※まず、ここで取り上げるDET-NYYのALDSは、あくまで2012年の松井の打撃を考えるいいサンプルがそろっていた「事例」として取り上げるまで。「事例」として出てくる2チームに、松井の去就と絡めた意図は何もないことにご留意ください。
 
2011年9月の松井の不振の原因はなにか。私がみたところ、いろいろな人が指摘するところでは、外角攻めの徹底化、それに松井が対応しきれず打撃が崩された、ということになるだろう。
以下、「あくまで」サンプルとして取り上げるALDSのDET-NYYをみるに、以下の点が特徴だろう。
1)特にDETの投手にNYYの左打者への徹底した外角攻めの意図が現れていた。特に目立ったのは、外角への90マイル超のツーシーム系のボールである。
2)これに対し、これに対応して外角球を逆方向に遠くに飛ばす打撃がみられ、これが結局重要な得点につながった。反面、この外角攻めにNYYのテシェエラ、スィッシャーらが嵌ってしまった。
 
そこから考える点は、こうなるはずだ。

3)DET投手陣の攻め、MLBでは今後あちこちのチームで使ってくる投球法であることには間違いない。それは、2012年の松井にも当然襲い掛かる。
4)では、どうすればいいのか?ALDS第1戦のカノのような攻略法がもしとれないとなれば…??
 
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まず、サンプルとなるDET-NYYより。
DETの左打者への外角攻め、第5戦のフィスターを例として取り上げよう。
以下がフィスターの左打者に対する投球コース、球速・横の変化と結果。(Pitch-FX TOOLより)
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外角のボールくさいコースに球を集め、空振りを奪ったり見逃しのストライクを奪ったりしている。この日は、審判の外角の判定が甘かったが、それも活用。さらに、92マイル超のファストボールが、左打者の外角へ逃げるように見事に変化。(マイナスが大きいほど外に逃げる変化の度合いが大きい)フィスターのいい投球内容だった。これに対応して、ヤンキース打線もボールをじっくり選んで粘ったが、打ち崩すには至らなかった。
 
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この日のフィスターの投球を、2009年のある試合と比較しよう。9月19日のこれまたNYY戦。フィスターは当時SEAに在籍。(実は、私が現地観戦して、松井のHRを生で見た試合である)。同じく左打者への投球内容。
 
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フィスターがNYY打線にKOされたこの試合は、ALDS第5戦と比較して、外角攻めへの徹底が明らかに甘い。インコース~真ん中に投げては痛打された。(ちなみに、その時の捕手は城島。城島のリードの問題もあるかもしれないが…)また、ファストボールの球速も、当時は明らかに遅かった。
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フィスター自身の成長もあるが、2009年に比べて2011年は、「左打者の外角のツーシームファストボール」が徹底されている。それがフィスター自身の成績向上を読んでいるだけでなく、この2年間で、MLB全体の防御率向上、換言すれば投高打低の進行につながっているようにも思える。
 
 
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さて、松井に還ろう。「フィスター対松井」に焦点を絞るが、フィスターの松井への攻めに関しても、同じことが言える。

2011年9月16日の4回:外角中心の攻めで、内角はカウントを取る見せ球、外角のチェンジアップで松井を内野ゴロに仕留めたフィスター。
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2009年9月19日の4回:外角は1球だけ。5球目、内角の真ん中~やや低めの、89マイルの4シームを松井は見事にとらえ、特大のHRを放った。
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約2年間のあいだで、松井だけ取ってみても、フィスターの攻め方が変化している。そして、明らかに松井には外角攻めが有効という方向が見える。
「左打者への外角が有効」これは、松井だけではない。松井は、その典型的だが、あくまでその攻めが効く打者のうちの1人だ。
 
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では2012年の松井は…このトレンドからみて、今年9月手を焼いた外角攻めがさらに徹底される可能性が高い。ホームランの確率の高い内角は、なかなか投げてくれないだろう。前述のカノ、カブレラ、ヤングのように外角を逆方向に力で持っていく打撃ができればいいのだが、今の松井にはそれを求めるのは難しい。
 
松井が対応すべき「新たな敵」、2012年はさらに次々と出てくるであろう。そのいい例がTBのマット・ムーア。ALDSで勝ち投手になったこの生きのいい若手左腕、はっきり言って化け物だ。こういった投手も、2012年は松井に当然牙をむいてくる。

ではどうすればいいか…外角球は、HRを打つことは捨て、とにかく高い確率でヒットを打つことに徹するしかないのではないか。2008年の4月~6月のバッティングのように、膝の手術明け、監督がトーリ→ジラルディに代わり、日本メディアが「松井の危機」と騒ぎ、また実際厳しい立場にあったあの状況で結果を出した、あの打撃だ。そのためには、今の打撃フォームをチェンジする必要に迫られるかもしれない。
 
 
 その結果、以下のようなスタッツになるかもしれない。HRの数はがっかり?だが、立派なクラッチヒッターの成績だ。
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この打撃、上記のV-MARTの成績例だと、「えーHRじゃないのー?いやー」「HRまだなの?」「HRでないの?」という松井ファンもいるかも知れない。でも、そういった「HRへの幻想」を、2012年こそファンとしてもきっぱり決別せざるを得ないように思える。それができなければ、「えー出ないの?」という、さらにがっかりした日々が続くだろう。それどころか、途中でDFAの可能性も否定できない。

…こうした努力でも、レギュラーの座がかなわなくなる、という事態も想定される。むろん常時出られるに越したことはないが、そういった状況の中でも、チームの勝利のために貢献する姿これを応援していけばいいではないか。