「・・・え?」
「俺、智くんのこと好きだ。
智くんのことが好きなんだ」
「・・・・・」
「聞こえてない?
じゃあ、もう言うよ、俺、智くんが・・・」
「わああ!もういい!」
「え?」
「ちゃんと聞こえてるから」
何度も言うな!
そ、そんなこと!
「・・・俺、智くんが好きだよ」
言うなってば!
お前がそんなこと。
ええっと・・・
ええっと・・・
冷静になれ!顔に出すな!
「・・・おいら男だよ。
女の子じゃないんだけど、それ分かって言ってる?」
「もちろん知ってるよ」
「・・・冗談で言ってるわけじゃ・・?」
「ないよ。こんなこと、冗談で言えるわけない。
冗談で男が男に好きって言うわけないでしょ。
本気で言ってるに決まってるでしょ」
「・・・・・」
「・・・俺のことどう思ってる?」
「翔くんのこと好きだよ」
って、ダメだよ!
おいらはお前への思いを捨てるって決めたんだ。
「って違う!
おいらと翔くんとじゃ好きの意味が違う!
一旦冷静になろ!
翔くん、この暑さでちょっとおかしくなってるんだ」
「冷静だけど?
どちらかと言うと・・・慌ててるの貴方よ?」
あわっててなんか!
「いや、絶対冷静じゃない。
おかしいもん、翔くんの好きな人がおいらだなんて。
絶対おかしい!」
「なんでおかしいの?」
「だって、男が男を好きになるなんておかしい」
そうだよ。
おかしいんだって。男が男を、
翔くんを好きになるなんて。
「おかしくないよ。
性別なんて関係ない。
俺は智くんだから好きになった」
・・・・・
「おかしいことなんだよ。
こんなの・・・」
「智くん、俺は・・・智くんが好きだよ。
他の誰でもない、智くんが好きなんだ。
この先もずっと智くんだけだよ」
「・・・だめだ」
「え?」
「ごめん。翔くんの気持ちにはこたえられない。
おいらは・・・今のまま、今の関係がいい」
「・・・・・」
「・・・ね、そうしよ。
さっきの言葉は聞かなかったことにする。
それがいい」
そうだ。それがいい。
そうしなきゃダメなんだ。
「・・・いやだ」
「え?」
「なかったことにするだなんて無理だよ」
無理って、
おいらの方が無理だよ。
どうすればいいの?
ええっと・・・
「・・・じゃあ、
本気でおいらが好きって言うなら、
それを証明して」
「・・・証明?」
「そう、本気でおいらが好きって言うなら、
本気でおいらだけって言うなら、10年後の花火大会で、
もう一度言って」
「え?・・・10年後?」
「そう、だって翔くんはまだ中学生。
今は恋に恋してるだけなんだって。
これから色んな経験をして、色んな人に出逢ったら、
気持ちだって変わる」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
そうだよ。
色んな経験をして、色んな人に出逢ったら、
きっと翔くんの気持ちも変わる。
おいらの気持ちも・・・
変わる?
「・・・変わらないよ」
「え?」
「いいよ。分かった。
10年後ね。証明してやるよ。
俺が本気だって、10年かけて証明するから、
毎年この花火大会で告白するから。
10年かけて智くんをおとしてやる!
絶対逃がさないよ、覚悟しててね♡」
「/////」
「今はこれで我慢する」
「え?ちょっ・・・」
「・・・この先は10年後ね。
あ、手は繋いでもいいよね!
ハグも!男同士もするしな。
なら・・・やっぱり口にキスも・・・」
こんなことされたら、マジで本気になるよ。
おいらが自分で言ったことだけど、
10年なんて待ってられない。
って、ダメダメ!
翔くんの明るい未来をおいらが邪魔するわけには・・・
「ば、ばか!ちょ、調子に乗んな!」
「ケチだなぁ。でこだよ?
減るもんでもないのに」
「ケチじゃない!」
「あ、やばっ!
そういえば、
叫んでないよね?」
「え?あっ!!」
「じゃあ、行くよ、
『『や〜まや〜〜〜!!』』
「来年も一緒に見ようね、智くん♡」
そんな顔で笑うなよ。
こんなの・・・だめなんだって。
頼むよ、おいらから逃げ切ってよ。
おわり♡