仕事の隙を見て、
何度も資料室を覗きに行ったけど、
今日はまだ一度も大野さんに会えてない。
なんで?いつもいるのに・・・
もしかして、俺のこと・・・
結局昨日はあれから、
ラインしても電話しても、
大野さんに繋がらなかった。
会いに行きたかったけど、
どこに住んでるか分からない。
ちゃんと会って謝りたかった。
謝るというか・・・
後悔はもちろんないんだけど。
『・・・もういいでしょ?おいらもう、行くね』
あの大野さんの言葉と後ろ姿が、
頭から離れない。
大野さんを傷つけた・・・かもしれない。
かもじゃない。
傷つけた。
朝一から資料室はもちろん、
他の場所も探してるのに、
大野さんが見つからない。
こんなに見つからないなんて・・・
意図的に避けられてるとしか・・・
お願い、大野さん。
逃げないで、俺の話を聞いて。
資料室に行っても埒があかんと思って、
マーケティング部に乗り込んだ。
「大野さんいますか?
大野さんはどこにいますか?」
「へ?大野さん?
どこって、今日は出社してませんよ」
・・・え?
今なんて?
出社してない?
「え?・・・な、なんで??」
「なんでって・・・出張ですから。
戻りは明日となっています」
教えてくれた社員さんが、
スケジュールが書き込んであるホワイトボードを指差す。
『大野、出張、一泊』
「・・・なんだ、出張・・・なんだ」
「留守中は、私が用件聞いておくように頼まれているんですが、
急ぎの用件でもおありでしたか?」
「い、いや、大丈夫です。
大野さんが戻ってきてからで十分間に合いますから。
お邪魔しました」
一礼して、
自分の部署に向かった。
なんだ、出張か・・・
だからどこ探してもいなかったんだ。
なんだ、
意図的に避けられてたわけじゃなかった。
ホッとしたけど、
大野さんに会えたわけじゃない。
大野さんの戻りは明日。
明日会える。
いや、もしかして明日は直帰か?
もしそうなら・・・出社するのは・・・明後日?
今すぐ会いたいのに・・・
明後日・・・でも、明後日には絶対会えるんだ。
会ったらまずは、謝って、
ちゃんと気持ちを確かめあわないと。
もう一度、ちゃんと俺の気持ちを伝えて、
大野さんの気持ちをちゃんと聞いて・・・
よし!
それしかない。
明日明後日、残業なしで帰るため、
仕事に集中することにした。
会社を出るとき、
スマホが震えた。
ん?ラインか。
え?
スマホの画面を見て、慌ててタップする。
『明日の夜空いてる?
ちょっと話がしたいんだけど』
差出人は、
大野さんだった。