□バレンタインデー□
『2月14日』
世間中がなぜか賑わい、男女共に色めくこの季節。
常日頃から恋心を抱いていた意中の人に告白できる乙女の最大イベントなのだ。
その年、1個も身内からさえチョコレートをもらえなかった男子は『負け組』と呼ばれ、次の年までそのレッテルを貼って生きなければならない。
そして、バレンタインに限らず超勝ち組のテニミュ科の生徒といえば…。
漣「…っし!準備完了」
生徒会室にある鏡の前でそう言い、ネクタイをキュッと締めなおした漣を後ろで退屈そうな目で見ていた修が話しかける。
「意気込んじゃって…たかがバレンタインだろ?」
漣「フッ…愛もまた戦いさ。
修も用意しろよ、女子の期待に応えんのも立派な王子の役目だぜ?」
修「良いよ別に興味ないし。どうせ隠れるしな」
漣「おっ前本当変な奴(笑)」
そんな風に仲良く2人でしゃべっていると、生徒会室のドアを開けてため息をつきながら健太が中へと入ってきた。
健「はぁ~疲れた…偉い目にあったわ
」「おっ、やっときたか」
漣「ケンケンも相変わらずモテんなぁ~♪すっげーチョコの数(笑)」
そう、漣が言うように健太の両手には紙袋いっぱいに詰まったチョコレートの箱が所狭しと入っていたのだ。
そのあと適当に2人に相槌を打ちながら『よいしょ…』と言って近くの机にその袋を置き、ため息混じりにドサッと自分の席へと腰掛ける健太。
健「寮からここまで来んのがこんねん長いと思ったのはこれが初めてやわ…。
俺も修と一緒に早よ寮出ればよかった…」
「この時季の女子はいつもの比じゃねーからな(苦笑)
みんな何故かいつもよりすげー強気になって、渡すまで諦めねーんだもん。
俺そのせいで去年学校中追い掛け回されたし…
」漣「まぁ、テニミュ科は塔が離れてるからな向こうとは。
朝と昼と放課後くらいしか俺らに会うことできねーから、ここぞとばかりに攻めてくんだろーよ」
「つーか向こう(本塔)には意中の男子とか居ないわけ?
俺みたいな奴なんか追い掛け回してるより、よっぽど幸せになれると思うんだけど…」
漣「お前自分のレベル見てから口にしろ。たのむから…
」健「そういやマサとばーちょんは?」
「まだ来てない。大方、女子にでも捕まってんじゃねーの?」
漣「あり得る。あの2人の場合高等部からも人気あるからな」
「徹とか特にな(笑)」
漣「そうそ。年上キラーだからな、あいつは^^」
と、2人の噂をしていたちょうどその時、ガラッと生徒会室のドアが開く音がした。
一斉に視線を向けてみるとそこには、おそらく女子の団体に幾度か会ったのであろう、ぐったりとした様子の2人がため息を吐きながらその場に立っている姿があった。
雅「あー…やっと着いた…
」馬「今年は特にすごかったね…。
本当、どいつもこいつも浮かれちゃってやだねー…」
漣「お疲れ、2人とも(笑)」
「なんか飲む?コーヒーとか」
雅「あぁ、頼むよ。
あぁそうだこれ、修君居なかったから渡してくれって女子から」
そう言ってマサが差し出した紙袋の中には、おそらく健太の比ではないだろうだけのチョコが大量に入っていた。
それを見て少し冷や汗を流しながら、若干引きつった笑みを浮かべる修。
「あー…そう、ありがとう…。(俺甘いの苦手なのにな…)」
健「結局早よ来ても意味なかったな(笑)」
「それを言うなって…
」馬「漣ももらったの?」
漣「あん?あったりめーだろ♪ばーちょんに負けねーくらいもらってんぜ?多分」
馬「へぇ~…そりゃ最後の集計が楽しみだ」
そう言ってニッと余裕な笑みを浮かべるばーちょん。
この2人、なぜか毎年チョコの量で競い合ってはお互い勝ち負けを楽しんでいるようだ。
まぁ、根が似たもの同士というのだろうか…2人の間には集計前から火花が散っていた。
雅「…あ、そうだ。修君今日の午後からの予定わかってる?」
「あぁ。高等部のステージに出る話だろ?ちゃんと予定は確認してるよ」
雅「なら良かった^^ 会長だから今年は結構ハードだね」
「かもな…。つってもまぁ、加藤先輩の前座にKENNと1曲歌って、そのあとソロで歌って、1時間後にマサらとダンス踊るだけだから、そこまでハードじゃねーよ」
雅「まぁ、それもなんだけどさ…ほら、そこ行くまでの女の子がさ…
」「あぁー…そっちか。確かにそれはちょっと怖えーな(苦笑)」
健「しっかし、毎年ながらバレンタインにイベント事する俺ら(テニミュ科)って、周りから見たら結構すげーよな…」
雅「そういやそうだな」
「まぁ、色んなところから奉仕されてる学科だからな、うちは。
幅広い分野で将来に目を向けている生徒として、才能を見てもらうのもいい機会だし、本当に奉仕するにふさわしい学科か、一発かましとかなきゃなんねーんだよ」
健「なるほどなぁ~…」
漣「去年の加藤先輩のバレンタインライブやばかったよなー!
