よく釣りに行く大分県臼杵市を、この7月にも訪れました
とにかくタイがたくさん釣れて、それはもう驚くほど。約80センチを筆頭に、35枚くらいのタイを釣りました
そのタイを地元の『あんどう』という大きな料亭に持ち込んで、刺身にしてもらいました
この店は
「こんな田舎にどうしてこれほどの料理人がいるのだろう」
と思わせるほど、繊細で素晴らしい料理を出す店でした
そこでご主人にどこで修行したのか尋ねたところ、「臼杵から一歩も出たことがありません」という答え
それでいてここまで繊細な味つけができるというのは本当に驚きです
東京でも間違いなく流行る店でしょう
さて、お刺身はタイだけでなく、40センチくらいのイサキ、カワハギ、アジなど、釣ってきた魚を大皿に盛り合わせたもの
さあ食べようということで仲間と箸をつけたところ、
タイの刺身がびっくりするくらいおいしいのです
実は7月のタイはムギワラダイと呼ばれ、身は痩せて白子も持っておらず、魚のことを多少知っている人なら「おいしくないもの」というのが定説。
形からして、お腹がシュッと細くなっているのが普通です
それなのに、どうしたわけか今回のタイには白子を持っている個体もおり、出てきた刺身は飛び上がるほどうまいのです
タイを食べ慣れている地元の仲間たちも驚いていました
そういうわけでタイの刺身があっという間になくなったため、追加をお願いしました
ところが二皿目のタイは、逆にびっくりするくらいおいしくないのです
一皿目を100点とすればこちらはせいぜい5点
いかにもムギワラダイという感じで、一口食べたあとは誰も箸をつけませんでした。タイそのものにここまで大きな差があると、『あんどう』の腕をもってしてもおいしい刺身にはなりません
ともに2時間ほど前までは生け簀で泳いでいたタイなのに、この違い本当に驚きでした
私個人が感じただけなら個人の好みの範囲でしょうが、みんなが食べるのをいっせいにやめたのですから……
食べ物というのはわかっているようでわからないものだなぁと、つくづく感じた出来事でした
今回の臼杵では、釣りや仲間との語らいのほかにも印象深いことがありました
地元か近郊の方と思われる初老のご夫婦が堤防で釣りをしており、その風景が実に微笑ましかったのです
臼杵のような場所でリタイア後の人生を送れたら素晴らしいだろうなと思わせるものがありました
そのことについてはANA機内誌『翼の王国』10月号の私の連載コラムに詳しく書いたので、よろしければそちらもご覧ください