真の謝罪と和解に至っていない

英語媒体のものを探したんですが、文大統領の発言部分についての英語のニュースが、ちょっと見つからない。
文春オンラインでは、すごいセンセーショナルな書き方をされていて、「全否定」とか、「日本は謝罪をしていないと言ってる」とか。
書いた記者の人の「憤懣」が、ものすごい勢いで漂っている。
そういう人が、ソウル支局に詰めているというFNN…まあ…。
文大統領は一連の発言の最後の方で、こんな事を話していた。「慰安婦運動は今でも現在進行形です。被害者の傷は全て治癒されなかったし、真の謝罪と和解に至っていませんでした」
これをもって、「文の野郎は、日本は謝ってないと言ってるー!」と発狂するのは、行き過ぎだと、思いますが。

「真の謝罪と和解に至っていません」と、「文の野郎は、日本は謝ってないと言ってるー!」の間には、それなりの距離というものが、あるでしょう。

正義連スキャンダルと、過去の汚点は無関係

私は、よくわからないんですが、「韓国の正義連関係のスキャンダル」について、日本のメディアが、おかしなくらいに熱心に食いついているというのは、どうしてなんですかね。
そこに「スキャンダル」があったからといって、大日本帝国の侵略の過去は、消えませんよ。
なんなんですかねえ、そこに食いつく、というのは。
侵略をしたから、女性を必要として、恥知らずなことをしていたというのが、事実なんですから、「現在」の段階で、韓国の団体にスキャンダルがあったからといって、それが帳消しになるというわけは、ありません。

前任者が勝手にやったことをご破算にしたい文さん

その話とは別に、要するに文大統領は、朴槿恵さんが「国民の同意を得ないで勝手に結んでしまった2015日韓合意」というものを、破棄したいわけですよね。
だから、骨抜きにしてきた。
それは、文大統領的には「真の謝罪と和解に至っていないからだ」となる、と。
なるほど。
「正義連スキャンダル」についての文さんの見解は、普通に常識的な内容だと、思います。
問題は、「国と国との間の合意事項」を、大統領が変わったあとで、ご破算にできるのかどうか、ということになってくるでしょう。

「骨抜き」なら、ウチもやってる

まあ、「国と国との間の合意事項」を、日本側の都合でもって、勝手に骨抜き・ご破算にしている「実例」というのは、あるんですよ。
それは、日中国交回復のときに、台湾は中国の地方の一部であると認めると、台湾は国ではないと、そういうふうに約束をしておきながら、台湾に対し、じわじわと「国待遇」を進めることで、骨抜きにしようとしているんですね。
もちろん、北京の中国政府は、「約束が違う」と、怒っていますよ。
まあ、そういうふうに、「約束のご破算」は、「ウチもやってる」、という話。
が、「ウチもやっている」から、韓国もやってもいいじゃないかと言っているわけでは、ありません。
そうじゃなくて、「ご破算にしたほうが、いいのかどうか」という、問題ですよ。
「過去の合意事項」というのは、その約束をした両国の「合意」があれば、ご破算にできますね。
韓国のほうは、正式にご破算にしたい、そして日本は、したくない。
だったら、どうすんの、と。

文さんの顔を立て、こちらの要求も同時に叶えるような交渉を

ここで重視すべきは、「どうすることが、最も被害者のためになり、そして公益になるか」でしょう。
まあねえ、こういう場合には、文さんと交渉をして、ご破算にしてあげたらいいんですよ。その代りに、何かほかの条件を飲んでもらう、という形で。
例えばですが…ソウルの日本大使館前の少女像を、日本大使館内に移す、と。
目立つ場所に展示をして、私たちは、ご迷惑をおかけした過去を忘れておりませんよ、という意味合いを強調する。
これを、文さんに要求してみたらいいんですよ。その代りに、2015合意はご破算にしてあげるから、と。
ものごとは、というか外交は、頭を使わなければ。
この数年先までの「右翼票稼ぎ」などという、視野の狭いことを考えていたら、政治家というのは、いけませんよ。
もっと広い範囲の、長いスパンでの「公益」を、考えてくれなければ。