興福寺の阿修羅、3面観音像、童の顔をしている。
モデルのはなさんが案内。「かっこいい」と絶賛。
ガラスケースに入っているため、正面の顔は良く見えるが、左右の顔が良く見えない。
3月、ついに阿修羅がガラスケースから出されることになった。
60年ぶりに寺を離れて、東京の展覧会場に運ばれる。東京国立博物館だ。
はなさんはそこでご対面。
テレビカメラも足からずっと顔まで上がっていく。細いからだ、しなやかな腕。
正面の顔は鼻筋の通ったちょっと怒ったような顔。
360度展開して、左右の顔が見られる。
向かって左は唇をかみしめている。
向かって右は目が印象的で、遠くを見つめているようだ。
3つの顔を並べてみるとその違いが良くわかる。
元東京大学教授の原島さんにその表情の違いによる気持ちの表現について話を聞く。以下は原島先生の話。
正面は「悲しそうにも、怒っているようにも見える。見る人によって捉え方が違って見える。」
左は「かみしめている下唇、怒っている眉。」
右は「目・鼻・口が内側に寄っている。悩む顔で、角度もうつむき加減。苦悩の中にあるといえる。」
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1300年前に作製された仏像、阿修羅様。スタジオで出演者がトーク。いとうせいこうさん中心。はなさんもゲスト出演。
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では一体誰がどんな思いで作られたのか。国法八部衆(興福寺)。これらも苦悩や不安を表すお顔だ。
これらを作らせたのが光明皇后。天平時代は飢饉があり、権力争いも頻繁であった。皇后が信じた経が残されている。「懺悔」の教えにすがろうとしたのではないかという。
そういった時代背景が「懺悔の仏像’阿修羅’」となったのではないか。
再び原島博さんが登場。「阿修羅像は成長しているんじゃないか」とおっしゃる。
左→右→正面、と目線が上がっており、成長していく仮定を表わしている。一人の人間の心の成長を表わしているのではないかと。
唇を噛む幼い阿修羅、少し成長し過ちに築き始めた少年、悔い改めて成長した青年となった正面の顔。
腕も正面は祈りの合掌になる。悩みの中を生きていく人間の姿のよう。
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バーチャルリアリティ阿修羅。どの角度からも見ることができる。
顔が3つなのに耳が4つしかない。頭はひとつで髪の毛は共通。
眉が筋肉のように前に出ている。阿修羅は漆を重ねて塗ってできている。
奈良大学講師の山崎さんは、その手法を今の時代に再現しようとしている。
粘土であらかたの形を作ってその表面に漆を重ねて塗っていく。この工程だけで数ヶ月かかる。そして中の粘土を抜き非常に軽い像ができあがる。さらにヒノキの粉を入れて粘土状になった漆を使って微妙な表情を整えていく。漆に混ぜたものがヒノキだったかどうかはわかっていないため山崎さんは、サクラや杉も使ったが粘りが十分では無かった。
今年の3月、奈良のクシャナ仏像の調査から、漆の中に方解石があることが顕微鏡写真でわかった。方解石を持つ植物は桑や楡だ。楡は奈良地方に昔からたくさんあり、とろろのような粘りがある。山崎さんは楡を漆に混ぜてみた。手ごたえを掴んだ山崎さんは、眉の微妙な造形、下まぶたの僅かな膨らみに着手。5ヶ月をかけた阿修羅の再現作業が終わった。
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山崎隆之講師もスタジオに。「作ろうとしてできたというより、できちゃった感じ。少年でも少女でもない、子供でも大人でもないある時期、どのようにでも見る人によって解釈できる像ではないか」と語る。
国宝阿修羅像、国立博物館でお目にかかれます。