一体誰だよ?
収録前の智くんを連れ出したのは!
一言言ってやらねーと気がすまん!
それが誰かも確認しておかねば!!
勢いよく楽屋のドアを開け、
外にいるであろう智くんの名前を呼ぶ。
「智くん!!」
「え?わ!」
ドン!
名前を呼んだと同時に、
誰かが胸の中に飛び込んできた。
「ご、ごめっ!あ、なんだ翔くんか」
「え?さ、智くん?」
「もう急に出てくるからびっくりするじゃん!
ん?翔くんどっか行くの?もう始まるよ?」
「どこにも行きません。
最優先ミッションただいま達成しますので」
「は?最優先・・・なんだって?」
俺の最優先ミッションは、
智くんの捕獲!!
「え?わ!ちょ!こんなとこで抱きつくなよ〜」
口では文句言ってるけど、
俺を押しのけることもできるのに、
しないで、俺の胸の中にいる智くん。
はあ、俺今幸せ。
って!
喜んでる場合じゃない!
次のミッションに移らねば!
智くんを誘惑する輩は誰だ!
どこのどいつだ。
俺の智くんのそっち側狙ってるやつ!!
智くんをぎゅっと抱きしめたまま、
辺りを確認。
・・・逃げたか?
「く、くるし・・・しょおくん」
「あ!ごめ!大丈夫?」
「もう!いつも相葉ちゃんのこと、
力加減バカ男って言ってるけど、
翔くんもだよね、ほら、楽屋入るよ!」
中に入ろうとする智くんを、
制す。
「あ!待って!
なんか後輩が来てたって」
「ん?ああ。
もう収録始まるからって言ったら、戻っていったよ」
「・・・智くんに用だったの?」
「ん?用っていうか、
話が聞きたいとかなんとか。
なんかさ、釣り始めるって子が来てさ、
初めは何を釣ればいいんですか?とか、
道具選びのコツとか、それの相談?」
・・・つ、釣りの相談か。
いいとこついてくるな。
智くんは追求する方だし、
好きなことにはとことんな性格だから、
道具にもこだわってそう。
釣りの話題なら、智くん尽きないよね。
喜んで全力で相談に乗るだろうね。
「あとさ、絵や写真を始めたって子もいてさ、
使ってたものでオススメのメーカーありますか?とか」
・・・絵もか。
絵については、俺はいけない分野だもんな。
そうだよな〜、智くんすげーんだもん。
個展も開いてるし、作品集だって出してる。
あれ見たら・・・惚れるよね?
一緒の道具使いたいよね?
気持ちわかるわ。
って!
感心してちゃいかん!
「あ、あと、仕事の相談とかも。
おいらもちゃんと先輩してるんだからね!」
「・・・し、してないとは言ってないし」
「んふふ、
翔くんの『兄貴会』みたいなの作っちゃおうかな?
あ、でも張り切って作っても誰も集まらないか〜」
いやいや、集まるでしょうよ。
大野会ってことでしょ?
どんだけいると思ってんの?
強火大野担。
後輩のみならず、先輩やベテラン。
事務所の枠を超えて集まるよ。
智くんがその気になったら、
軍団作れる!!
俺の兄貴会は、
俺を慕って集まってくる後輩メインだけど。
智くんの大野会は・・・
智くんを激愛する人たちの集まりだから、
みんなが智くんを狙ってる。
智くんのあっち側もそっち側も。
ってことは、
俺、余計なこと考えてる場合じゃないんじゃねーの?
グズグズしてたら、ニノたちが言ってたみたいに、
つまみ食い・・・
いやいや!
そもそも智くんが雄感増してるのは、
俺のせいなんだから!
俺を・・・なんだから!!
智くんがよそ見したり、
ツマミ食いするはずがない!!
するはずないけど、
する隙を与えてはいけない!!
予定を詰め込まなくては!
まずはじめに・・・
「智くん明日のホワイトデーのなんだけど!!」
「あ、そうだ、おいらも話があるんだ」
・・・え?
何?
「・・・話?」
はわわっ、
例年のごとく、
当日中に終わらない予感・・・