2012年11月10日(土)クローバーの会5周年記念企画、産科医・大野明子先生講演会『自分で産む~医療とのいい関係~』を、多摩市民館大会議室にて開催しました。
今回のイベントは天候にも恵まれ、多くの方にご来場頂きました。ご来場頂いた皆様ありがとうございました。
大野先生には、「どうすれば満足のいくお産になるのか?」を会場の皆さんと対話形式で一緒に考えながら、産科医という立場から自然なお産と医療との良い関係を講演していただきました。
大きく分けて五つのお話があったと思いますが、まず一つ目に『若いお母さんが減っている』というお話。34年間で出生数は200万人から100万人まで半減。初婚や初産の年齢も24.4歳だったのが、2011年の初産の平均年齢が30.1歳になっており、30代後半で出産する人も多くなってきている。晩婚化とともに、妊娠も遅くなっている。卵子は年々古くなり減っている。妊娠しようと思ってもいつでも妊娠できる訳ではない。不妊治療をしても無理に妊娠させるだけで原因を治す訳ではないので着床が難しい。40歳を超えると母体死亡率が20倍に跳ね上がる事も知って欲しいとの事。人間も動物として若い繁殖期に産み育てるのが自然な姿ではないのかともおっしゃっていました。厳しいお話でしたが、誰しもが薄々は感じていた事だと思います。
次に『妊婦検診に通う理由は何か?』というお話。印象に残ったのが「妊婦検診の超音波で何を調べるの?まさか、性別を調べるためじゃないよね?」という問いかけでした。本来なら性別は産まれるときまでのお楽しみであるべきで、大野先生ご自身が出産の体験の中で、妊娠中と逆の性別を告げられショックを受けた事があり、それが子供に対し失礼だと感じたからだそうです。
初期の妊婦検診は子宮外妊娠などの異常妊娠を調べるためで、妊娠6週では赤ちゃんの心臓が見えるので動いているか確認のため、9~10週は予定日を知るため、それ以降は体重を計算式から割り出して正常に育っているかを調べているそうです。
大野先生は、わかったところで変えられない性別を調べるのではなく、異常があれば産まれる前に治療する努力ができる心臓を第一に調べるとおっしゃっていました。それから、「検診を受けてさえいれば経過が正常になるの?健康な赤ちゃんが産めるの?」という問いかけにもハッとさせられました。正常なお産はお母さん次第。まずは自分のココロとカラダを整えること。自分のカラダを自分で知り、自分を信じるというお話でした。満足のいくお産、自然なお産にたどり着くにはかかせないキーワードですね。
三つ目は『妊娠初期こそよく動こう!いい胎盤を作ろう!』というお話。一般的に安定期に入る前の妊娠初期は早産になる危険性があるために安静にしていた方がいいと考えられていますが、全くの逆。子宮は筋肉でできているので多少の張りは当たり前。妊娠高血圧症候群になると困るので、子宮にたくさん酸素血液を送り、子宮動脈を太くし、いい胎盤を作りましょう!胎盤ができあがる16週までに子宮にたくさん酸素血液を送りましょう、とのお話でした。この知識はぜひ妊娠前に知っておきたいと思いました。
四つ目は『胎教って何?エピジェネティクスって何?』というお話。カタカナ表記で難しい専門用語だとついつい敬遠してしまいがちですが、DNAは後天的に変わるのか?というお話です。先天的なものだと考えられていたDNAですが、最近の研究でストレスにさらされると変化するという結果が出たそうです。大野先生は細胞の癌化や形質の異常だけでなく、自閉症や多動症や学習障害なども関係するのではないかという見解です。胎教とはお腹の中でなんらかの形で赤ちゃんに伝わっていること。私達は昔からそれを知っており、お母さんの愛情や優しい気持ちが伝わっていい影響を与えている。検診やお産経験でもお母さんが安心した幸せな状態でいるのと、不安で不満足な気持ちでいるのとでは子供に及ぼす影響に差があるのだという事です。
最後は『ギリギリセーフを信じる』というお話。そもそも安全なお産とは何か。帝王切開が安全?自然なお産は危ない?...そんな事はないはずで、お産に絶対の安全など存在しない。結局は本人の心がけ。自分のココロとカラダを整えて、自分やお産の介助者を信じる事ができてはじめて安心してお産にのぞめる。産科医療の本質は異常探しであるために、病院の立場や医療者の立場に立つと介入が増えてしまう。根拠に基づかない介入も多い。分娩への不必要な医療介入がいかに危険かよくわかるとおっしゃっていました。
それから、「自然は優しい、けれども厳しい。異常も自然のうち。自然界はギリギリセーフな事が多い。しかし、アウトは受け入れる。ムリなものはムリ。絶対の安全は存在しないが、安心はありえる。ギリギリセーフを信じて生きよう。」というメッセージを伝えていただきました。たくさんの自然なお産を診てこられた大野先生の『ギリギリセーフを信じる』この言葉が深く胸に響いた講演会でした。
講演会の後は、私達クローバーの会が設立したいと願っている「お産よろす小屋」の計画発表を代表吉田からさせていただきました。◆満足のいくお産を経験できる人を増やしたい!◆産前産後のお母さん達が気楽に相談できる場が欲しい!◆生きる力自然治癒力を活かす暮らしをしたい人を増やしたい!との気持ちから私達は「お産よろず小屋」を作りたいのです。人手も資金も足りていません。それには皆様のご理解とご協力が不可欠です。具体的にどんなことが必要かは当日の配布資料に書かせていただきましたが、今後ブログに掲載しようと思います。
計画発表の後に、横浜で「Umiのいえ」という名前で、産む人や産んだ人が集える場所を運営されている斉藤麻紀子さんから愛のある応援メッセージをいただきました。「夢を持つ事は素晴らしい。だけど夢にはお金が必要。なかなか愛と経済は比例しないけど、やっぱり最後は愛。私はずっと人に寄り添って子育て支援をしていきたい。子育てを考えると根っこにはお産の事がある。お産の大切さを伝えたいからこそ、愛ある限りがんばれる。横浜に「Umiのいえ」川崎に「クローバーの会」がある。どうぞ彼女達をご支援下さい。」お産や子育て支援に携わる大先輩の斉藤さんのお話は大変参考になり、また愛と勇気をいただきました。ありがとうございました。
大野先生、参加者の皆様、本当にありがとうございました。皆様と素晴らしい時間をシェアできた事を嬉しく思います。
5周年記念を迎えられたのも、皆様のご支援のお陰と思っております。今後ともクローバーの会を宜しくお願いいたします。