今日は立春。旧正月ですね。
改めまして、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて遅くなりましたが、共通テスト第一日程の試験問題、解説をしてみたいと思います!
まずは、大問一の評論文。
出典は、香川雅信『江戸の妖怪革命』の序章からでした。
昨年アマビエがブームになったからですかね。
妖怪好きな私にとっては、わくわくする文章でした。
まずは、概要を把握しておきましょう。
【要約】
妖怪はかつて、不可思議な現象に意味を与えるリアリティな存在だった。娯楽の対象となるには、妖怪の認識の変容が必要である。(事物のあいだにある知の枠組みの変容を記述して歴史を読み解くアルケオロジー的方法を用いて考察する。)中世には、妖怪は神霊に支配された存在で、人間が読み取るだけの「記号」だった。近世になると、人間のコントロールが可能で視覚的な「表象」とみなされ、フィクショナルな存在になった。近代には、人間の内部が不安定な結果、見てしまうものが妖怪だと考えられ、以前とは別の意味でリアリティな存在になっていった。
今回のポイントは、中世、近世、近代と、妖怪の時代ごとの認識の違いをしっかりと押さえることでした。
要約もそれをふまえ、時代ごとの変化が追えるように書いてみました。
さて、一つ一つ問題を見ていきましょう!
問一 1~5 漢字の問題です。ここは完答したいところ!!
1 (ア)民俗 ①所属②海賊③良俗④継続
2 (イ)喚起 ①召喚②返還③栄冠④交換
3 (ウ)援用 ①沿線②救援③順延④円熟
4 (エ)隔てる ①威嚇②拡充③隔絶④地殻
5 (オ)投影 ①投合②倒置③系統④奮闘
問二 6 民間伝承としての妖怪とは?
妖怪についての説明は、第三段落一行目「妖怪はそもそも」と、四~六行目「このような~ともなっていた」に書かれています。ここをまとめると、
不可思議な現象が発生→意味を与えることで、日常的な理解が可能に
(例)なんで寒気がするんだろう?→風邪の妖怪のしわざだ!
不可思議な現象とは、「原因→結果」で説明できない現象。
日常的な理解とは、「原因→結果」で物事を理解すること。
こう考えれば、すっきりくるのではないでしょうか。
不可思議な現象を、日常的に理解するため、不可思議な現象の「原因」として考えられたのが、妖怪だったというわけです。
よって①が正解。
他は、②「フィクションの領域において」③「未来への不安」④「改めて」⑤「心に生み出す」が×。
問三 7 アルケオロジー的方法とは?
第七段落の内容をおさえれば解けます。
事物のあいだに関係性をうちたてる一つの枠組みを作る→枠組みを通じて事物の秩序を認識する→「枠組みの変容」=「歴史」として描き出す。
第八段落、第九段落に「物」「言葉」「記号」「人間」の関係性の変容のことが書かれているので、ここをヒントに考えましょう。
例えばカッコや句読点などの「記号」は、かつて「言葉」の補足機能しか果たしていなかったのに、今では「人間」の感情を示す顔文字の一部としても機能していますね。
「記号」は、時代とともに「人間」と近い関係になったと言えるわけです。
このように、時代の特徴をとらえ、ある要素の関係性の変化を見ていこうというのが、アルケオロジー的方法です。
図でまとめると、こんな感じ。
よって、答えは②。
他は、①「復元して」③「分類して整理」④「社会的な背景を踏まえて」⑤「接合」が×。
③⑤はひっかけですが、「物」「言葉」「記号」「人間」はあくまでその「関係性」を読み解くために設けられたものであって、決して各事象をどれかにあてはめ(分類して整理)たり、結びつけ(接合)たりするものではありません。
問四 8 妖怪の表象化とは?
選択肢をみると、全ての文末に「~になったということ。」とついています。
表象「化」とあるのもヒントですね。
つまり、妖怪の「表象」化にいたるまでの歴史(変化前と後)を読み取る必要があるわけです。
第十三段落、第十四段落に、その歴史が語られています。それをまとめると、
中世:妖怪は神霊に支配され、人間が読み取るだけの「記号」。
(例)川でおぼれる人が多いなあ、なんでだろう?→河童のせいだ!
