第59回「牛肉に見る『うまい』の価値観」 | Club-George

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以前、日本最大手スーパーの常務に

「二人ですき焼き屋でもやるか」

と提案したときのことをお話ししました。

「いいですね」

と乗ってきた彼に、

「ん? いや、やっぱり君とはできないな」

と私。

「どうして?」

「だって君は今、頭の中で『ナントカ牛の霜降り肉』のことを考えただろう」

「ええ、もちろん」

「今の人は『牛肉は赤身でなくちゃ気持ちが悪い』と言うんだぜ。君と二人ですき焼き屋やったら、お客さん来ないよ……」

 

食べ物に対して時代が求めるものは、どんどん変化しています

ニヤリ

また、地域によっても食べ物の評価というのはまったく違います照れ

今回は牛肉を題材に、そのあたりのことをつらつらと考えてみたいと思いますウインク

 

牛肉に関しては、私はもっぱら赤身好きですニコニコ

家族が霜降りを食べていても、私は牛の脚を輪切りにした、真ん中に骨の残るラウンドステーキと昔から決まっていましたニヤリ

値段にすると霜降りの3分の1くらいのものですが、赤身のラウンドステーキでなければ肉の味がしないのですてへぺろ

これは20歳の頃からしばらくアメリカで生活していた影響かもしれませんアメリカ

アメリカでは牛肉すなわち赤身ですお肉お肉お肉!!

これも以前お話ししましたが、アメリカ人に霜降りをご馳走しても

「こんな脂ばかりで味のしない肉に高いお金を払うなんて、君たち日本人は馬鹿じゃないのか」

と言うくらいチーン

 

ところが、赤身好きという点では全員一致のアメリカでも、肉の部位に対する評価は地域によってまったく異なっていますびっくり

たとえば私が遊学していた当時、ニューヨークあたりで最も好まれる肉はフィレミニヨンでしたステーキ

Tボーンステーキの小さいところ、日本ではヒレと呼ばれているこの部位が、いちばん柔らかく、いちばん上品で、いちばん高価な肉とされていましたグラサン

しかしそれはアメリカ東部での話真顔

南部でのフィレミニヨンの評価は、なんと

 

「ああ、犬の餌ね」

 

というものです。

これは相当な違いですあせるあせるあせる

 

なぜそうなのか? 地域差としか答えようがありませんアセアセ

 

その一方で、アメリカ人がこぞって高く評価する産地もありますニコ

 

ネブラスカですビックリマーク

 

アメリカ人はネブラスカ産の牛肉が好きで、

「ネブラスカビーフのステーキはバターナイフでも切れる」

などと言いますアップ

 

もちろんこれは霜降りで柔らかいということではなく、赤身だけど柔らかいということですねビックリマーク

ただ、これには熟成という要素が大きく影響しているように、私には思われますひらめき電球

特定の産地の牛がうまいというよりも、その産地における肉の熟成技術が高いということではないかと目

 

熟成というのは、ある程度の時間、風にさらして自然に組織が分解されるのを待つことです生肉☆風

そうすることで発酵が進み、アミノ酸が増して肉がおいしくなるのですひらめき電球

ただし温度や湿度にも影響されるため見極めが難しく、タイミングを逃すと単なる腐った肉になってしまいます叫び叫び叫び

肉食の歴史が長い欧米では、その見極めも含めて、肉を熟成させる技術が日本よりはるかに進んでいるのですアップ

 

とはいえ、日本にも肉を扱う名人はいます!!

たとえば私が親しくしている、神奈川県藤沢市にある肉屋のご主人ウインク

彼は頑固一徹で、牛肉一筋で生きてきた人ですうし

 

「私は雄の牛は50年間触ったことがありません」

 

と自ら言うように、扱うのは雌牛だけうし

私の知るかぎり、肉の目利きとしてはナンバーワンだろうと思います。

都内の有名レストランの多くが彼の店から牛肉を仕入れていますおねがい

 

ある日その店を訪ね、熟成させた肉をご主人が処理する作業を近くで見ていたら、おいしそうな肉が目に留まりました目

「これは何なの?」

と聞くと

「カレー用です」

と言うので、2キロほど分けてもらい、家に帰ってさっそくカレーを作ることにしましたカレー☆

 

1キロ2500円という、ハンバーグにする肉より安い値段の肉ですが、塩コショウをして炒めたところ、これがあまりにもおいしそうペロリ

 

そこで、煮込まなければ硬いだろうと思いながらも一口食べてみたところ、実に、目が覚めるほどうまいのですまいうーまいうーまいうー

つまみ食いが止まらなくなり、カレーの肉が足りなくなってしまいましたてへぺろ

 

これはすごいと思った私は、その肉を東京一といわれる焼き肉屋に持っていき、オーナーに

「焼いて食べてみてください。評価はどうですか」

と聞いてみました耳

 

オーナーの答えは

「いい肉ですね。1キロ7000円か8000円ではないでしょうか」

 

私が

「いや、こういう事情で、1キロ2500円で買ってきたんです」たらー

と言うと彼もびっくりして、ぜひ私にも買ってきてくださいと💦💦

それで藤沢のご主人に頼んで、また少し分けてもらった次第ほっこり

 

しかしカレー用の肉を2回も買った私が、まさかそれを焼いたりビーフカツにしたり(これがまた、こよなくおいしいのです)しているとは、肉屋のご主人は想像もしていないでしょうウインク

これもやはり、牛肉に対する価値観の違いに関する話といえますウインク

 

価値観は人それぞれニコニコ

霜降り肉をおいしいと言って食べる人は今でもたくさんいますし、その人がおいしいと思えばそれでいいのですひらめき電球

ただ、もっとおいしい肉を食べていないから、慣れたものをおいしいと感じているだけなのかもしれません目

慣れというのは「うまいもの」に関する非常に重要な要素ですからウインク

 

牛肉を題材にとりとめもなくお話ししてきましたが、ことほどさように「うまい」という感覚は多彩で深いものなのですニコニコ
次回もまた、その深い世界を探っていきましょう。
お楽しみにビックリマーク