中国南京市、夥しい数の巨大ビルが目立つ。ところが去年の暮れ、この町で異変が起きた。マンションの資産価値が落ちて購入住民が業者に抗議、もはや警察が出動しないと収まらない事態に。陳さん、600万円で買ったのが半月で450万円に。一気にバブルがはじけた状況。陳さんは携帯ショップ経営していたが、景気悪化で売れなくなり、株でも大損した。

世界の工場といわれた中国でもアメリカを震源とする金融危機の余波で、世界経済の行く末に暗雲が立ちこめる中、世界の目が中国に向かっている。13億人の巨大市場を抱える中国が世界経済を下支えするのか、あるいはまた、中国も巻き込まれてしまうのか…。
“世界の工場”といわれてきたメイドインチャイナの拠点、中国・広東省では、今年上半期にすでに6万2000社が倒産したとされる。世界不況の影響で下請けとしての受注が激減していて、まさに倒産ラッシュの様相だ。番組では、そんな現場に潜入取材を敢行、そこでは出稼ぎ労働者たちの不満、絶望が渦巻いていた。

「金払え!」の大合唱。

一方で、“13億人の市場”の可能性はどうなのか。消費者の最前線の動向を取材していくと、日本企業に追い風が吹く業界があった。それは、食品・飲料業界。カギとなるのは日本が誇る安全技術だ。

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役所さん・・・中国と日本の貿易状況を演じる。日本向けシューズや英国向け家電、米国向けオモチャなど中国の工場では在庫の山が築かれている。 ガイアの夜明けでは、「世界の工場」から「世界の市場」、そして「世界の投資大国」へと目覚しく発展する中国の姿を描いてきた。そして、改革開放30周年の今、大きな転機を迎えた中国経済の行方を緊急ルポする。

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玩具、アパレル、スポーツシューズなどで世界を席巻してきたメイドインチャイナは、金融危機による世界経済の大減速の余波をもろに受けている。そして、中核を担ってきた中小工場が集積する広東省では、倒産ラッシュの様相を呈している。2008年10月、広東省東莞市で大手玩具メーカーが2つの工場を突然閉鎖、突如職を失った6500人の従業員が大規模なデモを行い、騒然となった。この映像は世界に配信され、“世界の工場”と持てはやされた中国の危機が明るみとなった。「金融危機在庫一掃」などの紙があり、輸出用の製品が国内に流れている。靴の中敷やソールなどを製造している会社を取材、「フル稼働にはほど遠い状況」と社長が説明。従業員も3割削減したという。

2008年10月東莞市でオモチャ会社合俊公司が倒産。2ヵ月後その工場を訪問すると、賃金を肩代わりした当局が資産の差し押さえをしていた。倉庫には出荷されずに山積みとなったダンボールがそのままある。寝泊りしていた会社の寮も今はガランとしている。

この工場を解雇された張さん(25歳)は、河北省に妻と幼い子供を置き、出稼ぎに来ていた。職と部屋を同時に失った張さんは、仲間たち5~6人で狭い部屋を共有し、新たな仕事探しに奔走している。部屋を訪ねると、「仕送りができなくて辛い」「このあたりはほとんど倒産して仕事が見つからない。」など口々に現状の不満を語る。しかし職は見つからず、果てには、部屋代が払えず大家から部屋を追い出されてしまう。夜の東莞、途方に暮れる張さんたち。男5人合わせて1ヶ月3千円の部屋代が払えない。

そして、その頃、また別の東莞の工場で解雇をめぐって、退職金の額で労働者たちが立ち上がり、警官隊と衝突する騒動が起きていた。11月25日のことだった。新聞にも取り上げられた。事件の翌日も騒ぎは収まらず、工場長が出て収拾しようとしていた。

張さんは田舎に帰ることを決めた。見切りをつけたようだ。5年前出稼ぎに出てきた張さん、思いがけない状況で河北省に帰ることにした。しかし帰っても何をするか決まっていない。

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役所さん・・・在庫の山を前に、海外への輸出が減少したなか、13億人の国内市場へと目を向けた。

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広東省チンタオ市。家電量販店は閑散としているが、1箇所だけ賑わっている場所があった。

金融危機で家電製品の貿易が減速するなか、中国国内では新たな動きが出てきている。その名も“家電下郷”プロジェクト。それは、政府が認定した家電製品を購入した農民に、購入額の13%を補助するというもの。
農民が家電を買ったら、国がお金を出すという不思議な制度だが、中国の農村の世帯数は約2億戸。家電の普及率が1%上昇するだけで、莫大な新規需要が生み出されるのだ。失速する中国経済の中では、内需テコ入れ策として期待は高い。

リトルスワンは洗濯機を製造する会社。この会社でも農村部に2万台売り込む計画。農村部用に様々な工夫がしてあり、壊れ難いようになっている。「家電下郷」を利用して、洗濯機を購入しようと考えている農民を取材。日本円にして1万7千円ほどのものを1万5千円で購入。日本製品も家電下郷の対象。購入した農民の住む村は洗濯も手洗い。井戸の水を汲んで行なうが手が関節炎になったという。高さんの家ではテレビに注ぐ高額家電品。ボタンを押すだけで何もしなくていいと奥さんも喜ぶ。近所の人も見に来ていた。

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東京隅田川沿いのアサヒビール本社で緊急戦略会議が開催されていた。13億人市場の可能性を探る。「アサヒビールグループをまず知っていただきたい。」と語る。「朝日緑源」という会社を3年前にたちあげて農場100ヘクタールを保有し野菜栽培を行い、安全安心な食材生産を行い、その植物をエサに酪農も行なっていた。いずれも富裕層向けである。現地の従業員を使い、日本式の生産管理で、輸出用ではなく、国内販売用に牛乳を作っているのだ。

駐在歴10年の井筒さん、上海の国際食品見本市に出品。評判は上々で、そこに食品スーパーのバイヤーが現れた。バイヤー側も、粉ミルク事件により、上質な牛乳を求めていた。井筒さんのターゲットは中間層。

乗用車や薄型テレビの販売台数は、すでに中国が日本を追い抜いている。携帯電話の契約数においては日本を5倍も上回るほど。そして、これらの商品を買えるのは、大都市の中間層にまで広がってきている。
そんな広がる中間層に安全安心な食品と売れと井筒さんは、ビニールハウスを訪問し、糖度の高いイチゴを見て、数日後、買ってきたミキサーにイチゴを入れて、牛乳を入れ「イチゴミルク」を作り、中国人スタッフに飲んでもらう。しかし作戦決行の日(12月21日)は大雪になって、ジャスコの看板も雪を被った。井筒さんも心配顔。ジャスコにイチゴと牛乳が並び、店頭で「イチゴミルク」を作り試飲してもらう。子供たちにも好評で、少し高い牛乳とイチゴがしっかり売れた。芽生え始めた新しい価値観。新たな可能性が見えてきた。

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役所さん・・・中国の人々の生活は発展途上にあり、世界の工場から世界の市場へと注目のされかたが変ってきた。