(川の溺死という自然現象を人間は制御できず、河童が原因だと読み取ることしかできない)
近世:妖怪は人間が作り出しコントロールすることが可能な「表象」。
(例)かわいい妖怪を作ろう!→ひとつ目小僧、からかさ小僧
(いくらでも人間の想像力でキャラ設定できる)
これをふまえると②ですね。他は①「人間を戒めるため」③「実在するかのように」④「きっかけ」⑤「人間の性質を」が×。
問五 9~12
生徒のまとめノートを参照して解くという問題。しかし、昨年までと解き方は同じです。文章の筋が分かっていれば怖くはない!
9
この問題を見れば、意味段落が分かる、つまり話の大意がつかめるので、最初に解くべき問題です!
さて、それぞれの形式段落の内容をおさえますと、
二 妖怪がフィクションになるのは近世以降。
三 もともと妖怪はリアリティな存在だった。
四 リアリティな存在をフィクションな存在として楽しむようになるには、認識の変容が必要。
五 妖怪に対する認識の変容を探る宣言!
となります。
これをあわせると、二・三は妖怪がリアリティな存在からフィクションな存在になっていったという歴史の概略を、四・五はそれには認識の変容があったことが述べられています。
これらの内容と合致する選択肢は④しかありません。
他、①②③のⅠは、「娯楽の対象」というキーワードが挙げられていますが、むしろ二・三では、娯楽の対象になる以前の妖怪のことが書かれているので×です。
近世から近代の妖怪の変化が分かれば解ける問題です。
10
近世の妖怪については、すでに問四で確認済。「表象」の説明が分かれば解けます。③
11
ここは近代の妖怪の認識を見ないといけません。
人間自体が不安定、コントロール不可能な部分を持つ存在→妖怪は人間の内部で見られるもの→不安定な「私」が見てしまったリアルな存在
妖怪は、自然現象でも、キャラでもない。
「私」が不安定だから見てしまったということですね。
この「私」がリアルなものである限り、妖怪も当然、「リアル」な存在になるわけです。
近代において、個人という意識が芽生えたこと、精神病の分析が進んだことも、こうした認識の変容の理由になっているのかもしれません。
よって答えは④。
ほか①「合理的」②「自立」③「万物の霊長」といったように、人間が確固たる存在であるという意味合いでとっているものは×。
12
まず、「Nさんは、近代の妖怪観の背景に興味をもった」という問題文を見れば、本文の「近代の妖怪観」の部分をふまえれば解けるということが分かりますね。
11を参照してください。
資料の文は、芥川龍之介の小説「歯車」が引用されています。
主人公がドッペルゲンガーについて述べている一文。
ここは、本文の内容と「歯車」の内容を間違いなく選択できれば解けます。
まず選択肢を見ますと、共通部分は、最初に「歯車」の内容をまとめ、最後に、本文と「歯車」をふまえて、近代で「私」をどのような存在と考えたのかという抽象化がなされています。
よって、最後の文と本文を比べ、合致しないものは×です。
①「他人の認識のなかで生かされている」が×。
残念ながらあとは残ります。「歯車」で引用された内容を正確に読み取りましょう。
歯車:第二の僕(=ドッペルゲンガー)を自分で見たことはないので仕合せ→知り合いが自分のドッペルゲンガーを見かけている→死は自分より、第二の僕に来るかも
この内容をそのまま表しているのは②です。
それぞれ、③「思いをかなえてくれた」④「分身に乗っ取られる」⑤「他人にうわさされること」が×です。
⑤が微妙ですが、当惑しているのは「うわさされること」ではなく、「その場にいなかったのに、見かけたと言われたこと」に対してですよね。
ちなみに、なぜ死が自分より第二の僕に来るかもと思ったのでしょうね。
特に書いてはいませんが、自分が分身で、第二の僕が本物の人間かも?と思ったのでしょうか。
自分という存在への懐疑、「私」とは何かという問い、これは近代の大きなテーマですので、知っておいてください。




