
川遊び ’71 / Five Beans Chup
無欲の友だち 優位の視線だ
つれてこなきゃよかった
初夏の早瀬には 銀の声響く
夕方のバスまで
一輪草が咲いてる カワトンボがとんでる
父さんの竿 キラキラとグラスファイバー光ってる
朝は終わり
どこかしら神聖な清らかさも消え
僕に父さんが手招きをしてる
ランチのときが来たと
my space / 川遊び ’71
また個人的な思い出話をひとつ。
父との遊びで僕が一番印象に残っているのは小学校の低学年のころにたまに連れて
いってもらった川釣りです。
父は完全な会社人間で、平日はほとんど午前様、土日も接待ゴルフか、
休みだとしても疲れ果ててゴロゴロしてるかで、子供の僕としてはそれはそれは不満でした。
家族を食わすために働いてくれているというのが、頭では理解していても、
心では「なんで仕事が最優先やねん」ていつも思っていました。
(だから僕は今でもゴルフが大嫌いで、もちろんやらないですし、テレビで観ることも
しません。そもそも、山を切り開いてゴルフ場を作るというのが…あ、止まらんのでやめとこ)。
そんな父が、毎年この季節、(5月)になると、「ヒデシ、今度の日曜 釣りいこか」と。
僕はもちろん二つ返事で「いくいく」。それから週末までは楽しみで楽しみで。
父と僕がいつも行ってたのは犬鳴山という山を流れていた清流(川の名前は覚えてないな)です。
朝5時に起きて、南海本線(大阪、和歌山間を結ぶ私鉄)で泉佐野まで行って、
そこからバスに乗り犬鳴山を登っていき、「水呑」という川沿いのバス停で降ります。
「水呑」はその名の通り山の天然水が湧き出ていて、父と僕はその水をひと口ずつ飲んで
「やっぱり自然の水はうまいなあ」と決まり文句を口にした後、釣り場に向かうのです。
釣りは「水呑」から釣りをしながら川べりを下って行きます。
砂地のところやゴツゴツした岩場、時には膝上まで濡らして浅瀬を渡ったりしながら
下っていくのです。
魚種は主にカワムツ(泉州での呼び名なのか、父は「ハス」と言ってましたが
図鑑で見るとカワムツのようでした)と稀にオイカワ。
餌はうどんに蛹粉(カイコの蛹を砕いて粉末にしたもの)をまぶしたもの。
釣行は父と僕の2人でというのがほとんどでしたが、たまにこの歌のように僕の友達も
参加してました。
僕は午前中の山や清流の何とも言えない静けさがとても気に入ってました。
夕方まで釣って、日が傾き始めたら適当なバス停からバスに乗って泉佐野まで戻り、
駅前で父が「ヒデシ、ざるそば食うていこか」というのがこれまた決まり文句。
うずらの生卵を入れて食べるのが初体験だった僕は、そこでのざるそばが大好きになり、
他のそばには見向きもせず、毎回必ずざるそばを注文してました。
父はもう随分まえに亡くなってしまいましたが、時々こうしてあの川での父との釣りの
ことを思い出すのです。

