19歳で社長就任。岡山の研究開発が得意な会社。世界が仰天する会社だ。トレハロースで世界を席捲した。今夜はその林原グループ社長が登場。オーディエンスは各社の研究員。

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龍さん「林原グループの場合は資料を読んでも’よくわからない’、でもその’多様性’がいいんだと思う。」

林原「やってるほうは大真面目で目的を持ってやっている。」

岡山市の駅前一等地に本社がある。お昼近くに社長出勤。社長室の机のパソコンは休眠状態。机に稟議書も無い。用が無ければ来ないときもあるという。

この日は用があった!’ビタミンP’に別の用途があることがわかったという報告。社長はテーマを決めてあげる。で、午後2時半にはご帰宅。たったの2時間半の勤務。4代目社長は型破りだ。

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1883年岡山市で創業。水あめの生産から始まった。甘味料不足で、1950年には水あめ生産で日本一になった。そのときの社長が林原一郎。健の父である。ところがガンで53歳で死去し、慶応大学の学生だった健が19歳で社長に就任。

会社は大混乱していた。親戚で遺産相続が争われ、砂糖やブドウ糖の生産によって水あめは売れなくなっていた。累積赤字も増加。4代目は水あめをやめてでんぷんの研究開発に取り組んだ。この狙いは当たり、マルトースの抽出に成功し、1973年にはプルラン、1979年にはインターフェロンなど、今では5000以上の特許を持つ会社に成長した。

5つ年下の弟の靖も会社に入り、営業畑で協力している。

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弟もスタジオに登場。社長を評して「不思議な人です。」

社長「今でも会社は大嫌い。」もともと天文学をやりたかったらしい。

社長「二国二郎博士に’研究をやれ’と言われていた。」

弟の靖さん「兄にはかなわないという部分は、’研究に全部つぎ込んだこと。’私にはできない。」

龍さん「会社の仕事内容は学生から入って難しくなかったですか?」

社長「でんぷん化学も生活がかかっているから不思議と頭に入った。」

龍さん「嫌いだけど充実感はあったのでは?」

社長「実はいろんな病気してるんですよ。」「でんぷん化学は私にとって生きていく道だった。」

社長「経営は100社あれば100違っていい。」

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イトーヨーカドー岡山店、お菓子売場に向かう。原材料に使われている’トレハロース’、様々なお菓子や冷凍食品に使われている。砂糖の仲間であるが特性を持つ。

①鮮度を保つ。・・・冷凍プリンで比較すると歴然。

②甘味は砂糖の半分・・・ケーキに使用。スウィーツに理想の質感。

③熱を逃がす。・・・繊維に加えると着心地が涼しくなる。実験では1分で2度下がった。

1832年、ライ麦から発見されたが、大量生産は不可能だと思われていた。

それがある偶然から発見された。丸田さんが広く浅く捜す研究をしていた。新たなでんぷんを作り出す’酵素’を研究していたが、それがトレハロースが出来ていた。でんぷんからは出来ないとされていたが、この発見した酵素を加えるとトレハロースになる。今までの価格から大幅に安く生産できることになり、いろんな商品に応用されてきている。

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龍さん「林原が見つけたのはどうしてですか?」

社長「他の会社は諦めてしまっていた。自然界にあることなのでいつかはわかること。」

社長「研究は長いものでは30年間もやる。一度始めたらとことんやる。」

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林原生物化学研究所にアジア・ヨーロッパの会社から視察に来ていた。トレハロースをはじめ、林原は研究がユニークだ。研究員140名。その35%が博士号を持つ。「割と自由に研究できる。やりたいことが出来る。」と社員。

・ハムスターの冬眠研究・・・人が脳梗塞で倒れたときと同じだという。

研究を続けて15年になるがいまだに儲けは無い。

・厳重なセキュリティを抜けるとチンパンジーが。類人猿の研究である。・・・数字の記憶や、ナッツを石で割る道具行動を研究している。ここも10年以上やっているが儲けはない。

・化石を発掘し、恐竜がどんな生態でいきていたかは、16年前から。もちろん儲けにはならない。

社長「研究のやり方は’最初からコレ作れ!’はやらない。副産物がたくさんできるのでそれを見逃さないようにすることが大事。」

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収録前日、龍さんは「普通の会社じゃできない。四半期ごとに利益を出せ!といわれる現代で、長期に渡る基礎研究を主流にやっていけるところはほとんどない。果たして短期ですぐに成果を出すほうが効果的なのか、長期的な研究のほうが成果がでるのか?

オーディエンスに質問してみると。長期:26人、短期:4人。

IT業界の人は、今あるものの組み合わせでユニークなものができる。

基礎研究が重要と答えた人は、食品の場合では半年から1年のタームだという。

社長「上場会社は株主さんがたくさんいるので、’売れるもの’でないと市場に出せない。ウチは非上場・同族会社なので、長期の研究が可能。副産物のメリットも大きい。基礎研究はすべて自分のものになるし。ただ100あれば100のやり方がある。」

社長「全部短期の研究にするのは間違っていると思います。ウチも2割は長期。霊長類研究も京都大学が有名だが、研究と技術は違う。文部科学省もわかっていない。霊長類の研究は世界で日本が圧倒的に進んでいる。」

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