どの都市もアメリカ発の金融危機から逃れられなかった。

ドバイの不動産は4割も下落。価格を下げても買い手がつかない。

ロンドンのオークションは売買不成立が続く。

ダッカは仕事の無い労働者が溢れている。

イスタンブールはトルコ経済の失速で、その怒りがアメリカに向けられている。

この4つの都市のその後をリポートする。

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中東ドバイ。膨れ上がったオイルマネーが前代未聞の建築物を建てていた。ブルジュドバイという世界一高い建物の建設。これが象徴するようにドバイは砂漠の小都市を一変させた。

去年はナキール社の、マルワン・アルカムジ社長を取材。9年前の起業で6兆円を超える事業を抱えていた。

ブルジュドバイの建設は進められており、世界一の称号は譲らない。しかし株式市場は7割も資金の引き上げがあった。マルワン氏は固い表情になり、現在、全ての計画の見直しを行い、人員の解雇など事業の縮小を始めている。海外からの投資に頼っているため、引き上げにあうとその資金繰りが苦しくなり、一気に開発中止や延期に追い込まれてきている。バブルが崩壊し、建設機械のオークションが活況を呈している。工事中断によって安値で世界のバイヤーに引き取られていく。

イラン人投資家のラミンさんは、ブルジュドバイのワンフロアを買い上げていた。26億円だという。転売で儲けてきたが、今年3月では不動産の資産価値を半分に減らしていた。今は70の物件を塩漬けにしている。「1週間で状況が一変した。誰も買わないし売らない。」

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イギリスのロンドン。世界から取り込んだマネーと人材。ロシア人の祭りが開かれていた。25万人にも上るロシア人が住んでいるという。リビングストン市長は外国からの投資や人材の受け入れを自由にし、大量の富裕層が移り住んできた。中でもロシア人富裕層は大量に移住。所持金1万から20年足らずで45億円の資産を持つ実業家になったコルシェフ氏。

しかし今年はロシア人祭りは開催不可能になった。市も補助を取りやめ、ロシア人の移住、事業投資もピタリと止んだ。1年前幅を利かせていたロシア人は今やひっそりとパブに集まる。

タクシン・シナワトラさんはタイから移住しサッカーチームまで保有していたが、今はビザも取り消されて行方がわからない。電話インタビューで「家族と別れて暮らしていて寂しいです。」と回答。

リストラされた金融関係者は3万人とも言われ、就職活動に余念が無い。消費も冷え込んでおり、ラジオ番組に市長選挙で敗れたリビングストン氏が出演していた。自説は変わっていない。魅力的な都市こそ発展する!と。

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トルコ・イスタンブール。その成長を引っ張ってきたのは大企業。41歳の若さで財界トップにいるヤルチュンダーさん。EU向け貿易の増加が追い風となった。EU加盟を掲げて運動していたが、一方ではイスラム教の教えに従うべきと反対する一派もいる。イスラム服の会社でファッション性を打ち出して成功をおさめた。

その1年後、穏やかな中で魚釣りをする人々。経団連会長のヤルチュンダーさんは会社も傾きかけていた。EUの落ち込みがそのまま貿易に影響し、今や加盟よりも国際銀行に助成を求めるkとが先決になっている。イスラム服も不況のあおりでファッションにまで目を向ける余裕が無くなって売れない。しかしこちらはイスラム教の利子を禁じる教えのため、イスラム金融に依存しており痛手は少ない。

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バングラデシュのダッカ。こちらは海外資金があまり入り込んでいなかったため、1年前とあまり変わらない光景があった。しかし去年まで6%の成長率を支えた貧困層。基金から借金し縫製工場を開設したイスラーンさん&ヌルジャハーンさん夫婦は大成功をおさめた。今年2月、工場はさらに拡大していた。1ヶ月の利益は倍になった。今抱えている仕事は金融危機前の注文のもの。しかし元受のラフマン・デピュさんの工場は大きく売り上げを落としていた。仕事は25%も減っているという。

イスラーンさんはラフマンさんの許を訪れた。縫製工場がかなり倒産しているという事実を聞かされる。

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ドバイの巨大建設には日本企業もかなり入り込んでいた。大成建設では中東ドバイに活路を見出そうとしていた。葉山会長自身もセールスの先頭にたっていた。

今年2月、モノレールの完成に伴う駅舎が入る高層タワーの予定があった。しかし規模が縮小されて駅舎部分だけになった。大成建設の契約は全て終わってしまい、この先は契約がまだ取れていない。

ドバイの建設中止はダッカにも影響を及ぼしていた。労働者がドバイから次々と帰ってきていた。ドバイでの解雇の様子を質問。みんな問答無用で解雇されていた。しかしダッカからの仕送りがこの国を支えていた。人材派遣組合の理事長も頭を抱える。

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シンガポールに出稼ぎにいったホセンさんは仕事も見つからずに故郷に戻っていた。妻と二人、両親の家に身を寄せている。渡航費用捻出のために家を売ったからだ。借金も残っており、自宅用の田んぼまで手放したが、それでも20万円ほどの借金が残っている。肩を落とすホセンさん。

ロンドンでもポーランド行きのバスなどに帰国者が殺到している。この3年間で70万人のポーランド人がやってきた。ロンドン五輪の建設現場などで働いていたが20万人は帰国したという。

アメリカからドミノ倒しのように広がった金融危機。

各地はこれを乗り越えるための新たな動きが始まった。

ロンドンのセルゲイ・コルシェフ氏はドバイにいた。UAEの海外相と会談しロシアとの連携を模索していた。

またナキール社にシンガポールの領事官が現れた。モノレールへの投資の打合せだ。

ナキール社は、新たな開発プロジェクトも始まった。景気後退の今こそチャンスだ。壁にぶつかってさらに強くなる。と社長。

イスタンブールのモスタファ社長。イランへの輸出が増えてきていた。1年前のイラン人バイヤーが布石だ。イランはアメリカとの関係が薄いため、今般の打撃は受けていないに等しい。

ボスポラス海峡のトンネル。日本の大成建設が請け負った。トルコ人の夢を乗せて、アジアとヨーロッパが繋がる。小山文男さんもそう語る。

セルゲイ氏はUAEの海外貿易相をモスクワに招待することに成功していた。

不動産ファンドは新たな顧客としてアジア・アフリカにも目を向けていた。

ダッカの労働者は、石油プラントへの出稼ぎを見出していた。

イスラームさんは、危機を生き抜くために独自の販売先を見出していた。

ホセンさんは小学校の教師となっていた。

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国連は21世紀を「都市の世紀」としたが、沸騰都市はこうしてまた世界各地で出現しようとしている。