者)が地震の痕跡を発見した。およそ300年前に海の砂が運ばれた形跡があり、津波が発生したことを物語るという。

ではどのくらいの規模だったのかと言うと、それを証明したのが東京大学の佐竹教授。岩手県の旧家で見つかった文書から、1700年1月27日に、大潮でもないのに地震でもないのに津波がきたことが書かれていた。宮古だけではなく新宮などでもこの記述が見つかっている。

シアトルで発生した地震が引き起こした津波が日本の太平洋沿岸に押し寄せたことがわかる。そこから地震のエネルギーが推測される。M9レベルだという。

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トマス・ヒートン教授はスマトラ島沖で起こった特殊な揺れに注目。長周期振動であり、シアトル沖のものと非常に良く似ているという。つまりスマトラで起きたことがシアトルでも起きないとはいえないのである。

そのシミュレーションでは高層の建物がゆっくり揺れる。最大5m幅で揺れて、鉄骨20階建てのビルが崩壊。津波は最大17mで海岸の町が沈む。

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人々が築き上げてきた都市と地震。リスボンではM5.8の地震が発生し6万人が犠牲になった。当時のポルトガルでは高層建築が築かれていたが、首都が崩壊し世界の覇権争いから後退した。

日本では関東大震災。膨張を続けてきた首都東京は果たしてどうなるのか。

東京大学では昭和19年の東南海地震から予知しようということを古村博士らが行なっている。長周期振動が観測されており、巨大地震のとき特有の揺れだったという。当時は高層ビルも無くて被害は大きくなかったが、現代では相当の被害が予想されている。

日向灘にもアスペリティがあって南海と同時に動きのではないかと古村さんは考えている。今まで考えられている以上の巨大地震の可能性があるという。

紀伊半島潮岬の先の折れ曲がったプレートで発生した地震はアスペルティでの揺れを引き起こして、長周期地震動が発生し、関東では20分以上も揺れて、高層ビルが被害を受けると予測される。

津波も発生。地震発生から津波と長い時間被害にさらされる。

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次の地震を読み解くかすかなサインを見逃さない取り組み。

シアトルでは避難訓練が実施され、地震のリスクと向き合い始めている。

46億年の地球。地震予知はまだ半世紀にも満たない。

仙台では今村文彦東北大学教授が地下の微動をデータ収集している。

さて人類は地震を予知することができるのか。