鉄腕アトムの声担当の清水マリさんがナレーション。山下達郎の「鉄腕アトム2009」を主題歌に番組がスタート。

まずは真矢みきが宝塚大劇場から、宝塚歌劇で取り上げたブラックジャックのスチール写真とともに、手塚の「音楽」にスポットを当てる。

昭和5年生まれ、宝塚に転居しそこで育ち、数多くの漫画を残したが、虹のプレリュードやルードウィッヒなどの作品は音楽をテーマにしている。

1963年鉄腕アトム、1965年ワンダースリー、ジャングル大帝レオ、1967年ごくうの大冒険、リボンの騎士、1971年不思議なメルモ、1972年海のトリトンの主題化といアニメが流れる。1980年火の鳥においては音楽のことを語ったVTRが流れる。そのこだわりは相当なもの。

真矢が手塚の自宅があった場所を訪問し、大きな楠を見上げる。

藤子不二雄Aが手塚の家を訪問した際の話をする。「家にピアノがあったんですよ。宝塚歌劇にも良く行かれて、音楽を聴くと家に帰ってピアノで弾いたということを聞いた。」と語る。

手塚は宝塚に良く観劇にでかけてタカラジェンヌとも交流があった。

その体験が色濃く出たのが「リボンの騎士」男装の麗人が活躍する。

テーマ曲を作ったのは富田勲さん。日本が誇る偉大な音楽家だ。

富田さん「ある日、本人から直接電話が架かってきた。(アニメ音楽を)やってみたいとは思っていた。ジャングル大帝はディズニーにも負けないという手塚さんの意気込みがあったんでしょうね。当時手塚さんがピアノを弾いて’こういう感じなんですけど’とはにかんだんです。それで僕ははじめをレオの雄たけびのような感じを出し’これしかない’と思ったんです。」「打ち合わせは電話がほとんどです。昼夜無い人だったんで、夜中にかかってくる状態だった。」

その情熱に答えた富田さんの手によって、ジャングル大帝は完成し、音楽部分だけで交響曲としてLPになった。その挿絵も手塚さん自身が描いた。富田さんが訪問したときに手塚さんは床に寝ていたという。「寝返りをうちながら絵を描いているんですよ。あれにはビックリしました。」

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1986年に放送された「NHK特集」の貴重な映像が流れる。レコード音楽をかけながら漫画製作に励み手塚さんがいる。音楽のリズムに合わせて、連載マンガを2本と読み切り1本を仕上げていく。そのとき全くペンが動かなくなるときがあった。3日間で3時間の睡眠をとり、店屋物を採りながら必死になってマンガを描く手塚さん。移動中にもペンを走らせ、飛行機の中でも描き続ける。

その仕事場が高田馬場だったが、晩年は埼玉県に仕事場を移した。そこを娘の手塚るみ子が案内。るみ子さん「ブラスバンドに入っていて、こういうのやるんだというといろいろ教えてくれた。学校の演奏会にもこっそり来てくれていた。」と語る。「マコとルミとルイ」では珍しい家庭の様子が描かれている。手塚さんが仕事をしているときに聴いていたというクラシック音楽をるみ子さんが1枚のCDにした。それをプロジュースしたのが坂本龍一。坂本「訪問したときに手塚マンガと音楽が結びついた。」「題材とか情熱を焚き付けられるだけでなく、曲線が優美で音楽を感じる絵だ。線自体が音楽的なんだなと最近思うようになった。」

るみ子さん「音楽によって、イメージを膨らませていたんじゃないかな。」

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「ルードウィッヒ」はベートーベンを描いて未完に終わったマンガだ。物語はまだまだ続くはずだった。作品自体に搾り出されるような絵がある。音の出ないマンガで、いかに音を感じさせるかを苦慮していた絵がたくさん見つかる。

三枝成章さん。鉄腕アトムの主題歌を担当。アニメ音楽は初めて担当したという。「ベートーベンは残っちゃいけない作品には番号を打っていないんですよ。手塚さんはマンガ界のベートーベンで革命を起こした人だと思う。」

手塚さんがベートーベンの家を訪問した際の記録から「僕はベートーベンに性格が良く似ている。」と書いている。

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ときわ荘時代のアシスタントだった藤子不二雄Aさんは「最後にヒゲオヤジだけが生き残る吹雪の場面ではチャイコフスキーの’悲愴’がかけられた。」「探検隊が次々倒れていく場面に思わず泣けてきた。」

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宝塚の手塚治虫記念館を真矢が案内。不思議なメルモの主題歌を担当したのが宇野誠一郎さん。「完璧なものを作りたいという彼の気持ちがヒシヒシと伝わってきた。」

1971年マグマ大使。1972年海のトリトン。が画面に流れる。

どろろ1969年、まだ白黒だ。

手塚は音楽家にも影響を与えている。中でも山下達郎は手塚マンガは必須アイテムだったという。「アトムの子」という鉄腕アトム2009の主題歌を作った山下。その曲とアトムのアニメが初めてコラボし放送される。

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時代を超えてクリエーター達に刺激を与える手塚作品。1954年火の鳥は2004年にアニメ放送された。テーマ曲は中島美嘉が歌った。「恐れずにいろんなことを伝えていきたいという気持ちを強く感じる。」と語る。

坂本龍一も「戦争で多くの犠牲を見てきて、こういうことをしちゃいけないんだという思いが、子供にもわかるように易しい、クリエーターの現場でそれをやり遂げているのが、凄い。本当は難しいんですよ。大人になればなるほど偉大さがわかってくる人かな。」

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長男手塚真が語る。「手塚治虫のある一面を現代の形でやったらどうなるかという冒険をしている。」

手塚の作品の中でも問題作とされるMWが映像化された。その映画の全体の8割に音楽が付けられている。作曲家の池頼広さんが製作。「オープニングとエンディングは許してもらえるんじゃないかな。」

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そして宝塚歌劇のステージでの「火の鳥」の様子が流れる。真矢ミキ、安寿ミラなどのスターが演じる。

手塚治虫生誕80周年を記念して、富田勲が大阪大学交響楽団を指揮し、NHK大阪ホールで「ジャングル大帝」の曲を演奏することになり、富田は楽団員にその成り立ちから説明する。そして練習風景が流れる。

楽団員も「手塚さんの作品にこういう形で参加できてうれしいしワクワクする。」など精一杯やらせていただきますなどなど、手塚オマージュの発言が続く。富田さんも「手塚さんの後輩達ですから、手塚さんの気持ちを若い息吹を出せるんじゃないかな。」

演奏会が始まった。ホルンはレオの吠える声、ジャングルの雰囲気が音で表現される。

終了後演奏の出来栄えを確認する。「ハリウッドでも通用するよ!」と富田さん。

日本が世界に誇るクリエーター手塚治虫。

最後は手塚本人が歌う「鉄腕アトム」という1983年、「この人、手塚治虫ショー」のお宝映像で終了。

この映像はほんとに宝だね。子供達と幸せそうに歌っていた。