特に女子の反応とか(笑)」
雅「あぁ、凄かった凄かった!」
馬「むしろ悲鳴に近かったよなあれは(笑)」
雅「俺ら圧倒されてたもんな、マジで」
健「まぁ和樹先輩は会長やからな^^ それに結構な派手好きやし」
「そういやそうだな」
漣「修もあぁいうのやればいいのに。客席に向けて投げキッスとかさ♪」
「キャラじゃねーだろ、俺の場合…
」馬「会長はクールキャラで通ってるからね」
健「(でも万が一修が俺様キャラになった場合、みんな目の前で跪きそうで怖いな…
)」 「…あ、そろそろチャイム鳴るな。俺ライブに向けてのリハあるから、もう行くな?」
漣「んー。頑張れよー、ちゃーんと見に行ってやっから♪」
馬「音外さないようにね」
「やなこと言うなお前…
」健「女子に見つからんよう気ぃつけろよ」
「あぁ。…じゃあマサ、行こうぜ?」
雅「うん」
そう言って2人仲良く生徒会室を後にし、女子をうまく回避しながらフェンス一枚隔てた先にある高等部の裏門から敷地内へと入っていった。
***
相「はーい、オッケー。練習期間は短かったけど、かなり良い感じの仕上がりになったね^^」
「っすね」
雅「やっぱこの3人で踊るのは気持ちいいっすね♪」
和「どうだ、3人とも。今日のコンディションは」
相「和樹こそ。リハはもうオッケー?」
和「あぁ、まぁな。
久しぶりだな、修。会長どうだ?」
「お久しぶりです。…まぁ、和樹先輩とまではいきませんけど、後輩やダチと一緒に仲良くやってます^^」
和「そうか。学園のみんなを楽しませるのも大事だけど、お前自身楽しむことも大事だからな。
それを忘れるなよ?」
「はいっ!」
K「修ー!ダンスのほう終わったんなら、も1回ハモリんとこ練習しとこうぜ」
「ん?おぉ、そうだな」
KENNからそう言われ、先輩である2人に挨拶した後早速最後の歌練習へと入っていった2人。
ライブ本番に向けて気合は十分のようだ。
***
そしていよいよライブ本番。
まずは前座としてKENNによるソロ曲が歌われ、それが終わったあと修が大歓声の中ステージに登場し、2人でのデュエット曲を歌う。
そして最後に修がソロ曲を歌ってメインの加藤先輩へとバトンを繋ぐのだ。
修のオンステージに客席からは悲鳴にも似た叫び声が漏れ、修もそれに答えるように必死に途中ダンスを踊りながら客席に向けて誰をも惹きつける美声で歌い続ける。
「「「「「「「「キャーーーーーーーッ!!」」」」」」」」
「「「「「「「修くーーーんvvvv」」」」」」」」
そして全ての曲を歌い終え、苦手なMCもなんとか言い終えたところでメインである加藤先輩へとマイクを渡し、修は観客に笑顔で手を振りながら楽屋へと戻っていった。
「ほぉ~…」
「今年の会長はまた凄いのが出てきましたね」
「本当に、容姿にも才能にも恵まれているようだ…」
そう言ってスーツ姿で腕を組んで舞台横の客席で話している3人。
年は30半ばくらいだろうか…話を聞く限り、どうやら彼らはテニミュ科を奉仕している企業の関係者のようだ。
「どうやら彼は成績も優秀だそうで、学園トップの成績らしいですよ?」
「ほぉ~、それは凄い。まさに神から選ばれた子というわけだ^^」
「本当に…うちにほしいくらいですね」
そう言って口角の端を吊り上げて笑う3人。
そしてライブも後半…。
最後に、着替えを済ませた修とマサと相葉先輩による3人のダンスが舞台上に花咲き、女子の悲鳴がこだまする中、大歓声の元無事にバレンタインライブは幕を閉じた…。
***
『翌日』
漣「いやぁ~、にしてもすごかったなー昨日のライブ!」
健「本間本間。またお前のファン増えたんちゃうかぁ~?」
馬「そういやリーダー、今日昼休み2年の子に告られてたね?」
漣「うわ、マジ?!」
健「ヒュ~♪」
「つーか、なんでお前がんなこと知ってんだよ?!」
馬「さぁ~?なんででしよ^^」
「本当怖いなお前は…

(次からはもっと周りに注意払わねーとな…)」
雅「んで、結局集計の結果どうだったわけ?」
漣「あぁ、それなぁ~。まぁチョコの数的にはばーちょんのが多かったんだけど、ラブレターの数は俺のが多かったから今回は引き分けだな」
「どういう計算だよ…。そんなの徹の勝ちでいいじゃん」
漣「いーや、引き分けつったら引き分けなの!」
馬「まぁ、高校上がれば俺の勝ちかな」
漣「高校は共学だもんなぁ~。今から楽しみだぜ♪」
健「んじゃ、仕事もひと段落ついたことやし、コーヒーでも飲みながら皆でお茶するか!」
馬「おぉ、いいねぇ~♪」
漣「バレンタイン後の毎年の恒例だもんな^^」
雅「じゃあ俺コーヒー淹れてくるよ」
「あ、俺も手伝うよ」
そう言って2人仲良く席を立ち、給湯室へと向かっていったマサと修。
雅「んで、修君は今年何個チョコもらったの?」
「さぁ、何個でしょ。教えなーい♪」
雅「えぇ~、教えてよ!」
「やだ(笑) マサは何個?」
雅「修君が教えないなら俺も教えなーい」
「えー、いいじゃん教えてよケチ」
雅「それはお互い様」
「「…プッ、アハハハハハッ^^」」
そう言って仲良く同じタイミングで笑いながら、2人はメンバーたちのコーヒーを作り始めた。
《続》