貝の話を続けましょう
世界にはおいしい貝がたくさんあります
前回も少し触れた北海道・サロマ湖のカキは、冬になるとそれはおいしいものです
お隣の韓国に目をやれば、冬に人々が小さい金槌を持って岩場に行き、岩に付いているカキを金槌で採りながら海で食べ歩くという風習があります
これはすごくお洒落だと思います(*^▽^*)
貝の栄養分という点でおもしろいのは、南洋の島・パラオのシャコガイの話
牛のいないパラオでは、あの巨大なシャコガイの胆をすり鉢ですって、子供にミルク代わりに与えるというのです
50~60年前に人から聞いた話ですので、現在も行われているかどうかはわかりませんが、貝の胆は離乳食になるくらいに栄養が豊富だということでしょう
アワビやサザエの胆に対する見方が変わりそうですね
では、いろいろある貝の中で最もおいしいものはどれでしょうか
私の経験では、赤貝の小さな子がいちばんうまいと思います
中国でも東南アジアでも日本でも獲れる、あの赤貝です
中国や東南アジアでは、それを一斗缶がいっぱいになるほど買ってきて、柄の付いたたわしで3時間くらいかけて洗います
赤貝の殻は白い印象がありますが、泥の中に棲んでいるためそのくらい一生懸命洗わないと白くならないのですね
洗って真っ白になったら、買ってきた貝の半量と葱、生姜、紹興酒をぐらぐら煮立ったお湯の中に入れます
そのまま1分間も待つと赤貝はいっせいに口を開けます
ただし貝が完全に煮えてしまってはだめ
半煮えにしなければなりません
うまく半煮えになったらザルにあけ、身のないほうの殻を取り去ります
そしてニンニクやパクチー、胡麻油、生姜、唐辛子などをかけてその半生を食べるのです
私はこれがいちばん好き
最高にうまいですよ
ところで、もう半量の赤貝をどうするかというと、別の方法で調理します
醤油、生姜、唐辛子、氷砂糖と一緒にビンに入れ、紹興酒(できれば老酒)を口いっぱいまで注ぎ、2か月間くらい冷蔵庫に入れておきます
そうすると、ようやく赤貝の口が開いてきます
この紹興酒漬けがまた、とってもおいしいのです
貝のヌルッとした旨さ、ほんの僅かな醤油と氷砂糖の風味
その味を言葉で説明するのは困難ですが、ポイントは氷砂糖でしょう。普通の砂糖ではだめですね
この赤貝の子のことを、上海の人は「海子(ヘイツー)」と呼びます
上海の冬の名物です
北京語や東南アジアの国の言葉でも、それぞれの呼び方があると思います
最高にうまい海子ですが、半煮えはともかく紹興酒漬けはやたらと手間がかかるので、店で頼むこともそうそうできません
だから私などは自分で作ることもあります
海子は上野アメ横のセンター街に行けば必ず売っていますから、入手は難しくありません
ただ、やはり国産のほうが安心ですから、購入の際は原産地を確認されることをおすすめします
このほか、貝といえばタニシも思い出されます
しかしこれは中国でも日本でも、味噌味以外ではおいしく食べられません
ですから食いしん坊の興味の対象というより、昔の貴重なタンパク源としての貝、という話になるでしょう
それでも中国のタニシ調理法にはなかなかの見どころがあります
殻の先の部分をヤスリのようなもので少し切っておき、ニンニクや生姜、砂糖や紹興酒などを入れて味噌炒めにするのです
切ってあるので身に味も染みるし、穴からチュウチュウ吸うこともできるわけですね
中国人の食に対する知恵と貪欲さには脱帽するほかありません
さて、2回にわたった貝の話、いかがでしたか。調味料では再現できないという貝のうまさを、すぐにでも味わいたくなってきたのでは?